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第四話-いざ出発

 どうやら目的地まで、約3ヵ月かかるそうだ。


 最初はめちゃくちゃ遠いなと感じた。

 しかし、急いだところで特になんらプラスも無いのだ。

 エラメリアは何か目的があっての旅なのだろうが、俺には全くと言ってもいいほど何も考えてない。

 だったら俺がエラメリアに合わせるのが筋ってもんだ。


 それに、それぐらいもあれば俺もある程度旅に慣れてくるだろう。

 目標としては、エラメリア無しでも旅ができる程度にまではなりたいものだ。





 朝、さわやかな風と太陽に照らされて目が覚めた。よかった、どうやらまだ夢は覚めてないらしい。

 普段は滅多に聞けない鳥の囀りに再び心地よい眠りへと誘われそうになるも、気合と根性で精神をたたき直す。

 そうだ。今日から俺も一人前の冒険者(旅人)を目指して頑張るんだ。


 起き上がって目をこすっていると、すでに起床していたエラメリアに水の入った瓶を渡された。

 それで顔と口内を洗い、用意された朝食を頂く。

 フランスパンみたいなカチカチのパンに、色とりどりのジャムを塗って食べるというのがこの世界の朝食の取り方らしい。

 適度にカスッカスでおいしい。


 食事を摂りながら、エラメリアは今後の動きについて話し始めた。


「さて、では今日から早速活動を開始します。道は途中の休憩地点をいくつか盛り込んだルートを使いますので、初心者にもかなり楽な旅になると思いますよ。とりあえず南の方へ進みましょう。最初の目的地は湖にしました。一週間ほどで到着すると思います」

「サー、イエッサー!」

「? ・・・とはいえ、やはりある程度の過酷さがないと面白くありません。若干危険な道を通って湖のほとりまで行こうと思っています。大丈夫ですね?」

「アイ、ボス! どこまでもついていきます!」

「・・・なんです、その口調は?」

「いえ、お気になさらず。お世話になってる分際で悠々と寝ていたわたくしめにはエラメリア様と対等に話す資格など無いのです」

「あ、そんなことステフが気にする必要なんてないですよ。私が好き好んで勝手に決めてることなんで。やめてください、そういうのは。恥ずかしいです・・・気安く話かけてくださいな」

「は、しかしエレメリア様が敬語を使っておられるのにわたくしめだけが調子に乗るのも如何なものかと」

「私からの切なお願いです・・・わかりました、ではこうしましょう。ステフ、普通に話しなさい。これは命令です」

「オッケー。じゃあそういうことで今日からよろしくね、エラ」

「・・・切り替え早い人は嫌いじゃないですよ」


 エラメリア、ノリのいい人だ。

 まあ実際恐縮しまくってんのは本当なんだが。

 睡眠時間を削ってまで俺のために綿密な計画を練ってくれていたなんて、しかもその横で俺は気持ちよく眠っていたのだ。

 恩知らずにも程がある。この借りは必ず返そう。そのためにはまず旅スキルをしっかり学ばなくちゃな。


「冗談はさておき、ステフにはこれから言ういくつかの作業に慣れてもらいます。まず、キャンプ場所の設置。木を組み立て火を熾す作業がメインとなってきます。一見簡単そうですが、ちゃんと場所に配慮しなければならないので結構面倒です。


 次に、食料の確保。食べられる実とそうでないものをある程度覚えてもらいます。ステフが昨日食べたと言っていた木の実はベンジュの実と言って、主に酒や薬にして摂取します。基本そのままでは食べれたものじゃないので注意が必要です。そして料理。これは旅以外の場面でも有効なのでしっかり勉強しておきましょう。ステフは女の子なんですから、特に力を入れるべきスキルですかね。


