邂逅編もしくはチュートリアル2
『Episode02 その少女の名は——』
「……討伐型………天使?」
【はいそうです。マスターがこの世界に転移してから生まれました。これから色々とあるかと思いますがどうぞよろしくお願いしますね!】
………うん、これはアレだ。 夢だな 悪夢を見ているんだな。しっかしずいぶんとリアルな悪夢だな——
【夢じゃありませんよ? 正真正銘ここは現実ですし、あなたは元居た世界から転移してきました】
「なんで私が考えていたことがわかるの⁉」
【マスターと私は思考がリンクしてますので相手が考えていることがわかるのですよ。ああ安心してください。マスターの考えていることがわかるようにマスターにも私の考えていることがわかるようになってますから!】
「全然安心できないよ‼⁉」
プライバシー保護の意識がかけらもないんじゃないのそれ!? というか本当にここはどこで何でここに私はいるの。
「ねえ、ここはどこなの? 見たことがない場所だし、私が転移?したっていうのはどういうこと?」
【そうですね。まずはここがどこなのかという問いにつ生きましては一言でいうと『異世界』ですね。 地球ではないですよ?】
「やっぱりそうなの………」
【そうですよ。地球上にあんな馬鹿でかい上に角とたてがみはやした蛇なんていませんし】
「そりゃそうだよね……。 それじゃあなんで私ここに転移?転生?してきたの? なんの脈絡もなく」
【それはわかりません。 何者かによって呼ばれてきたのか、それとも自然にこちらの世界に来てしまったのか。 ま、いずれにせよこの世界に来てしまった以上すぐに地球上に戻ることは叶わないでしょう】
「なぜ?」
【地球に戻る方法なんてそもそも私知らないです】
「……………」
【いやいや、「チッ なんだよ使えないな」って言われまして私はそもそもマスターの真核から作られたものですのでこの世界で生きるための初期情報以外はマスター同様に何も知りませんよ?】
「そ、そうなの?」
てっきり流暢に解説者よろしく話しまくってるから全部事情をしているものと思っていたゆうは当てが外れてがっくりとうなだれた。
「じゃあ次の質問。 あなたは一体何者?さっき武器になっていたけど…どういった存在なの?」
【私は『天使』と呼ばれるマスターのような転移者の『真核』、まあ簡単に言えば魂ですが、それをもとに作り上げられた存在です。
といってもすべての転移者が私のような人型ではありませんが……】
「どうゆうこと?」
【『天使』は一般的には色々な無機物の物体の形状をしていまして、このように人型になってコミュニケーションをとれるようになるには色々と条件をクリアしないといけないのですが、マスターは何故か最初から解除されているみたいなんですよね。 理由はわかりかねますが】
「じゃああっちの武器の姿が本当の姿でこの人の姿は仮の姿?」
【そういうことになりますね。それと私は『天使』の中でも”討伐型〟の天使です。今回魔物をうまく枯れたのも相性が良かったということもあるかもしれませんね。 これが生産系の天使でしたらまあ首から上がなくなっていたでしょう】
「笑えないよそれ……っていうか討伐型ってことは討伐型以外のタイプもあるってことなの?」
【もちろん。まあ、どのくらいあるのかはどこか人が大勢いる街などに行ってみないとわからないでしょうけど】
「じゃあ詳しい話は別の人に聞くしかないのか ハァ」
【そうだね。とりあえず街に向かうのが無難だと思うよ。 っとそれとあそこに転がっている魔物の死骸に紫色の球体が落ちてるでしょう?】
ジブリ―ルが指さす方向には確かにばらばらにはじけ飛んだ死骸の一つにゴルフドールサイズの紫色の球体が半分埋まった状態で残っていた。
【あの球体をとっておいてね。あれがあると後々色々なことに使えるみたいだから】
「色々って?」
【天使たる私自身の武装強化とか マスターが身に着ける防具装飾品とかだと思う】
「そっか。そういうことなら取らないといけないか…… でもな……」
アレを触らないといけないと思うと気が引ける。正直あんなの触りたくない。
【つべこべ言わないでさっさと回収してよ。 いつまでもここにいるわけにはいかないでしょ】
「それはそうだけど……ううっっ!」
恐る恐る魔物の死骸から紫色の球体を引き抜いた。ブチブチブチと嫌な感触があったが我慢しなが引き抜くと今までのことが嘘のように目の前の魔物が粒子となって消え、あとには戦闘の痕跡だけが残っていた。
【回収したね。それじゃちゃっちゃと街の方に行きましょうマスター。 時は金なり……だよ】
そういういとジブリ―ルは再度武器に変身してゆうの手に収まった。
【しばらくはこの状態でいるね~ 背負ってくれればいいから街についたらまた声かけてね。」
そう言い残してジブリ―ルは無言になった。
「いくらなんでも投げやりじゃないかなこれ?」
文句を言ってもなにも反応しないジブリ―ルに文句を言うのをあきらめたゆうはがっくりと肩を落としながらもジブリ―ルを背負ってとぼとぼと道を歩き出した。