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私が好きなのは 5

「なに『いいなあ』って顔してんの?」

向かいにいるユマちゃんの斜め後ろに、急に無の表情で現れたハタナカさんだ。

「…」

当然何も返せないけど。

 ユマちゃんがちょっと振り返ってハタナカさんを確認すると、そのユマちゃんにハタナカさんが、「ねえササキさん?」と聞いた。

 「ユズちゃんもやっとさあ、」とニコニコ顔で言い始めるユマちゃんに慌てるが、ユマちゃんはしれっと続けた。

「やっとタダの返信が気になって来始めてんだよ。それで私の彼氏がどんな感じで返信してくるか聞いてきたの」

 

 こらこらこらこらこらこら…

 『こら』を千回くらい言いながらユマちゃんを小突きたい!

 もう~~~、と思う。言うよね、ユマちゃん。私がハタナカさんに言って欲しくないのわかってて言うから。

 あ!しかも!ユマちゃんの口の端がちょっと笑ってる!さらに何か言う気じゃないの絶対止めて欲しい。

 ユマちゃんを睨んでちょっと首を振って見せる。それ以上何も言うなという意味だ。本気で怒るよもう!

 が、ユマちゃんはニヤッと笑って、こくん、とうなづいてみせた。嫌な予感しかしない!

 「ユズちゃんさ、タダの事もうかなり好きになって来てるよね!ね?ハタナカさん」

ユマちゃんは天真爛漫を装ってそう言い放った。

 最悪ユマちゃん。ハタナカさんがものすごくタダを好きなの知ってるくせに。さすがにハタナカさんもちょっと驚いた感じを一瞬見せたが、それはほんの一瞬だった。ニッコリ、と大振りに微笑んでから急激に白目をむいて見せてきた。

 こわっ!


 「ユズり~~~ん」

白目を向いたまま、たしなめるように低い声で私を呼ぶハタナカさん。

「…」

もう~~~!ユマちゃんがくだらない事言うから!

 ハタナカさんに返事が出来ず、ユマちゃんを睨む私をもう一度白目のハタナカさんが呼んだ。

「ユズり~~~ん」

「…なに?」

 白目を止めたハタナカさんが言う。「なんか初々しいねぇ~付き合い立ての感じいつまで続くんだろうなあ~~イラっとする」

…付き合ってないけどまだ!と思うがそれは口に出さない。

「やだハタナカさ~~ん」ユマちゃんが笑う。「そんな事言うと、ユズちゃんたら、『付き合ってないけどまだ』とか答えちゃうんだって!」

 !

 

 ユマちゃん…

「マぁジでぇっ!!」とハタナカさんの驚いて見せるジェスチャーが大きい。

 止めて欲しい…せっかくユマちゃんとこそこそ話してたのに…ていうかユマちゃんは私の友達じゃないのか!!

 …タダは…今教室にいない。良かった。


 「まぁだそんな事言ってんの!?」とハタナカさんが大きな声を出す。「信じらんないどんな顔して言ってんの!?ねえユズりん。顔見せて顔。怖いわ。もう公認のくせに今頃まだそんな事言ってんの!?バカじゃないのバカなのふざけてんじゃねえぞ」

「…」

「ってみんな思うよぉ?」ハタナカさんは可愛い口調で笑うが目が笑っていない。「ねえササキさん」

「思う思う~~~」とユマちゃん。

「はぁ~~~~」と今度はわざとらしく大きなため息を吐くハタナカさん。「なんでそんなかなあユズりんは。ねえササキさん?」

「そうだよね~~」とユマちゃんがハタナカさんに賛同する。「思う思う~~~」

こらこらこらこらこらこらこら!『こら』を一万回言うよね私。



 「なんかさあ、イズミ君嬉しそうにマフラー着けてきてさあ、」ハタナカさんがふてくされる。「ふざけんなっつうんだよね。嬉しそうな顔がめっちゃくちゃカッコいいしもう~~~!腹立つっ」

「…」

 何も返せない私とギャハギャハ笑うユマちゃん。

 タダが交換で、自分が使っていた赤いマフラーを私にくれた事はユマちゃんにも言っていない。

 絶対教えないでおこう!

「まあねえ」とユマちゃん。「そりゃユズちゃんからもらったら何でも嬉しいんじゃない?」

「ちっ」とハタナカさんが舌打ちした。そしてすぐ、「あ、」と言う。

「やぁだ~~思わず舌打ちしちゃった~~~。出ちゃったわ、堪らず」

「大丈夫大丈夫」とユマちゃん。「そりゃ出るわ舌打ち。ハタナカさんもずっとタダの事好きだったもんねえ」

「やぁだササキさん。今でもすんごい好きなんだって。何言ってんの」

「ごめんごめん」

首をすくめ、てへっと笑うユマちゃん。なんなんだ、この二人。もう1回思うけどユマちゃんは私の友達なんじゃないのか。


 「でもそんな…」このままではいけないと思って言う。「別に公認とかじゃないと思うし」

「はあ!?」

ハタナカさんに大きな声を出されてびくっとする。

「だって!」と頑張って続ける私だ。「ザワっとするじゃん…タダが私に何か言ったりするとすごいみんな見るし。そんな…全然公認とかじゃないよ」

 また白目をむくハタナカさんだ。白目むかれても仕方ないですけど。

「ハタナカさんもだと思うけど…タダを好きな子たちはみんなタダが私に構うの嫌だと思って…」

と言いかけたら、ハタナカさんが白目をむいたまま尖らせた唇を「ぶ~~~~~」と鳴らした。

「いいじゃんザワっとさせたら」簡単に言うユマちゃん。

「いやだよ」

そう言ったら速攻でハタナカさんに「なんでよ?」と冷たく突っ込まれた。

「私だったら、」とハタナカさん。「逆に嬉しいよ。イズミ君みたいなカッコいい子に好きだって思われて、みんなに羨ましがられて、ほらほらもっと羨ましがれ!って思うよね。もっとザワつけって思うよね。イズミ君は私のものよ、せいぜいザワつくがいいわ!って思う。ひざまずけそこらへんの女子どもめ!って」

 女王か!と心の中で突っ込むがもちろん口には出さない。

 が、「なに?」と睨まれた。まずい、顔に出てた?


 そりゃハタナカさんくらい強気だったらそう思っても逆に清々しい感じすらするけど、私は違うからね。

「まあねえ」とユマちゃんが言う。「まあユズちゃんはしみしみしてるから」

うるさいな!と思って口には出さないがユマちゃんを睨む。

「それにユズちゃんのそういうしみしみしたとこも、」とユマちゃん。「タダは好きなんじゃないかなあ」

「ちっ」とまたハタナカさんが舌打ちをした。

ハハハハハ、とそれをユマちゃんが思い切り笑うので、私は、うわもう!、と思う。

 「あ、ねえねえねえねえササキさん。…ていうかこれからユマユマって呼ぶわ。ねえユマユマ、私ユズりんにマフラーもらうんだ~~~誕生日に。イズミ君とおそろいのやつ」

「え~そうなの?」と普通に答えるユマちゃん。「ユマユマも欲しい~~~」

 バカかユマちゃん、と思うがもちろん口には出さない。





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