 最後に、戦闘技術。これは旅先では必須のスキルとなります。いつどこで何に襲われるかわかりませんから。この辺りはかなり獣も少なく見晴らしの良い穏やかな地域なので気張る必要もないですが、もっと深くまで行くとおちおち寝ていられないような場所もあるんです。護身を兼ねているので、ちょっと厳しくなりますよ。本来ならパーティメンバーで各担当に分かれてそれぞれ極めていくべきなのですが、ステフには一通り学んでいただきます。私がいなくても並一通りの道なら冒険できる程度の技術を身に着けるまでは、休まる暇がないと考えていてください」


 ひょー、かなり厳しい訓練になりそうだな。引きニートは諦めずに頑張れるかしら。

 ちゃんと指導についていけるか強い不安を抱えると同時に、内から湧き出る強い感情に俺は血が滾るのを感じた。

 これこそ俺が求めていた非現実の物語じゃないか。夢にまで憧れていた冒険者設定じゃないか。今はまだゼロにも満たない存在だが、きっといずれはこの世界で大物になってみせるんだい!

 俺は拳を硬く握りしめた。


 ・・・いや待て待て。いつこの世界が本物だと証明された?

 それがはっきりするまでは出しゃばるのは控えようと決めたばかりではないか。

 それまでは着実に力を付けていくのだ。

 無作為に突っ走っても得るものなんて少ないしな。

 計画的にいこう、計画的に・・・はあ。


 若干気持ちが冷めてしまったが、それでも抑えきれない情動を脳はちゃんと知覚していた。

 にやける口角を必死で押さえつけ、表情を引き締めてしっかり頷く。


 残りのパンを詰め込み、よく味わってから飲み込む。気合を入れて頬を叩いた。よし!


「三カ月もあれば十分だ、全部習得して世界踏破してやる!」


 そう宣言して勢いよく立ち上がった。エラメリアが驚いてこちらを見る。

 ふふん、見てろよ。俺は一度気に入ったものはなんでも極めなければ済まないタチだからな。全部完璧にしてもっと驚かせてやろう。


 そう意気込んだ矢先、加重に耐え切れず腰に巻いていた布がはらりと落ちた。

 硬直したままエラメリアの頬が赤く染まる。


 バツが悪い思いをしながら俺はこそこそとタオルを拾った。

 そして、そこで目に飛び込んできたものに俺も固まる。


 パンツとズボンのことすっかり忘れてたワ。




 

「ところでその服、見たこともない服なんですが何の素材でできているんです?」


 飯の片付けをしながらエラメリアはそう尋ねてきた。この世界にはジーパンという服装は無いのだろうか。


「とてもしっかりした布地で労働に向いてそうな装備ですが。最初は動物の皮だろうと思っていたのですが、恥ずかしながらそのような色合いの動物も見たことが無かったのでつい気になりましてね」


 言われて俺も考える。はて、昔授業かなんかでジーパンは作業着から発展したものだと聞いた気がするが、素材については深く考えたこともない。植物の蔓とかだろうか。よくわからん。


「うーん、気にしたこともないので何で出来てるかはわからないですね。でも色は染料で後付けされたものだそうですよ。なんでも魔除け効果があるとかないとか・・・」

「へぇ、魔除けですか。刺繍や素材そのものにそういったまじない効果を付与するというのは聞いたことがあるんですが、染料に練り込んで着色するという方法は初めてですね」

「や、俺もうろ覚えなんで怪しいんですけどね。でももとは作業着として生み出されたものらしいので今旅するにしても十分だと思いますよ」

「そうなんですね。となると、私のこの服は必要なさそうですね」


 聞き捨てならない単語に作業の手を止めて振り向く。すると、エラメリアはある服一式を鞄にしまおうとしているところだった。


「待ってください、それは何ですか?」

「昔私が使っていた服です。成長するにつれていらない服は売り払っていたのですが、この装備だけは私が最初に使っていたものなのでお守り代わりに持っていたんです。ステフのその服、体に合っていないようだったので動きにくいならこっちに着替えてもらおうと思ったのですが。でもこの服より丈夫そうなのでそちらの方がいいですね」


 エラメリアの服・・・だと?

