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木星で春を待つ鬼  作者: 箱守みずき
第3章 白か黒か
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第25話 ウイルスにはお気をつけを

「純ちゃん、久しぶり。出てくれるとは思わなかった」

『久しぶり、どうしたの?』

「えっとね、会って話したいなって思って」


 緊張する。まるで意中の人をデートに誘おうとしている学生の気分だ。いや、最近の学生はこんなにうぶではないかもしれないが。緊張は電話越しにも伝わっているだろうな。


『いいよ、いつにする?』

「明日とか、どう?」

『いいよ、どこにしよっか?』


 意外にも、こんなにすんなりと、決まってしまって良いのだろうか? 逆に、事がうまく行き過ぎて、不安になる。


 もしかしたら、我々が考えてることなんて全部杞憂で、純ちゃんの弟さんのことだってただの偶然かもしれない。そうであって欲しい。



 純ちゃんとは、明日の19時に、都内のレストランで会うことになった。今夜は解散して、明日また集合して対策を検討することになった。流石に今日は、ゆっくり寝たい。



 翌朝、皆で解決しなければいけない問題を整理する。


 まずパリキィが地球由来かどうか、これについて、もう一度我々の調べた結果を考え直すことにした。特に、縄文人が使役されていたという情報。


「どうにも、腑に落ちまへんな」

「なにか違和感があるのですかな?」


 菱垣ひしがき先生はすこし、歯切れの悪そうな言い回し。


「縄文人を使役しとったのはわかる。せやかて、詰めが甘ないか?」


「どういうことでしょう?」


「みすみす縄文人に決定的な証拠を土器の中に隠すことを許していると言うことですか? 確かに、パリキィならそんなミスは冒さないかもしれない。が、それをどう考えるというのです?」


「まだ、縄文人はんと会った時は、未完成だったんちゃいますかな?」


「え?」


「つまりな。パリキィはんを作った生命体は未完成のままパリキィはんを未来に託した。せやけど、外部刺激のあらへんパリキィはんは進化の糸口をつかめへんまま時は過ぎる」


「そして縄文人に出会うた。異なる知的生命体に出会うたパリキィはんは、ついに進化の糸口を掴む。せやけど、完全に進化するまでには時間がかかってまい、縄文人の扱いに粗出た。どうやろうか?」



「ついでにいったら。もう一つ腑に落ちへんことがありまして。いまのパリキィはんはそらもう優秀なコンピューターじゃああらへんか。その優秀なコンピューターがありながら、文明が滅亡してまうちゅうのんは理解に苦しむ。やったら、作ったと当時は未完成やったと考えると、つじつまが合わへんか?」


 さすがは知能進化のプロだ。思いもよらなかった。


「パリキィが今まで彼を作った知的生命体を復活させていなかった理由も説明できますね、縄文人に会って進化したものの、あの空間でできる仕事は限られている。そして、あっという間に人類が進歩してしまった」



 その後も、議論は続き、我々は結論を出した。

 正直な話、だれにも自信がなかった。

 でもやるしかない。

 我々は仮設を立て、実験をする。

 後は実験するのみだ。

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