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第三十六話-忙しい一日②

 一階で既に起きて営業を開始していたバッフムルドさんとペツァニカに挨拶をし、朝ご飯を注文する。

 すぐさまサラダとパンの簡単なセットが運ばれてきた。


 当たり前のようにエラメリアの隣の席に腰を下ろすペツァニカに一瞬驚いたものの、それ以上は特に気にすることなく朝食をとる。

 彼女もちゃっかり自分の分を持ってきていた。


 もしゃもしゃ葉っぱを突っ込みながら、今日の日程についてエラメリアに質問する。


「んで、今日はどういう流れになるの?」


 エラメリアは口に含んでいたものを飲み込むと、指を折り折りスケジュールを挙げていく。


「えーと、そうですね。まずは私たちの、と言ってもほとんどステフのですが、装具を買いそろえようと思います」

「おお、ようやくまともな武器が!」

「折角この街に来たのですから、やはり鍛錬には力を入れたいところです」


 その言葉に、俺はちょっとした引っ掛かりを覚えた。


「ん? ウェンポートには何か戦闘にイワクつきなところでもあるのか?」

「それは・・・まあ、後のお楽しみです」


 一瞬エラメリアの笑顔に影がかかったように思えたが、気のせいだろう。


 エラメリアは続ける。


「そして、そのためにはお金が必要です。なので、初めにギルドへ行ってお金を下ろします」

「ギルド!」


 聞きなれた言葉に過敏に反応する。

 魔物が出てくるならやはりギルドも必須だろう。

 やはり定番所は押さえておきたい所だ。


 というか、ギルドってそんな銀行みたいなこともしてくれんのな。

 便利なものだ。


 だが、ここでふと思い当たることがある。


「あ、でもその金ってエラのなんだよな・・・」

「そうですよ」

「じゃあ、装備はやっぱ今度でいいか。別に急ぎって訳でもないし」


 ここまでしてもらって今更何を遠慮することがある、と言われそうだが、これでだけは断っておこうと思った。

 武器となるとそうやすやすと貰えるものではない。

 そう言ってはみたものの、エラメリアは首を横に振った。


「金銭面の事なら気にしないでください。様々な手当や溜めた分があるので」


 もちろんそういう訳にもいかない。


「流石に悪いよ。それに、やっぱりずっと使っていく武器となると自分で溜めた金で買いたいからな」


 これは本心である。

 高価なものとなると、どうしても遠慮をしてしまう。

 その後本当に欲しい武器が見つかっても、貰ったものを手放せるはずもなく、結果その武器を使い続けることになりかねない。

 こうなるなら始めからもらわなければ良かった、なんて嫌な気持ちにもなりたくないしな。

 それは避けておきたかった。


「そうですか・・・」


 こういわれてしまえばそれ以上は言えないのか、エラメリアはどこか気落ちしたような顔で引き下がった。

 俺のために色々施してくれるのは有難いのだが、こちらにも多少ながらにも遠慮はある。

 断っておかねばならないタイミングも、また同様にあるのだ。


 奇妙な沈黙がその場を包む。

 若干気まずくなりつつあった時だった。


 朝食を平らげたペツァニカが、こいつはバカかと言いたげな顔で俺の目を捉えた。

 そして平気な顔でこう言う。


「だったら借りたらいいじゃん」



「・・・え?」


 きょとんとする俺を尻目に、ペツァニカはエラメリアの方を向く。


「どっちにしろ修行用の武器は必要な訳でしょ?」

「ええ、そうですが・・・」

「ステフも武器はちゃんと自分で選びたいって言ってるし。だったら、エラさんに今だけ借りといて、今度返せばいいんじゃない?」

「! なるほど!」


 エラメリアが期待に満ちた顔でこちらを見る。


 言いたいことはわかった。

 簡単な話なのだが、しかし金額が金額なため少しの間黙考する。


 武器の相場は? 俺とエラメリアの仲はどんなものか?

 金の貸し借り程度でウダウダ言う程細かい性格はしていない。

 それに、エラメリアは俺の事を家族(妹)のようだとも言ってくれた。


 だったらまあ、ちょっとした額なら借りるのも問題無し、かな。

 本人も嫌がってないようだし。


 結論は決まった。

 俺は一度頷いて見せると、


「必ず返すから、少しの間だけお金を貸してください」


 と丁寧に口にした。

 エラメリアは顔をほころばせると、「はい!」と了承してくれる。

 ペツァニカも笑顔でその場を見守ってくれていた。


 こうして武器の問題は解消された。

 どうでもいいけど、なんかこういう時って無意識に敬語になるよな。

毎日投稿はやはりキツイですね。

スマホも万能じゃなかった・・・。

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