 そう認識した時にはもう、口が勝手に動き出していた。


「ちょいちょいちょい。そういえば俺もこの服体に合ってないなーと思っていたんですよ。裾も思いっきり引きずってるし。ちょっとその服見せてもらえません?」


 実際俺の服は今の身体には大きすぎた。

 当然だ。巨漢の男がギリギリ入るほどの大きさなのだから。

 適当に見繕った蔓で無理やり体に巻き付けている状況だが、本気で動けばいとも簡単に千切れてしまいそうだった。

 ピッタリ体に合う服なら是非ともお借りしたい。


 エラメリアから受け取った服は、動きやすいよう工夫された短めの装備だった。

 上は小さめのシャツで、伸縮性の高い生地を使っているのだとか。

 下も同様に小学生の海パンの様な形をしていて、伸び縮みしやすい仕様になっていた。

 どちらも身体のラインがくっきり浮き出るもので、体操選手や陸上選手の使っているそれに近いものがある。


 さらにそれだけでは擦過傷への対処も足りないことから、金属でできたアーマーを各関節と胸部に装着する様になっている。

 よかった、これなら俺でも着れそうだ。

 スカートやらワンピースやらが出てきたらどうしようかと思っていたところだ。流石にいくら女性の身体に憧れていた時期があったと言えど女装して行動する趣味はない。

 あーいや、今は女の子の身体だから悪くないのか。でもそういう問題じゃないよね?


「うわぁ、動きやすそうですね。正直こっちの方がいいです。ジーパン重いし。エラ、良かったら俺に貸してもらえないですか?」

「ええ、いいですよ。今の私には着れませんから」

「ありがとう!」


 礼を述べて俺はありがたく着替えることにした。

 上の服を脱ごうとしたところで、ふとエラメリアが哀しそうな表情を浮かべているのに気が付いた。


「あ・・・もしかしてかなり大事にしてた物だった? やっぱりジーパンに戻りましょうか?」

「いえいえ、違うんです! ちょっと昔の自分を思い出しちゃって懐かしんでただけなんで! 気にせず使ってください!」

「本当に? 無理してない?」

「本当に大丈夫ですから。むしろステフに使ってもらって嬉しいです。私が昔いろいろお世話になった物たちですから、きっとステフも守ってくれますよ」

「むーん・・・では、ありがたくお借りします」


 エラメリアの言動は多少不審な面もあったものの、ここで意地を張っても仕方がないと思い至り着替えを再開する。

 まあ本人も気にしてないと言ってるしね。大丈夫だろう。



 結果はというと、俺にピッタリのサイズだった。エラメリアも絶賛してくれたのでよほど丁度良かったのだろう。


「素敵です、似合ってます! ステフはいい感じに筋肉もついているので装飾栄えしますね。きっと街に出れば男性が寄ってきますよ」


 よくわからない誉め方だったけど、俺もまんざらでもない気持ちで自分の姿を見下ろしていた。

 引き締まった肉体に生地が張り付き、そのうえで軽めのアーマーが優しく関節を包んでくれている。

 これなら女の子特有の幅広い活動域も存分に活かしきれそうだ。

 ささやかながらに主張している胸もいい感じにガードしてくれていた。

 それに運よくスタイルにも恵まれて、すらっとした足腰からゴムの様な生地がきらりと光りを反射する様は我ながら美しいと思った。


 ただ、ひとつだけ気になる点がある。

 上は胸部装備のお陰でなんとか気にせずいられるが、下の方はどうしてもラインが気になってしまう。

 体にぴったり張り付くということは、即ち形状もそのものが浮き出るということで・・・殆ど下半身を露出しているようなものなので俺は非常に心もとない思いでいた。

 でもそれを言うのはせっかく貸してくれたエラメリアにも失礼な気がする。

 こういった時は別の見方をしてみよう。

 案外この世界ではこれがまともな装備なのでは? そもそもエラメリアがこの装備を使っていたわけだし・・・。

 ん? まてよ。ってことはエラメリアも俺ぐらいの時にはこのスタイルを貫いていたわけで・・・。


 そう考えるとこのちょっとエロい装備に愛着に似た感情が芽生える。

 いっそエラメリアにもお願いして二人でおそろいの装備にするというのはどうだろうか。

 押しに押してみれば、恥ずかしがりながらもちゃんと穿いてくれそうな気がする・・・!

