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第二十九話-そういや俺♀だったわ

少し急ぎの投稿となってしまいました。

文章、文脈の乱れが結構見受けられるかもしれません。

是非ともご指摘いただけたらと思います。


今晩、もし異常な点があったら随時改稿するつもりです。

多分大丈夫だとは思うんですが・・・(フラグ)

*****



 なにはともあれ話は進んでいく。

 ペツァニカに付いて二階に行くと、左右にいくつかのドアがあるフロアに通された。


「両端の、手前と奥側で四つの部屋が今空いているお部屋です。お好きな部屋をどうぞ!」


 両脇を指さしながら説明してくれる。

 外見ではそこまで大きく見えなかったが、階段の横に一部屋ずつ、対面に四つの部屋が並ぶ広い造りだった。

 漢字で言うと、”凹”みたいな配置だ。


「お金もかかるし、一つの部屋に三人で過ごそっか?」


 一応現実的な面からもそう提案してみる。

 実際エラメリアが金を持っている様子は無かったからな。

 大人二人が入れる広さなら十分なんじゃないの。


 俺のスペース?

 はっ、小学生が必要な領域なんてたかが知れていますんで。


 勝手に不貞腐れている俺をひとまず放置し、エラメリアが顎に手を当てて意見を述べる。


「うーん、そうですねぇ。私としてはやはりゾルフと同じ部屋は危険だと思うんです。なので、二部屋お借りしましょうか」

「なるほど確かに」

「まーオレとしても異論はねぇな」

「そこは異論を挟んで欲しかったぜ・・・」


 自分でも女性と居ることは危険であるとわかっているゾルフは、当然のように頷いてエラメリアに賛同していた。


 正直すぎるその態度に若干の尊敬と呆れを抱きつつ、ペツァニカに左端の二部屋を借りる旨を告げる。


「まいど~! じゃあ、こちらが部屋の鍵になります。ごゆっくり!」


 木材で出来た鍵を渡すと、ペツァニカはたったか階下へと向かう。

 実に素早い決済だった。


「これだけでいいの? お金は?」

「ここは出るときにまとめて支払うんですよ。ご飯代もお風呂も、全部込みです」

「向こうが全部管理してくれてるんだ。でも結構不用心だな・・・」

「そうですね。なので、この宿は信頼のある客や、ツテが無いと宿泊できないシステムなんです」

「そりゃまた斬新な・・・!」


 日本との文化の違いに驚きを隠せない。

 価値観ががらりと変わった気がした。


 エラメリアは一つの鍵をゾルフの方へ放ると、自分たちで借りた部屋の方へと向かっていく。


「お腹もすいてきた頃ですし、荷物を部屋に置いて晩ごはんを食べに行きましょう」

「すっかり忘れてた。思い出したら腹が・・・」

「うふふ、では急がないとですね」


 エラメリアは向かって右側に、ゾルフは左側の部屋に鍵を押し当てる。

 一瞬ドアノブがぽわっと不思議な光を発した後、扉が自動で開いた。

 ここでも魔術が使われているようだ。


 見た目はローテクなのに、内容がカードキーみたいでハイテクだなあ。

 こっちでは普通の事かもしれないが。


 さて、俺も彼らの後に続こう。

 そのまま流れるように、左の部屋へと足を踏み込んだ。




「へー、思いのほか広いじゃん」

「?!」


 中を覗くと、そこは四畳半程の広さの部屋だった。

 窓に寄せられた机の上にろうそくが灯っており、部屋全体が普通に見渡せる。

 簡素な棚とベッドが用意されていて、基本的には一人用の部屋らしい。

 一応二人以上も寝られるように、地面に敷くための藁なんかも置いてあった。


 見た感じベッドはあるけど布団は無いようなので、そこは持参みたいだ。

 藁に関しても、それの上に毛布にくるまって寝るのだろうか。


「俺は藁で寝てみたいから、ゾルフはベッドを使っていいよ」

「え? お、おう」


 なんだ、妙に変なリアクションをするゾルフだな。

 まあいいか。どうせいつもの事だし。


「荷物どこに置くー?」

「あ、えと、机の横で。そう、そこ」

「ほいほい。ついでにゾルフのも置いとくから、パスパス」

「はい・・・」


 手を伸ばして重そうな雑貨を受け取り、何とか机の横に並べることに成功する。

 これ想像以上に重いな。


「さて、じゃあ後の準備は寝る前でいいか。よっし飯行くぞ!」

「う、うっす」


 半開きになっていたドアを開く。

 ゾルフの方が明らかに俺より近かったんだから先に出といてくれよと思いながら廊下に出た。


 瞬間。


「ステフッ!・・・あっ」

「あ、エラ・・・っうおぉ!」


 こちらに突っ込んできたエラメリアと衝突してしまった。

 彼女のぽよんとした胸に顔面から突っ込む。

 反動で思いっきり後ろに吹っ飛んでしまった。


 痛むおでこを摩りながら、どうしたのかとエラメリアの方を見る。

 すると、彼女はなにやら信じられないものを見る様な顔でこちらを見ていた。


「いつつ・・・どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、ステフは一体何を考えているんですか?!」


 胸倉を掴みかからんばかりの勢いで詰め寄ってくるエラメリア。

 俺は質問の意図が分からず、きょとんとした顔で尋ねる。


「え、俺なんか変な事した? ごめん、あんまり常識とかわかってなくて・・・」

「そうじゃなくて!」


 そこで言葉を一旦切ると、ズビシッ!とゾルフの方を指さした。


「この男と同じ部屋に入るってどういうつもりですか?!」


 んん?

 答えが分かってもなお彼女の言っていることが分からない。

 ゾルフと一緒の部屋ってそんなに不味いことか?


