第二十八話-ハイテンション・ガイズ
遅くなって申し訳ありません。
・・・って毎回言っている気がする。
そろそろ投稿日の見直しも視野に入れていくべきでしょうか・・・(もこもこ外道丸がちゃんと書けば済む話)
店内は屈強な男たちで溢れていた。
みな大声で騒ぎ、飲み、食べ物を頬張っている。
どのテーブルにも溢れんばかりの酒や肉が並べられている様は、まさにアニメなんかで見た晩餐そのものだった。
ほえぇ、人ってこんなに食えるもんなんだ。
入店するとすぐさまむわっとした熱気が体を撫でた。
「いらっしゃい!」
周囲の喧騒に負けじと大きな声が聞こえてくる。
顔を向ければ、エプロン姿の女の子が笑顔で迎えてくれている所だった。
目がくりっとしていて、ぴょんぴょん跳ねた髪が特徴のかわいらしい少女だ。
エラメリアとは旧知の仲らしく、気軽に話し合っている。
「突然三人でお邪魔しちゃってごめんなさい。お部屋の方は大丈夫でしたか?」
「全然気にしないで! このところお客さんも少なかったからね。それに、エラさんの頼みとあれば男共を叩き出してでも用意するよ!」
元気な声で応じる少女。
その言葉に、客たちは一斉に悲鳴を上げる。
「ペツァニカちゃん、そりゃねえよぉ」
「ここ以外でうまい飯が食える店なんてあるわけねぇ!」
「俺たちだって金払ってんだ! 店の好きにはさせねぇぞ!」
「そうだそうだ!」
そんな悲鳴とも罵声ともつかぬ反応に、少女はスッとエラメリアの隣で膝を付きつつ声を張り上げる。
「この方を誰と心得る! かの偉人、エラメリア=シーストーン様であるぞ!」
その言葉を境に男たちはどよめく。
「アレが有名なエラメリア様か?!」
「この街を救って下さった?!」
「確かに輝いておられる気が・・・」
「おいバカ、アレとか言うな。あのエラメリア様だぞ!」
「ひええ、捻り潰されちまう!」
口々にエラメリアを称賛(?)すると、同じく片膝を付いて苦悶の表情を浮かべる。
「エラメリア様なら仕方がねえ、店を譲ろう・・・」
そんなことを言い出す輩まで出てきた。
どうやら彼一人ではないらしく、コクコクと大げさにうなずいている奴もいる。
その場がエラメリアへ服従の意を示す流れへと変わっていた。
ただただ唖然とした表情で事の行く末を見守るしかない。
またしても俺は場の雰囲気から取り残されているようだった。
なんだコレ。
*****
「なはははは! いやーごめんねー、驚かせちゃって」
一連の流れが終わると、各自席に戻って再び飯を再開する。
特に号令があったわけでもないが、少女が平常通りに戻ると周りも自然と解散していった。
俺たちは一つの机に通され、水を運んできた少女と話している最中である。
「確かにびっくりしたけど、俺は大丈夫です。ってか、エラがこの街を救ったって話の方が気になって・・・」
情けなくも幼い女の子相手に敬語の俺だった。
まあ、なに。先手を取られたからね。
「ああ、あれね。嘘だよ」
当たり前のような口調で言ってのける少女。
うっかり口に含んでた水を噴き出すところでした。
「んぐっ・・・う、嘘ぉ?」
「そうだよ」
「でもお客さんたちは皆・・・」
「あれはただノリがいいだけ。エラさんから聞いてないの? ウチはいつもこんな感じ」
「そうなんですか・・・」
どうも釈然としない俺だった。
正直ついていけねえスわ・・・。
切り替えるように少女はパンと手を叩く。
「ところで、私たち初めましてだね。私はこの店で働いているペツァニカだよ。店長はお父さんなんだ」
「あ、どうも。初めまして、ステフです」
彼女の話からすると、親子でここを経営しているのか。
あと今更だが、ステラフラッシュで最初は名乗っていたので、愛称で自分の名を伝えるのは何とも気恥ずかしい思いだ。
「ステフかー、いい名前だね。あと、私には敬語無しでお願い。多分ステフの方が年上だし」
多分も何も確実に俺の方が年上です。
下手すりゃ二倍ぐらい。
ペツァニカは、見た目が小学生ぐらいの小さな女の子だ。
言動や立ち振る舞いも結構幼い。
人懐っこい性格なためか、かなり話しやすい。
「そっか。じゃあ俺もこれで」
「うーん、女の子なのに俺かぁ・・・」
「?」
何事か呟いている。小さくて聞き取れなかった。
変な事でも言っただろうか。
時折ニヤッとして「これはこれでアリだね」と言っているペツァニカが怖い。
いやマジで俺なんもしてないよね?