 まあ流石に冗談だが。


 しかし、うーむ、エラメリアが・・・ねぇ。

 腰回りをついっと引っ張りつつ、無意識に想像を膨らませていく。


 やべ、ちょっと妄想止まんない。

 なかなかにエロくて、うっかり帰って来られなくなりそう。


 沈まれ、俺!

 恩人になんてことを!

 自制心はどこへいったんだ!

 ・・・いやでも一度気になってしまったものは中々理性では封じ込められないのであって。


 己と葛藤している俺をよそに、エラメリアは黙って俺の姿を眺めていた。

 先ほどとはうって変わって静かなその様子に、何かただならぬものを感じる。

 我に返り、どう反応したらよいものかと慌てていると、急に顔を上げたエラメリアに肩をつかまれた。


「ステフ、とっても似合っていますよ」

「え? あ、ああ、ありがとう・・・?」

「ただですね、ちょっと気に食わないところがあると言いますか。主に下の方なんですけど。ちょっと私にいい案があるので、良かったらあなたのパンツを貸していただけませんか?」


 パンツとはおそらくジーパンの事だろう。あれ、もしかしてコレ穴空いてたりしたのかな。別に俺は気にしないけど(だってエラメリアが使ってたやつだしハアハア)。

 まあジーパンを寄越せと言われたら別に構わない。

 服を借りた手前嫌とは言いにくいし、そもそもぶかぶか過ぎて着れない服なんて持ってても仕方がないのだ。

 特に思い入れがあったわけでもないしな。

 だから俺はいいですよと答えて手渡した。


「ありがとうございます。少々カットしたり色々いじったりとしちゃいますが大丈夫ですか?」

「別にいいですけど・・・」

「了解です。できるだけ染料は残す方向で行きますのでしばらく待っていてください」


 そういうと、エラメリアは何事か呟いて目の前に大量の裁縫道具を出現させた。

 そして空中で踊るそれらの前にどっかり腰を下ろすと、目が追いつかない程の素早い手捌きでジーパンを加工し始める。


 唐突に始まったそれは、大変に奇妙な光景だった。

 彼女の両手に弄ばれるジーパンは操り人形のように怪しく踊る。

 人形はエラメリアの腕が掠るたびに、その形状を少しずつ変えていく。

 まるで昔のコマ撮りアニメのように細やかに揺れるそれを静かに凝視していた。


 みるみる糸がほどかれ、布が小さくなり、多少手を加えられて再構築されてゆく。

 色も当初に比べて段々と濃い藍色になっているように思う。

 風を斬る音すらパフォーマンスの一環であるかのように、目の前の出来事は衝撃的な美しさがあった。

 神業とも言える手芸に思わず呼吸すら忘れる。


 そして言った通り「ちょっと」の時間で全工程を終わらせてしまった。

 ぼーっとしているうちに、いつの間にか道具も全て仕舞われている。

 完成品はエラメリアの腕に静かに横たわっていた。

 新しく作り替えられたジーパンに、驚愕とともにため息が漏れる。


「すごい・・・」

「ふふん。少し張り切りすぎちゃいました。結構上質な生地だったので加工もしやすくて」


 少しなんてものじゃない。

 出来上がったそれは、既にジーパンとしての役目をとっくに超えていた。

 全体的な形としてはジーパンの特徴を保ったいわゆる「ショートパンツ」の様な形をしていて、それでいてポケットやらなにやらと多機能なものもついていた。


「その穴やフックはナイフを刺すところです。いつ誰に襲われるかわかりませんから、簡素なナイフは持っているべきでしょう。ベルトはジーパンの切れ端を利用しました。色を思いっきり変えたので同じ素材だとはだれも気付かないと思います。他についている余分な生地は刀や必要となりそうな用品を刺して待機できるようにしました。なんだかんだでステフは戦闘に向いている体形なので、そちらに手を伸ばすかはともかく戦闘に適した形にしてあります」


