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第八話-夜会とおっぱい

「ステフに何をしたんですか!」


 エラメリアがゾルフに向けて手を向ける。そこには強い敵意が見て取れた。だがゾルフは困ったように首を振っただけで両手を上に上げる。降参のポーズだ。


「ちょっと眠気を誘ってやっただけだよ。少しエラたんとも話がしたかったし。そっちとしてもステフに聞かれると自制しちゃうだろ? 大丈夫、体に害はない。ここは同期の仲だ、久々に腹を割って話そうぜ」


 そういってゾルフは胡坐をかく。

 エラは彼に戦意は無いととったか、それでも警戒は怠ることもなくゆっくりと腰を下ろした。もちろんステフには布団をかけてやる。


「本当に大丈夫なんでしょうね」

「ああ、それは約束する」

「・・・」


 それっきりどちらも声を発することなく数瞬の時が経つ。パチパチと燃える炎から火の粉が飛んできた。

 先に口を開いたのはエラメリアだった。


「・・・では、あなたがどうしてここに居るのか説明してもらいましょうか」

「まあ落ち着けよ。とりあえず一杯飲もうぜ。ひと瓶持ってかれちまったが実際これはいい酒なんだ」

「いりません。さっさと続きを」


 噛みつかんばかりの勢いで急かすエラメリアとは対照的に、ゾルフは落ち着いた動作で持っている酒瓶に直接口を付けて流し込む。

 エラメリアは睨むようにしてそれを見ている。

 口元に付いた滴を袖で拭いながら、ゾルフはやれやれと言った表情でエラメリアを見据えた。


「焦るねえ、まだ夜は始まったばかりじゃないか。夜と言えば、君ら晩飯食ってないけど大丈夫なの? 無理矢理寝させたオレが言うのもなんだけどさ」

「一度ぐらい抜いても平気です」

「師にも一日三食は徹底しろって何度も釘を刺されてたじゃないか。まあいいけどさ。さて、オレがどうしてここに居るかだっけな。おおよそ理由はわかってると思うけど、久々にヤツが現れたんだ」

「・・・銀の狼ですね」


 深刻な雰囲気が流れるも、どこ吹く顔でゾルフは話を続ける。


「そ。今回はまだ子供だけどな。だが巨大化する前に先手は打っといた方がいいだろうってね。どこのギルドもこの依頼ばっかりさ」

「道理で動物たちが少ないとは思いました。ただ足跡は無かったのですでに結構遠くに行ってるものだとばかり」

「実際この辺にはいないはずだぜ。あんなもの近くに居たら一発でわかるしな。オレがこんなモタモタしてたのには理由があるのさ」

「あなたが出遅れるなんてまずありえませんからね。近くの街で問題でもおきたんですか?」

「うんにゃ、一緒に寝た女に有り金全部持ってかれたんだ。とりあえずの金作るのに時間かかっちまった」


 心底呆れたような顔でゾルフの顔を見るエラメリア。

 その瞳は「またか」と語っているように思われた。


「・・・話を戻しましょう。あなたは銀の狼を追ってるわけですよね、だったら私たちについてくるのは間違ってるんじゃありませんか? 私はステフが危険に晒されるような道は絶対通りませんよ」

「わかってるさ。だから気が変わったんだって。エラたんが気に掛ける子供は今までにもたくさんいたけど、一緒に長旅に付き合わせるほどの子なんていなかったじゃん。そんでオレもステフって子に興味がわいたのさ」

「確かに私は危険な旅には子供を付き添わせたりしませんでした。ですがステフは別です。彼女には安全な地が必要なのです」

「ほう、というと」


 エラメリアはここで一旦言葉を切った。果たしてゾルフに我々の話をしてよいものか。別に隠したいことがあるわけでもないが、一層この男に目をつけられてしまう気がする。

 逡巡の後、渋々といった様子でエラメリアはステフとの出会いやそれによってどんな状況になっているのかを説明した。ところどころゾルフからも質問が入り、その度に丁寧に教えてやる。

