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Advance World  作者: きりんゆう
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とある庭園での話し合いあるいは戦闘の前振り

Episode04 ある庭園での会話


■ 4月30日 アルカディア皇国首都 皇城の一角の庭園 ?????・?????・????? 


その場所は外界の喧騒から隔絶されたかのような静寂に包まれていた。色とりどりの花が咲き乱れていた。 

 その花たちは一見どこにでもある草原の花のようにも見えるが、それらは一般庶民が決して手が届かないような値打ち物で合ったり、また品種改良を繰り返してその果てに作り上げた自然界には決して存在しない色合いの花。中にはたった一株で家一軒が変えてしまうようなとんでもない花が所狭しと植えられていた。

そしてそんな庭園の中にこれまた立派な石造りの建物が建っていた。最高級品質の貴重な石が惜しげもなく使われ、熟練の職人によって細部にまできれいな彫刻がなされていた。


建物の中にある椅子やテーブルもとてもこだわって作られていた。椅子はアンティーク物の超高級家具で机に至っては全て硝子でできているという贅沢ぶり。


そんなところに二人の人物が腰かけてゆったりと紅茶を飲んでいた。


 一人はブロンドのサラサラの長いを地面につくほど伸ばし、エメラルドグリーンとワインレッドのオッドアイには何者も引き寄せ惑わせ心酔してしまいそうな魔性の引力のようなものを感じられ、肌はきめ細かく服装は純白を基調としたゴージャスなドレス。

 指には白銀に輝く宝石の嵌った指輪をしており、耳にもエメラルドグリーンに輝くイヤリングをしていた。中世ヨーロッパの王侯貴族のような出で立ちだった。

 唯一おかしな点は首元にまとわりつくように嵌っているチョーカー型の『首輪』だろうか。ドーナッツ状の形をした首輪は漆を塗ったかのような真っ黒な色合いに、藍色の幾何学模様が施されていた。


 およそ王侯貴族が身に着けているものとしてはあまりにも違和感があった。

 だがそれがこの人物には当たり前になっているのだ。とある事情でこれを付けていなきゃいけないためである。


 もう一人の人物は中年の男性で、黒い髪をオールバックにしており、その鋭い目つきは鋭利な刃のように細められており、纏う気配は対峙した者を震え上がらせるほどの威圧感で満ちていた。背格好はきっちりと黒いスーツ黒いネクタイをしていて、胸ポケットには黒のサングラスを差し入れていて、どう見ても黒服といった出で立ちだった。


 


「ねえ。ここ最近頻発しているあの件についてなにか判明は致しましたの?」


 華やかな衣装に身を包んだその女性。アドリアナ・エイドリオン・アルカディア女帝は憂いを帯びた表情で手にとった紅茶を飲みながら問いかけた。


「いえ、原因は未だわかっておりませぬ。皇国警察省および国土調査庁も未だ情報の入手には至っておりません。申し訳ございません」


 それに対するように対面に座る男――ベネディクト・コリンソン皇室直轄戦闘団隷下護衛団団長は表情を一切崩さず面と向かって話した。


「いいえ。皆よくやってくれております。『特別情報部』は何かつかんでいませんの?」


「そちらは別の案件の調査にあたらせております故、調査には参加しておりません」


「そう。では待つしかありませんね」


「ですが『山猫』が何かしらの情報を掴んだとのことであります。今報告のためにこちらに向かっております」


「そう」


『山猫』。異世界人にして『天使保有者』。


 彼女が山猫の二つ名で呼ばれている理由はそのその見た目が猫の獣人のように耳と尻尾がは言えていることと、世界中のいたるところに侵入してはほぼ確実に情報を持ち帰ってくるところに由来する。彼女が過去に失敗したのはたった一度のみ。その一度を除いて未だ依頼を達成できなかったことはない。

 

 異世界人登録管理館にて登録されたのが2年前だが、それからたったの1年半でランク評価最高位の『Sランク』に到達した天才情報屋


 アルカディア皇国の異世界人登録管理館に登録している『天使保有者』1万5千名中たったの100名しかいないとされているSランカーの1人だ。


 現在このアルカディア皇国にはSランカーに認定されているのはたった13人だがそのどれもがたった一人で一個師団(約2万人)に匹敵する実力を持っている折り紙付きの化け物たちなのだ。


「『山猫』さんが情報を持ち帰るのでしたら問題ないでしょう。問題はその後の対応ですね」


「はい。左様でございます」


 

 今このアルカディア皇国首都の都市の下に広がる島、アルカディア皇国ライファル島。 豊かなな自然と豊富な地下資源だけでもかなりのものだが、何よりもこの島の特徴は魔物がほぼ現れることがない、現れても脅威判定Fなどの普通の一般人でも倒せるほど弱いものしか現れないほどに平和な島なのだ。

 島の四方を海で囲まれているため魔物が海を渡りでもしないとくることはできないし、島に入り込めたとしてもライファル島防衛軍団が討伐してしまうのでほぼ脅威となりえない。


 だがここ最近島の中に脅威判定がBクラスの強力な魔物が入り込んでいるのだ。しかも一匹や二匹でなく何十匹、もしかしたら何百匹単位で入り込んでいる可能性がある。すでにライファル島の農産物の被害やインフラの破壊、果てには国民に犠牲者が出てくる始末。

 このことを重く見たため原因究明とともに天使保有者を送り込んでの魔物のゲリラ排除、並びに地方都市や農村部などの防衛を目的とした3個師団(約6万人)を送り込んだが、それは生活圏の防衛ができるというだけのことであり人的資源や物流の停滞は避けようもなく、すでに莫大な経済的損失を被っている。


「早急にこの件を終わらせなければ経済が立ち行かなくなります。いざというときはあの『最大戦力』の投入も視野に入れなさい」


「! 恐れながらそれはさすがに過剰戦力では? 脅威判定B 仮にA判定が数百匹いてもSランカーの猛者を投入すればそれで片が付きます。なにもSランカーの頂点達の一角たる『最大戦力保持者』を投入する必要はないと愚考いたします!」


「そうかもしれません。 ですが万が一があってはいけませんし、すぐに投入しなくてもよいのです。 まずは戦闘に長けた天使保有者のAランクを50名ほどとBランクを200名ほど集めてそれをぶつけてみましょう。 それでもダメならその間に皇国防衛軍を集めてそれをぶつけてみましょう。それでもダメな時の最終手段として『最大戦力』を投入する。

これなら問題ありませんね?」


「そ、それでも投入は反対です! 島が吹き飛んでしまいますよ!?」


「大丈夫よ。あれでもやりすぎないように心がけてはいてくれてるみたいよ?」


「しかしながら―」


「ではこうしましょう。あなたが暴走しないように監視していてくださいな」


「…承知いたしました。では山猫の情報をもとに適正に戦力を抽出いたします」


 そういってベネディクトは席を立つと襟を正していかにも軍人然とした態度でその場を後にした。


「さて、ついぞ他国が攻めてきたかはたまたテロか……何がともあれどうとでもできますが」



 他に誰もいない庭園で一人アドリアナは独り言をつぶやいて物思いにふけるのだった。


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