 本当に、すごい。この一言に尽きる。機能面においても十分優れているが、なにより見た目がかっこいい。クールだ。

 よくアニメや漫画でみる女の子たちの中にも、戦闘に特化した服装としてこういったものがあった気がする。すごくいいものを作ってもらった。


「気に入って頂けましたか?」

「や、もうほんとに、なんとお礼を述べたら」

「必要ありません。私がステフにその装備をつけてもらいたいと願ったんですから。逆に、こちらこそ勝手な希望でステフの装備を作り変えちゃって申し訳ありません」

「いやいや、気にしないで。圧倒的にこっちの方がかっこいいですし動きやすそうですから。本当にありがとうございます」


 そう伝えてから俺はいそいそとさっきのパンツの上にこれを穿く。

 サイズも俺に合うよう調節してくれたみたいで、ベルトが無くても体にフィットしていた。

 ついでに恥ずかしかった局部の凹凸も全部隠れてくれたようだ。


 ベルトを巻くと俄然やる気が漲ってくる。やはり、冒険とはこうでなくちゃな。

 旅スキルも大事だが、これを着ると戦闘の方にも着手してみたいと思った。


 全体的に露出の多い装備ではあったが、初めて着る「戦闘用の」服装にやはり俺は胸の高鳴りを意識せざるを得なかった。


 エラメリアは俺の姿に満足し、俺はエラメリアに感謝しつつ彼女の万能さにより一層強い憧れを抱く。

 今回もまたエラメリアに腕を取ってもらった形となってしまったことに少しながら悔しさを感じつつ、絶対彼女に認めてもらえるまで有能になって、陰ながら支えて行こうと決心し直したのだった。



*****



 充分なやる気が残っているうちにと早々に出発支度を終わらせ、二人して荷物を担ぐ。

 体は女の子になったとはいえ、心は完全に男のそれであり今までの感謝も込めて一番重い荷物を担ぐ。

 本人は最後まで遠慮していたが、結局俺に気圧されてしぶしぶ頷いた。


 もちろんこの程度で返せる程の恩ではないことは重々承知している。

 でもこれが今の俺にできる精一杯のお返しだった。

 せいやっと掛け声に合わせて持ち上げる。

 ぐおおおお肩が外れそうだ・・・。


 歯を食いしばって必死の形相で踏ん張る俺を見て、思わずエレメリアから声が掛けられる。


「あのーやっぱり交代しませんか? 私はそれぐらいなら魔力を駆使して簡単に持ち運べるので」

「いえ、これは男の意地なのです。任せてください・・・ぬおおお」

「うーん」


 困った顔で首を傾げるエラメリア。

 彼女にこんな顔をさせてしまったのは申し訳ないが、やはり男には譲れないものも時にはあるのだ。

 ・・・あれ、男? 女?

 まあどっちでもいいや。




 そんなこんなで出鼻から挫かれそうな俺だったが、今回は今までとは違うのだ。

 現世での過ちはもう繰り返さない。

 だらだら怠けて人の世話にばかりになる人生は今日で滅却するのだ。俺はこの日をもってして生まれ変わる。

 見てろよ過去の俺!


 強い信念を胸に、目をらんらんと輝かせながらエラメリアの後をついていく。

 遅延する旅路にまたもエラメリアはため息をつき、それでも俺を応援しながらゆっくり歩幅を合わせてくれた。

 やはり彼女はやさしいな。


 早々からぐでんぐでんになりながらも、こうして記念すべき俺の初めての旅が幕を開けたのだった。エレメリアという頼れる仲間とともに。

 甲高い鳥の鳴き声が開幕の合図のように鳴り響き、空の彼方へと溶けて行った。

 オチ。結局この後数キロほどで完全にダウンしてしまい、荷物と一緒に完全にエラメリアのお守りになってしまった。そのせいで今日の修練は無し。またまた迷惑を掛ける形で初日は過ぎて行ってしまったのだった。本当にごめんな・・・。

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