 なんだかんだいいつつもこの二人には深い繋がりがあることが見て取れる。


 ある程度話し終えたところでゾルフがため息をついた。


「なるほどねぇ、急に現れた女の子か。生活スタイルや服装も違う、それでいて活発な子供。中々に裏のありそうな子じゃないか」

「ステフはそんな怪しい子供じゃありません」


 ムッとした顔で応じる。

 ゾルフは手をヒラヒラと振って誤魔化した。


「わかってるよ。彼女はどこまでも純粋無垢な少女だ。さっきもあの子を眠らせたのは、あまりの純粋さにオレがやりにくくなったからってのもあるんだぜ。ただな、何か隠してるのはエラたんもちゃんと気づいてるよな?」


 その言葉に、先ほどまで優勢だったエラメリアの顔が歪む。


「・・・ええ。でもそれはお互い様です。それにステフは少なからず悪意を持った子ではないと思います。ただちょっと後ろめたい何かを隠しているだけのような」


 言い訳染みた単語を並べる彼女に、ゾルフは再び手を振ってはぐらかした。


「いやいい、そこまでわかってんならオレはもう何も言わないさ。じゃあこれからもお前さんら二人が旅をしていくとしてだ、やっぱりオレはいちゃだめか? 頼りになるぜ」

「ダメです」

「即答だな。ちなみに無駄だとはわかっているが理由をお聞きしても?」

「・・・ダメなものはダメです。そもそもあなたと一緒にいるとステフの身が危ない」

「警戒のベクトルがそんなセクハラ染みた方向だったとはな。エラたんマジで嘘が下手なんだもん。だったらオレが絶対にステフにもエラたんにも手を出さないって約束したら連れてってくれんのか?」

「・・・嫌です」

「でも聞いた限りじゃステフは戦闘のスキルがゼロに近いんだろ? 魔術のセンスも無いんだとか。そりゃエラたんが全部教えることもできるだろうけど、こと剣術に限ってはオレが教えた方がいいんじゃねえか? なんせこの性格で国に抜擢されるほどだし」

「・・・・・・確かにあなたは剣術も魔術も優れていますが、やはり今までの言動から信用なる人とは思えません。日々警戒しなければならないでしょう」

「そこまで行くと最早意地だな。わかった、こうしよう。基本的にオレは君たち二人の私生活にはノータッチ。たまに口出す程度。エラたんのいうことはなんでも聞く。以上の約束を破ったら即追い出される。これでどうだ?」