 見れば、ゾルフもひっきりなしに頷いている。


「え・・・ダメなとこでもあったか? エラは女性だから、一人の部屋が良いだろうと思ってやったんだけど」

「私の事は気にしないでください。そっちの部屋に行けばステフの身が危ない」


 ははーん。

 わかっちゃった。

 つまりこういうことだ。

 エラメリアは、俺とゾルフが同じ部屋にいると、見かけは女の子である俺がゾルフにヘンな事されるのではないかと心配してくれているのだろう。


 だがその不安は無用だ。

 確かにエラメリアの様に、綺麗な大人の女性なら危ないかもしれない。

 寝ている間にいたずらされることもあろう。

 けど俺は大丈夫だ。なぜなら、


「いやゾルフだって流石に子供には手出ししないって。心配しすぎ」


 そう、性的魅力があからさまに低いからである。


 乳も無い汗臭いガキに誰が興味を持とうか。

 それが許されるのは二次元までである。


 よって、俺がゾルフと同じ空間で生活しても何ら問題は無い。

 証明終了だ。


 だよなゾルフ、と言う意味も込めて当の本人の方へ顔を向ける・・・向けようとしたのだが、エラメリアに両手でガッチリ抑えられてしまった。

 両頬をぎゅっと押しつぶされる。


「目を覚ましてください。あのゾルフですよ? 老若男女見境なく手を出す下種男ですよ?」

「いや男には手をださねえよ」


 散々な言われように、初めてゾルフが反抗の意を表す。

 だが当然のようにスルーされ、話は続いていく。


「そんな男にステフが好き放題されてるなんて・・・考えただけでも体が沸騰しそうです!」


 耐えられない!と悲しそうな表情をするエラメリアに俺も言葉を濁らせる。


「でも・・・エラだって俺と同じ部屋はマズいだろうし・・・・・・」

「なぜですか?!」


 だって俺も男なんだから・・・。とはもちろん言える筈もなく、どう答えるべきか迷った末咄嗟に思いついた言葉が口から飛び出した。


「ってか、俺がちゃんと寝られないからエラよりゾルフと同じ部屋の方がいいんだよ!」


 なんか逆ギレっぽくなってしまったが、実際これは事実である。

 確かにここ数週間に渡ってエラメリアと夜を共にしてきたわけだが、それでも慣れないものは慣れないものなのだ。

 恋愛経験の無い俺が女性と同じ部屋で暮らすなんて絶対無理だ。

 間違いなく理性が瓦解することになるだろう。


 妄想で済ます分には全然大丈夫なのだが、いざ目の前にするとどうしてもヘタレてしまう19歳童貞だった。


 しかし、そんな個人的な事情を知らないエラメリアには大きく誤解されてしまったようだ。

 一瞬面食らったような顔をした後、すぐに泣きそうな顔をする。


「そんな・・・私、ステフに何か嫌われるような事しましたか・・・・・・?」

「ちが、だからその、つまりエラに気を遣わせるのが申し訳なさ過ぎてゾルフなら何してもいいかな的なそんな感じだから」

「そのことなら全く気にしないでください。全然苦労には感じてませんから」

「うーんエラが良くてもこっちが・・・」

「お願いします。私はステフと同じ部屋が良いです。・・・ダメですか?」


 目線を合わせるように腰を折り、軽く首を傾げてそう尋ねる。

 潤んだ瞳でお願いなんかされると、どうしても心拍数が跳ね上がってしまう。

 これ以上断ることが難しくなってしまった。


 どうしようかな、本来ならお宝な話なんだけど・・・。


