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〆21 ティファニーで学食を





キーン コーン カーン コーン


昼休みを告げるチャイムの音で、私は目が覚めた。


気付けばあの大会から、もう二週間が経とうとしていた。

結論から言うと私は負けた。

じゃあ優勝者は馬雀なのかと言うとそうではない。一度はフェンスにめり込みリタイアしたと思われていた杉宮アンドリュー権田原さんが奇跡の復活、怒涛の追い上げで見事逆転勝利を納めたのであった。


特食券を逃したのは残念ではあるが、不思議とそこまで悔しくはない。

特食よりも大切な物。あの大会にはそれがあったのだ。



授業が終わっているのを確認して、私は小さく伸びをする。

今日の四限は百合沢先生の代わりに臨時教師が授業をしてくれていたのだが、いかんせん内容が難しくて意識を手放してしまったらしい。


なるほど比べてみれば百合沢先生の授業って結構分かりやすかったんだなー。ま、現在は月食大会での大乱闘が学園長の耳に入り絶賛謹慎中とのこと。


つくづく残念な人だ。


それでもクビにならないあたり人徳の成せる技というか、なんだかんだで皆に好かれているのだろう。うん、やっぱり百合沢先生は『良い先生』なんだと思う。


何か、百合沢先生と約束事があった気がするけど、うーん堀さんとツーショットで写真? 勝手にそんな約束したのがバレたら、堀さん絶対怒るだろうなー。堀さん怒ると怖いんだよなー。


いいや。作者だって今の今まで忘れてた設定だもの。百合沢先生も忘れているっと事でここはひとつ。ほんと、ガチで願います。


「おーい食堂行こうぜ」


九後雷さんが捻挫した片足を庇うようにぴょこぴょこと駆け寄る。


「やっぱり病院行ったほうがよくない?」


「軽く捻っただけなのに心配しすぎ。そうだ。だったら大鳥居肩貸せよ。おー、こいつぁ楽ちん」


「全く、仕方ないなぁ」


九後楽さんに寄りかかれたまま教室を出る。


月食大会その後、嬉しい事にバレー部に入部してくれた九後雷さん。

センスは抜群なんだが、基本のほうはどうしても積み重ねが物言う。よって今は毎朝部長と猛特訓しているらしい。

それで怪我してちゃ世話ない。


「部長も、もう少し優しくしてあげないと。九後雷さんは初心者なのに」


「いいや、僕の功夫(バレー)が足りないのがいけないんだ。

見てろよ次の地区大会まで絶対レギュラーになってやるんだ」


「なんでそこまでして……?」


「そんなの、大鳥居と一緒の舞台で闘いたいからに決まってんじゃん」


言わせんなよ恥ずかしい。そう言って顔を背ける九後雷さんは耳まで真っ赤で、わあ、乙女だなぁ。

かく言う私もなんだか照れてしまったわけですがね。



「む! また二人してくっ付いてからに」


階段の踊り場では堀さんと合流した。

「馬雀は?」

「四限体育で多分早めに終わるだろうから、先に席取っとくって」


それはありがたい。


「いいから九後雷さん離れなさいよ。大鳥居さんも迷惑してるでしょ?」


「えー? 迷惑な訳ねぇよなー? だって僕たちは友情の証によって結ばれてんだもんなー。指輪チラッチラッ」


「きーーっっ! その指輪は私が! 大鳥居さんにあげたのに! おんどりゃー返さんかい!!」


「うけけけけ! ヤなこったー!」


いつもこの調子でいがみ合っている二人だけど、心の底では気を許しあっているように思う。元々根が黒い堀さんとヤンキー気質の九後雷さんとで中々にお似合いだ。って言ったらWで怒られそうだ。だから、

「二人とも仲いいね」

と言えば、

「「どこが!?」」と声が揃う。


ほら、やっぱり仲いいじゃん。

ちょっとジェラシー感じちゃうなー……。




小説を書いていた手を止め、彼女は恨めしそうに愚痴った。

「遅いですわよ三人方」


食堂で馬雀を見つけると、開口一番にそう言われた。

ちなみに今書いてる小説のタイトルは『オダギリスタッパー』らしい。

……いろいろと大丈夫だろうか?


「なんですの? それ?」


私が聞きたい。何故か堀さん九後雷さんが両脇にしがみついて離れてくれないせいで、食堂に来るのが遅れてしまったのだ。


「……妬けますわね」


「なんか言った?」


「いいえ空耳でしょう。さて二人とも、そうくっ付いていたのでは、いつまでも大鳥居さんがお弁当を出せませんわよ?」



シュタタッ!

面白いように素早く席につく彼女達に、ため息をつきながら弁当箱を取り出す。その数よっつ。


「あんま自信ないんだけどね」


そう。月食大会に向けた朝練で早起きの習慣が身についた私は、弁当作りをはじめたのだ。(堀さんは変わらず朝は限界まで寝たい畑の住人でいる事を貫いている)

月食キツネうどんによって、食堂のおばちゃんと脳内チャンネルが開通した賜物から、毎朝おばちゃんにテレパシーでレクチャーされながら弁当を作っている。

のだが、途中でいつも回線割り込みしてくる恵先輩の毒電波ノイズが酷いのが悩みの種か。あのひと怖い。


堀さんがコソコソ手を伸ばしたのを見て、ひょいと弁当箱を取り上げる。


「ああ! 私のお弁当!?」


「その前に払う物を払ってもらおうか」


「大鳥居さんのケチ! 守銭奴! 友達からお金を取るなんて、今だから言うけど大鳥居さんのそんな所、大っ嫌い!!」


「そうかじゃあ馬雀、一個弁当余ったからついでに食べるか?」


「ええよろこんで」


「うそっ! うそだから! 払うからっ! 大鳥居ちゃんの意地悪っ!」


しぶしぶ200円を財布から取り出す堀さん。なんだよキツネうどんより安いんだからいいじゃない。


「今のは堀がわりーよ。弁当だってタダじゃねーんだし、むしろ良心的な値段だべ」


「そうですわ。大鳥居さんの料理の腕が上達すれば、その分弁当のランクが上がるのですから。先行投資と思えば良いのです」


おい馬雀、暗に弁当の味にケチつけたな今?

いいもん! いつかみんなに「うんめぇっ!」て言わせてやるもんっ!



こうして乙女が四人揃えば、楽しくもやかましい時間が今日も始まるのである。



「おー、なかなか玉子焼き上手くなったじゃんか。でも唐揚げはイマイチだな30点」


「おっと、料理得意だからって上から目線か九後雷さん? 今日の部活、覚えとけよ?」


「馬雀様馬雀様! この唐揚げと特食の鮭の切り身交換しましょうよ!」


「嫌ですわ!」


「そもそも弁当と特食ダブルとか何でそれで太らねーの? 舐めてんの?」


「太らない体質ですの。個人的にはもう少し肉を付けたい所なのですが」


「今だから言うけど、馬雀様のそういう所嫌い…」

「ああそうだね」

「完全に同意だわ」


「わたっ…! わたくしが悪いんですの!!?」








ティファニーに食堂は無いらしい。




されど、学食には宝石とも呼ぶべき物があるって、知ってるかい?



それは……








「ツマーリ、青春の絆こそが宝石(ジュエリー)なのデース!」





「「「「なぜ居るジョジペパ!?」」」」











ありがとうございました。

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