 断っても断っても折れないゾルフに、エラメリアは心底ウンザリしたように身を引く。

 そうして尚瞬き一つせずエラメリアの言葉を待つゾルフ。

 しばし熟考した後、諦めた顔で声を漏らした。


「・・・・・・はぁ、仕方がないですね。どうせこれ以上断っても後ろからこっそり付けてくるだけでしょうから。私の目の届く範囲に置いている方がいくらか安全です」

「そうだろそうだろ。オレ名案」

「ただ条件を追加します。水浴びや着替えといった女性の時間には絶対覗かない事、寝るときは私たち二人の対角線に寝る事」

「それエラたんの命令で規制すればいいんじゃ」

「より明確にしただけです。少しでも怪しい点があればすぐ出て行ってもらいますよ」

「わかった、それでいこう。ただし適当なこと言ってオレを追い出すのはやーよ?」

「・・・わかってます、そんな子供じみたことはしません」

「今の間は」

「気にしないでください。ではもう今日は寝ます。明日に備えなければ」

「へいへいっと。あ、エラたん悪いけど布団貸してくんね? 無くしちった」

「嫌ですふざけないでください・・・ってこれ! あなたなんでいつも人の荷物漁るんですか」

「だってオレ荷物ねえもん。腹減ってたんだもん」

「毎度毎度泥棒みたいなことをして。せめてぶちまけるのはやめてください。次この様な事をしたらパーティから外れてもらいますからね」

「流石にメンバーからは盗まんよ。自分に返ってくるだけだし。てかエラたん何気にパーティ入りさせてくれてんのな」

「ッ・・・違います。調子に乗らないでください」

「わーお生ツン。ご馳走様です」

「明日があるといいですね」

「冗談だって。んじゃお休み~」


 互いに火を挟んで体面に寝転がる。

 ゾルフはさして寒そうなそぶりを見せることなく体を横にし、エラメリアはステフを抱くようにして寝た。

 二人で一枚の布団を共有する。枕は作れなかったが、これも仕方があるまい。


 人肌の温もりに一瞬気が緩むものの、エラメリアの心中は穏やかではなかった。

 ある程度立てていた計画が、ゾルフも参加したことでずれてしまったためだ。

 基本はゾルフはノータッチだと言っていたが、ああみえてお節介な彼の事だ、ことあるごとに口を挟んでくるに違いない。

 食料などといった消耗品に関しても調整し無ければ到底持ちこたえそうになかった。・・・考えることが多すぎる。


 エラメリアが布団に入ってからもこれからのことについて思いを馳せていると、すぐに離れたところから大きないびきが聞こえてきた。

 ゾルフを遠ざけた理由は二つだ。

 一つ目は女性陣の身が危ういから。

 二つ目は彼のいびきにあったのだ。

 どこでも寝れる彼の秘密はいびきにある。そのあまりのおぞましい音に動物たちが襲ってこないのだ。

 ただしこれはパーティメンバーにも言えたことで、彼の近くでは絶対に眠ることはできないのだった。


 エラメリアはかぶりを振って頭ごと布団にもぐった。ステフも一緒だ。


――すうすう


 ステフからは健やかな寝息が聞こえてくる。

 布団によって閉じられた空間において、その小さな音ははっきりとエラメリアの耳に届いていた。

 ふふ、とエラメリアから声が漏れる。慌てて口を閉じた。


(いけませんね、ステフが無防備すぎます)


 ステフのつむじ辺りを眺めるエラメリア。

 静かに手を伸ばし、ステフの頭を優しく撫でてやる。

 少量の寝汗をかいていたステフの髪はしっとりとしていた。それが子供特有の雰囲気を醸し出す。愛おしさに胸が引き締められるのをエラメリアは感じ取っていた。


(これは私がしっかり守ってあげないと・・・)


 危険な状況からも、悪の手からも。ステフを街に連れてくに当たって、それだけは自分が徹底しなければならない義務だ。絶対に彼女を危ない目に合わせるものか。そう固く決心したのだった。


 さて、そろそろ今日も終わる。これ以上の思考は明日の起床に影響を来たすだろう。

 考えなければならないことはいっぱいあるが、それはまた明日に回してもよかろう。

 今後の自分たちに微かな期待と不安を覚えながら、エラメリアはゆっくりと眠りについたのだった。



 ――いびきは既に止まっていた。



*****



 起床。誰よりも早く俺は目が覚めた。

 空はまだ闇がかっている。端っこの方がまだ明るくなり始めたころだろう。

 だがそんなことはどうでもいい。問題は目の前の光景にあった。


 エ ラ メ リ ア の お っ ぱ い


 余計な説明注釈では逆に伝わりにくくなるに違いない。

 簡潔に説明するならこう言う他ないだろう。単に俺の語彙力が無いだけかもしれないが。

 ともかくエラメリアのおっぱいを前に俺の思考回路は完全にショートしていた。


 高ぶる興奮を無理やり抑えながら、俺は必死で現状を確認する。


 まずひとつ、俺は布団に潜り込んでいる。

 ふたつ、目の前にはエラメリアのおっぱい。

 みっつ、それらから察するにどうやら俺はエレメリアと夜を共にしたようだった。


 うんわからん。えぇ、どうしてこうなった。

 ・・・いかん、昨夜の記憶が全くない。

 もしかして俺はエラメリアと一線を越えてしまったのだろうか? もしそうだとしたらその時の記憶が抜けてるなんて最悪だ。

 嫌でも待て、今の俺は女なんだ。

 エラメリアにそっちの気があるとは思えない。

 だとしたら考えられるのは――



 ――ステフ、あなたはどうやら女の子の身体を知らないようですね

 ――だって俺、元は男だもん

 ――うふふ、では私が手取り足取り教えて差し上げましょう

 ――それってどういう・・・?