 それに、大人の泣き顔ほど堪えるものは無い。

 もーヤケだ。

 どうとでもなれ。


「わかったよエラ、じゃあ同じ部――」


 屋にしよう、と続けるつもりだったのだが、突然エラメリアは立ち上がるとゾルフの方へと詰め寄って行った。

 そのまま壁ドンよろしくゾルフを壁面に押し付ける。


 怒り心頭なご様子のまま、エラメリアは声を荒げた。


「さては、あなたがステフに何か吹き込みましたね!」

「えっ、は? オレ?」

「”魅了(チャーム)”ですか? どちらにせよ早く解除しなさい。さもなくばあなたの首が・・・」

「待って待って待って。濡れ衣だから。ホントにオレは何もしてないから!」

「言い訳無用!!」


 エラメリアが杖を取り出しても、混乱でその場を動くことが出来なかった。

 だがそれが禍々しい光を帯び始めたあたりで、ついに覚悟を決めて飛び出した。


「エラストップ! それマジでヤバそうな奴だから!」

「話してください、私はこの男をこの手で・・・」

「それはエラの誤解で、本当はただ俺が恥ずかしかっただけなので! 正直に言うと一緒の部屋が良かったです!」


 一息にそう叫ぶと、みるみるエラメリアの力が弱まっていく。

 同時に杖先の光も力を弱まっていった。


「それは本当ですか?」


 振り返ったその顔はさっきと打って変わって落ち着いたもので、そのあまりのギャップに一瞬言葉に詰まってしまう。


 そしてやっとの思いで頷いた。


「うん、俺からもお願い。エラと一緒の部屋がいいよ」


 そう伝えると、エラメリアはにこぱっ!と凄く嬉しそうな顔でゾルフから手を離した。

 恐怖で顔面蒼白のゾルフがずるずる崩れ落ちるのを無視し、「じゃあさっそく荷物を移動させましょう!」と彼の部屋へ突入していく。


「・・・」


 変貌したエラメリアに、一体何が彼女をそうさせてしまったのやと不安に思いながらその場に立ち尽くす。


「・・・あ。大丈夫か、ゾルフ」


 そして思い出したようにゾルフを介抱した。

 手を貸しつつ彼を立ち上がらせ、とりあえず服に付いたホコリを払ってやる。


「なんか、悪いな。俺のミスで」

「大丈夫だ。気にするな、エラたんは昔から可愛いものに目が無かったから・・・最近は前よりアレだけど」

「可愛いものってなんだよ・・・」


 おい、それって俺の事だよな?

 なんか、一生懸命頑張ってる子供に、親が「かわいい~」とか抜かしてるみたいでイラッとしたぞ。

 動作が可愛いってそれ馬鹿にしてんのか。


 俺の怨念のこもった視線を流し、ゾルフは改めてこちらを見やる。

 忠告のつもりか、重々しく口を開いた。


「あのな、お前も少し女の子としての自覚を持った方がいいぞ?」

「は?」


 なんか見当違いのことを言われた。

 もっとこう、エラメリアの機嫌を損ねないような立ち振る舞いを要求されんのかと思ってたんだけど。


「いや別に女子を意識して動く必要もないし・・・」


 思った事を口にする・・・が、ゾルフが気にしているのはそういうことでは無いようだった。


「エラたんも言ってたけど、中にはステフみたいなガキンチョを好んで食べる変態も居るからな。この街にもそんな輩がいるって噂も立ってたし、言動には気を付けろよ」

「あーいわゆるロリコンってやつか。心配してくれんのはありがたいけど、まさか俺みたいなのに寄ってくるヘンなのはいないから大丈夫だって。ほとんど中身は男みたいなもんだし」