場をとりなすように体面に座っていたゾルフが声をかける。
「一応紹介しとくと、オレはゾルフ。絶賛彼女募集中だぜ~」
小学生(多分)相手に最悪な自己紹介だった。
ペツァニカもきょとんとしている。
それでも一応返事をしている辺り、この仕事を始めて結構経つのだろう。
「ゾルさんね、よろしく。・・・ねぇ、ゾルさんはロリコンなの?」
「オレは気に入った女だったら何歳でも食える。ペツァニカたんはかわいいからグッド!」
「へーえ、嬉しいな!」
「ははは、今晩はお嬢ちゃんを指名~」
「お前は口を閉じろ!」
机の下で蹴りを入れる。
しかし、異様にキラキラした顔のゾルフには全く効果が無かったようだ。
どうにかコイツを黙らせないと、いたいけな少女には毒だ・・・。
そこでペツァニカが攻めの発言を投じる。
「あ、じゃあ、ステフは? ゾルさんはステフは食べれるの?」
「えっ」
ゾルフの動きが止まった。
カクカクと不安定な動きで俺の方を見る。
その額にはうっすらと汗が滲んでいた。
「あー、いや、ステフは、どうだろうな」
おいやめろ。
迷うの禁止。マジでキモイから。
逆に何を迷っているのか、ゾルフは声になってない音を発していた。
そして意を決したように口を開く。
「まあぶっちゃけ、オレ的にはおいし――」
何を言わんとしているかすぐに分かった。
殺意を込めた視線でゾルフを睨みつける。
冗談でもそれ以上言ったら殺す・・・。
ゾルフは最後の言葉を発する手前、一瞬チラっと目を動かし、俺の横に座っていた人を伺う。
瞬間、顔面を蒼白にして言い繕った。
「――くは無いな、うん。子供に手を出すのはよくないね!」
エラ、ナイス。
怖くて何をしたのかは聞かないけど、とにかくよくやった。
「そっかー。ゾルさんにも色々あるんだね」
「そういうことだ。お、エラたんが嬢ちゃんに話したいことがあるみたいだぜ」
「えっほんと?! エラさんなあに?」
あからさまな話題転換。
それは功を奏したようで、ペツァニカはガバッとエラメリアの方を向いた。
押し付けられたエラメリアは実際言いたいことがあったらしく、一瞬呆れたようにため息をつくとすぐさま応じる。
「そういえば、私たちは先に部屋を取ろうと思ってたんです。ご飯の前にお願いしても良いですか?」
「おっけーわかった! お父さんに伝えてくる」
エラメリアが宿のお願いをすると、元気に頷いてバタバタと厨房に帰っていった。
ふぅ。
やっと言いたいことが言える。
俺はゾルフの方を睨みつけながら言う。
「・・・ゾルフ。さっきのは何だったんだ?」
「じ、冗談だって。この場の雰囲気的な」
「くれぐれも変な事は言うなよ・・・」
「はい、もうしません」
どうせ無駄な気がするけど、一応釘は刺しといた。
次は知らん。
すぐにペツァニカは戻ってきた。
「お父さんに聞いてきたよ! 好きな部屋使っていいって」
「ありがとうございます」
「じゃあ案内するね!」
そう言って率先して歩き出した。
俺たちも各自荷物を持って後を追う。
と、席を立った途端俺はあることに気付いてしまう。
・・・待て待て。
おい、コレ気のせいじゃないよな?
ふと湧いた不安を解消すべく、のっそりと前に歩をすすめる。
ちょっとずつ彼女との距離が近づいていく。
同時に俺の不安も増していった。
俺の目線がペツァニカと同じだなんて、ありえないよな・・・?
ところがどっこい、気付かれないようにそ~っとペツァニカの背後に寄ると、目算で俺たちの身長はほとんど一緒だった。
「嘘だろ・・・」
思わず声が漏れる。
当の本人は「ん、どうかした?」と軽い調子で聞いてくるも、冷汗交じりに誤魔化すことしかできない。
だが、内心ではかなりショックを受けていた。
いや、そりゃあこの身体になっていくらか縮んだとは思ってたよ?
でも周りは身長高すぎるし、そんなこと意識してる暇もなかったからな。
気付かなかったのは仕方がない。
としても、これは流石に不味いんじゃないの?
だって、相手は小学生だぜ。
普通にガキンチョじゃねえか!
俺は今の自分の容姿をとやかく気にしたことは無かった。
精々女子高校生ぐらいだと思っていたのだ。
だからガキ扱いされるのも当然だし、お嬢ちゃんと言われることにもなんとなく享受していた面もある。
けれども、こと小学生身長となると心象は大きく変わってくる。
積み上げてきたものが一気に瓦解した思いだ。
現世では憧れていたシチュエーションでも、いざなってみると”男子”というステータスが砕け散っていく気がする。
心にポッカリ穴が開いてしまった。
元男子高校生が小学生少女にって、それなんてエロゲーですか?(自粛)
夢なら覚めてくれ。
この時はじめて俺はこの世界を呪った。
本日中にもう一話投稿します!と言った日は必ず投稿できないという”もこもこジンクス”がありますが、あえて言わせてください。
本日中にもう一話投稿します。
枠組みは出来てるんです・・・キリが悪いのと、今は流石にこれ以上書けないと思ったので(現在三時)遅れて投稿するつもりです。
バタバタしててすいません・・・。