 ――ホラ、力を抜いて

 ――ちょっエラ! そこはダメっ・・・・・・アッーーーー!!!!



 ・・・ありえる。


 いやありえんわ。

 流石の俺もゾルフがいる前でそんな行為に及んだりはしない。別にゾルフがいなくたって同じだ。

 恩人に向かって仇で返すようなマネをするとは考えられなかった。・・・まあ現世の俺ならあるいは、ね。


 待てこんなことを考えてたんじゃない。なぜ俺とエラが同じ布団で寝ているのかだ。

 布団に入るまでの経過が一ミリも湧いてこない。

 何をどう間違えたらこのような状況になるのかさっぱりわからなかった。


 でも思い出せないものはしょうがないからな、エラメリアが起きた後のことを考えよう。

 第一声になんと言えばいいんだろう。夕べはお楽しみでしたね? 違うそれは宿屋の店員だ。

 この場合はなんだ。何が正解なんだ?


 生まれてこの方恋愛経験のない童貞にはこんなシチュエーションは荷が重すぎる。

 ああもうおっぱい凄いしいい匂いもするしで何も考えられない。

 とにかく今は少しでもエラメリアを起こさないようじっとしていることが大事だ。

 心を無にしろ、俺!



 その後二時間に渡って一人の少女(?)は悶々とし続けたそうだ。

 おっぱいの持ち主に茹蛸状態になっているところを救ってもらうまで瞬きすらできなかったという。目は真っ赤に充血していた。


 後に彼女ははこう語る。


「脳が支配されるような、恐ろしい感覚でした。ただもし叶うならもう一度あの楽園を拝みたい。ユニバース!」



*****



 珍しくも三人で朝食。今のところ誰にも出会うことなく、エラメリアと二人きりの食事ばかりだった俺にはなんとなく新鮮に感じれられた。

 ゾルフは話好きな男で、エラメリアがなんの反応を示さなくても一人でずっとしゃべっていた。

 俺は最初の内はその興味深い話に相槌を打っていたが段々疲れてきて、しまいには適当にうなずくだけになっていた。

 それでも話をやめない彼はすごい。


 俺が眠った後に二人で色々話していたのか、エラメリアからは昨日の様な敵意は感じられなかった。

 不服そうではあったが仕方あるまい。

 そしてこの頃には俺もすっかりゾルフへの警戒は薄れていた。

 エラメリアの態度がきっかけになったわけではないが、俺はこの男にも心を許していたように思う。


「つーことで、オレはその王女様とめでたく恋に落ちたわけよ。これで話はおしまいだ。といってもまだ第三章だがな。この次の第四章”望まれぬ結婚”はもっと興奮するぜ。お子様には刺激が強いから心して聞けよ?」