「・・・なんでそんな単語を知ってんのか気になるがひとまず置いとくぜ。それ本気で言ってんのか?」

「? そりゃそうだろ。しかもこんな外見だし」


 現世での俺は酷い外見だった。

 ただ、目に見えて太りだしたのは中学三年生辺りからで、小さい頃は平均よりちょっと大きかったぐらいだ。

 まあでもこのお腹のふにゃふにゃ感は過去の俺に準じている節もあるし、あと三年もすれば脂肪が目立ってくる頃合いだろう。


 その辺りと合わせて考えると、やはり俺の顔も良いとは言い難いに違いない。

 子供だからまだかわいらしく見えるんだろうな。


 ・・・はぁぁ、今まで考えないようにしてきたのに何でこんな時に思い出すかね。


「・・・そうか」

「ああ」

「わかった。んじゃま、せいぜいオレが殺されない程度には行動を自粛しろよ」

「わかってるよ。ゴメンって」


 言うだけ言うと、ゾルフはプイと階段の方へ行ってしまった。

 なんだったんだよまったく・・・。


 そんな会話をしていると、丁度エラメリアもゾルフの部屋から色々引っ張り出してきていた。


「共同で使ってた荷物がほとんどだったので、あんまり私たちの部屋に置いとくべき物も無いんですよね。一応ステフの剣など一式と、簡単な日用品などを持ってきました」

「あ、俺も行けばよかった。エラだけに任せちゃったな」

「いいですいいです。ステフは部屋の鍵を開けててください」


 そう言ってエラメリアは腰をぐいっとこちらに向けてきた。

 見れば、丁度くびれのあたりに鍵が引っかかっている。

 だから、そういう動作は控えて欲しいんだけど・・・。


 心の中でぼやきつつ、仕方なく鍵を受け取った。

 そして若干わくわくしつつ部屋の入口に鍵を押し付ける。


 すると、腕から何かが吸われるような感じがした。

 同時に鍵が解除されたような音を発する。


「おお、開いた!」

「ありがとうございます。すぐに運んできますね」

「わかった」


 言葉通り一瞬で部屋に荷物を置いて出てくる。

 ドアを閉め、しっかり鍵がかかっているのを確認すると、ようやく人心地が着いたような気分になった。


「ふい~、やっと飯にありつける」

「お疲れさまでした。途中あの男のせいで無駄な時間取られてしまいましたからね」

「え。あ、はいそうね」

「それでは下に行きましょうか」

「うん」


 エラメリアさんのせいでもあるんじゃ・・・なんて言葉はおくびにも出さず。


 なにはともあれとにかく今は飯だ。

 さっきからぐうぐう言ってて気分が悪いったらありゃしない。

 諸々の事は、飯を食ってから考えよう。そうしよう。


 べ、別に、面倒ごとを後回しにしたわけじゃないんだからな!


 頭の悪いことをだらだら考えつつ。

 俺は腹をさすりながらエラメリアの後を追った。

 



 階段を下りているとエラメリアから声を掛けられた。


「そういえばこの後の予定ですけど」

「この後って今日? まだ何かすることがあるの?」

「ええ、といっても少ないですよ。簡単な荷物の片付けなど色々ありますからね」

「あー、忘れてた。まあ、それも飯を食ってからだね」

「そうですね。それに――」


 そう言うと一旦言葉を切り、満面の笑みで後ろを振り返る。


 あ、やばい。

 このパターン知ってる。

 エラメリアが嬉しそうな時、特にこんな顔をしているときは、明らかに俺に対して不利益があるようなことだ。


 わかってもその口を封じることもままならず。

 手を伸ばす前に、彼女はここ一番の待ち遠しそうな、少女の様なはずんだ声で言った。


「ご飯の後は、待ちに待ったお風呂に入れますよ! ステフ、あとで背中流しっこしたりしましょうね」


この章なんですが、若干個人的な萌えに走りすぎてしまった感もあります。

ですが、やはりこのようなシチュエーションはドキドキするものでして・・・。

それでもエラメリアやゾルフ(特にエラ)が汚れ役感が強まりすぎている気もします。


出来るだけ控えようとは思いますが、もしかしたら外道丸が一人で突っ走っていっちゃうかもしれません。

その時はなにとぞ暖かい目で見守って頂けたらと思います。


次の投稿は来週土曜日の予定です。

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