「・・・・・・ふう、あなたはいつまで話続けてるんですか? つまらない作り話ばかり聞かされてステフも限界ですよ」

「おいおいそんなこと言うなよぉ。だいいち作り話じゃねえし。実話だし。それにつまらないことないよな、ステフ?」

「うえぇ?! ・・・ま、まあまあかな、はは」

「ほらね、どんなもんよ」

「・・・子供にまで気を使われるとは、かわいそうな人ですね」


 あー、うん。中身は一応大人(じゅうきゅう)なんだけどね。

 エラメリアは呆れたようにため息をつくと、調味料の小瓶を片付け始めた。俺も慌てて残りを口に詰める。

 ちなみにゾルフはとっくに食べ終わっていた。いつのまに・・・。


「さて、では荷物をまとめてください。出発しますよ」

「ほーい」

「の前にちょっといいかな」


 ゾルフが右手を挙げて注意を煽る。何か発表でもするらしい。


 エラメリアは大方予想していたのか無言でその先を待つ。俺もそれに倣って黙っていた。

 ゾルフはわざとらしく咳払いをすると、昨日見たものよりよっぽど胡散臭い笑顔を顔に浮かべてお辞儀をした。


「オレ、ゾルフ=テルノスはエラメリア=シーストーンの下パーティに参加することを宣言致します。・・・つーことでよろしくな、ステフ」


 俺はさして驚く風もなくゾルフの表明を受け入れていた。エラメリアのゾルフへの当たりが和らいだところから大方予想していた展開でもあったからだ。

 とはいえ無言で流すのも場が冷めるというものだろう。

 俺は「うん、よろしく」とだけ言うと静かに拍手を送った。エラメリアも仕方なしといった風に手をならす。


 二人に歓迎されゾルフは嬉しそうにへこへこ頭を下げていた。

 まあ、なんだ。さっきまでの不気味な笑みを清算するくらいには本物の笑顔だったような気もする。

 ゾルフも見た目は怪しいが根はいい人なのだろう。

 エラメリアとの付き合いも長いようだしな。


 エラメリアの最初の態度によって抱いた先入観はここにきて完全に消滅した。

 仲良くやっていけるといいな。

 ・・・それに、認めたくはないが照れ笑いを浮かべるゾルフは思いのほかイケメンだった。

 なんでやねん。


 さて、荷物もまとめ終わりいよいよ俺らはその場を発つ。

 男であるゾルフは布団やらなにやらと重めの荷物を持たされていた。

 エラメリアが使っていた魔法は知らないのか、ちゃんと自分の腕で持っているゾルフはなんとなく不憫だった。

 彼女に連れ回される男を連想させる。

 だが本人はさして重そうなそぶりを見せず、反対に活き活きした顔で持ち上げていた。

 心なしか鼻息が荒い気がする・・・っあ、絶対エラメリアの匂い嗅いでるだろアレ。いいなあ。



 出発して少し経った頃、急にゾルフが馴れ馴れしく肩を抱いてきた。重めの荷物はすべて片手で持ち上げている。すごい力だ。

 なんやという顔で見上げる俺にゾルフはあっけらかんと答えた。


「いやー、ステフの尻見てたらなんとなく昔のエラたんを思い出してな。小振りでぷりっとした尻は幼子ながらにオレのハートを揺すったものだよ。なあステフ、ちと揉んでもいいか?」

「・・・いいわけないだろ」


 汚い男の手を振り払う。悲しそうなうめき声が聞こえた気がしたが、当然のように無視した。


 てかヤバい、いつの間にか俺自身が女の身体に対応してきている。

 最初こそトイレやら何やらで恥ずかしい面もあったが、たった二日やそこらですっかり平気になってしまっていた。

 まずいな、この調子でいくと街に着いたら「キャーこの下着かわいい~」とか言いながらエラメリアとショッピングをしてしまいそうだ。

 焼け石に水程度の効果もないかもしれないが、頃合い見て男の服も着ておかないとな。

 ゾルフなら喜んで貸してくれそうな気がする。


 気が付いたら真横にいたエラメリアにゾルフはなにやら釘を刺されていた。ゾルフは青ざめた顔で謝罪を述べている。

 なんだろう? まあいいか。


 静かになったとはいえ後ろから聞こえてくる荒い鼻息に顔をしかめながら、俺はエラメリアの後を追う。

 はたから見るとゲームとかで見る勇者様御一行みたいになっているだろう。

 それはそれで面白そうだが。


 仲間が一人加わるというイベントにさらなる楽しみを感じる。

 エラメリアとゾルフの過去についても聞きそびれたままだ。

 二人の過去か・・・絶対面白いと思う。師とかいう人の話も聞きたいしな。


 おっと、もちろん俺も自分を高めるために一生懸命頑張らなきゃだ。旅の心得はもちろんの事、魔術や最初は渋っていた剣技にも手を付けてみたいものだ。

 我ながら溢れんばかりの向上心である。


 早速今日から魔術の練習を教えてもらう。長旅の果てにはどんな自分が立っているのだろうか。

 魔術に関してももっと派手なものに出会えたりもするだろう。

 想像したら自然と口角が上がってきた。ムフフ。


 この世界が夢だという可能性はもはや無いに等しかった。

 俺は果たしてこの身体に生まれ変わることが出来たのか。

 どちらにせよ、やると決めたからには後悔の無いようにしたい。


 熱い闘心を胸にまた一歩、力強く足を踏み出す。旅はまだ始まったばかりだ。



三日目の出来事:仲間が一人増えました。

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