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第二十六話-お初お目にかかります、獣族

1日投稿遅れで失礼します。

なんの報告も無しに遅延させてしまい、誠に申し訳ありませんでした。


パソコンが今使えない状況だったため、スマホからの投稿となります。

誤字脱字違和感などございましたら、遠慮なさらずお教え下さいませ。


こんな中途半端な時間であることも、重ねてお詫び申し上げます…ごめんなさい。

 運転手を担当してくれたのは、キャインさんという獣族だった。


 この街に来て初めて獣族に出会ったのだが、外見は俺達とほとんど変わらない。

 ただ、ところどころ獣の特徴が表れていて、キャインさんの場合は犬耳の様なものが頭から垂れ下がっていた。

 後部座席からでもその二つの耳を視認するはことができ、街の物音に反応して時折ピクッと跳ねている。

 前にエラメリアが言っていた”獣族は魔術が使えない代わりに五感や身体能力に特化している”という話で考えると、彼の場合は聴覚が優れているのだろう。


 俺がほぇ~っと物珍しそうに眺めていると、視線に気が付いたエラメリアが声をかけてきた。


「そういえば、ステフは獣族を見るのは初めてでしたよね」

「うん。もっと獣っぽいのかなって思ってたけど、全然そんなことは無いんだな」

「ええ。例えばキャインさんは、『ドグル族』という特に我々に近い生態を持った種族ですね。嗅覚、聴覚が他より優れていると聞きます」

「へぇ」


 俺たちの会話が聞こえていたらしいキャインさんも、運転の片手間に会話に入ってくる。


「そこの君は獣族を見たことが無いのかい?」

「えっと・・・はい」

「この子は街に来るのも初めてで、私たち以外の人と触れ合う機会が無かったんです」

「へぇー珍しいね。じゃあここが始まりの地って訳だ。存分に満喫していってくれな!」

「あ、ありがとうございます。・・・エラ、”始まりの地”ってのは」

「冒険者を目指す子供が最初に立っていた地を、そのように呼ぶんです」

「なるほど。ウェンポートが俺の故郷みたいになるのかな・・・」

「そ、そういう捉え方もできます。ただ、あくまでギルドに所属した区切りなどをそう呼んでいるだけで、故郷自体はあまり関係ないというか・・・ステフにはもっと似合う故郷があると思います。もしかしたら私の・・・・・・」


 何か言いたげにこちらをチラチラ見ているエラメリア。

 なんだろう、何か言いたいことがありそうだ。


「・・・エラたん、あざといぞ」

「うるさい。元はといえばあなたが名前を出したから。本来なら目的地は・・・」


 ゾルフの苦笑い交じりのからかいが飛んでくるも、いつものような反論にあまり覇気が感じられない。

 キャインさんも何かを察したらしくニヤついている。

 なあ、いつも言ってるけど俺を放置して話進めるのやめてくれませんかねえ?


 そんな思いを込めたジト目もさらっと流され(おい)、エラメリアは続ける。


「まあとにかく、早急に決めるべきものでもないのですから、この街で伸び伸び腕を上げていきましょう」

「はぁ、わかったよ」


 終わってしまった。なんだよ一体・・・。




 そんな話をしていると、車はちょうど街頭へと入っているところだった。

 街並みもがらりと変わり、床を埋め尽くすタイルや立ち並ぶ民家の壁は、淡い暖色系の優しい色合いへと変わっている。

 そこに住む人々も、さっきまで様々な装備や服に身を包んでいたものが、どれも似通ったゆったりとした服へと統一されていく。

 賑やかさはあまり変わっていないものの、より生活感のある風景にどことも知れない懐かしい気持ちが湧きあがってきた。


 時々キャインさんが街の有名どころを説明してくれる。

 それを聞きながら、穏やかな気持ちで街を眺めていた。

 そんな時、ふと一人の街娘と目が合う。


 大根のような野菜を(かご)一杯に抱えた女の子は、焦げ茶色の髪をお下げにした可愛らしい子供だった。

 俺に気が付くとにっこり笑って小さく手を振ってくれる。

 その仕草にドキリとしつつ、こちらも手を振り返す。

 それを確認すると、女の子は小さく頷いて前を歩いていたお父さんらしき人の下へ駆け寄って行った。


 優しそうな女の子だったな。また会う機会があればお話ししてみたい。

 ちょっとした街の人との繋がりにほんわかしつつ、ふと何気なく辺りを見回す。

 と、ここでようやく気が付いたのだが俺たちの車は結構目立っているみたいだった。

 あちこちから奇異の視線が飛んでくる。


 そのことが妙に不安に感じられ、思わずエラメリアに声を掛けた。


「ねえ、エラ」

「どうしました?」

「なんかめっちゃ見られてるんだけど」

「ん? おや、本当ですね。この辺りは日常的に運び屋も行き来してるし、珍しい点など無いはずなのですが」


 困惑顔の俺たちに、キャインさんがサラッと答える。


「ああ、それは皆さんの中に子供がいるからでしょう」

「えっ俺?」

「はい、最近隣町で”銀の狼”を見た者がいると噂がたってまして」


 ”銀の狼”というワードが出た途端、ゾルフとエラメリアにピリッとした空気が流れる。

 気が付いたのは俺だけのようで、キャインさんは平気な顔で話を進めていく。


「そのせいでウェンポートには観光客や旅行者が激減したんです。だからやってくるのは剛腕冒険者や名の知れた国の討伐隊ばかり。そこのお二人は大丈夫なのですが、君はまだ子供なのでこの時期にやってくるのは珍しいんでしょう」


 ふと聞き覚えのある単語に反応する。


「ふぅん・・・銀の狼ってそんなヤバい奴なんですか?」


 そう問うと、キャインさんは目玉を飛び出さん勢いで驚いていた。


「銀の狼をしらないのかい?! 世界トップレベルの脅威だよ」

「すんません、ほんとに何も知らなくて・・・」


 申し訳なさそうに言うと、一転して穏やかな口ぶりで声を発してくれる。


「そうか。じゃあ今知っておくべきだね。奴は、もっとも恐れられている魔物の一体さ」

「もっとも」

「ああ。奴が通った後には死骸すら残らないと言われている。成長するために、生き物ならなんでも食らい、討伐しようにも魔術耐性、物理耐性共にとても高く、並みの冒険者なら戦いにすらならない。一方的に我々を蹂躙する、知性ある破壊兵器さ」

「え、ええ・・・」

「だが普通、奴らは数年に一度出現するかしないかで、まして大陸の南側なんかにはいないはずなのさ。魔物は魔力を食って生き延びる。君たち人族は魔力が外に溶けやすいから、食っても腹が満たされにくいんだ。だから必然的に、獣族や魔物が蠢く北の方で生息するんだよ」

「じゃあこの辺りにいるのは・・・」

「たまたま人里で産まれてしまったか、それとも考えたくないけど、何者かの手引きがあるのかもしれないね」

「ッ・・・!」


 ザワリと立ちこめる殺気。

 先ほどよりもより明確になった気配に思わず息をのむ。

 見れば、エラメリアからも妙な威圧感が漏れ出していた。

 二人の反応が的確に俺の不安を煽ってくる。

 その銀の狼ってそんなにヤバい奴なんでしょうか・・・見つけても絶対近寄らないようにしよ。


 ヒヤリと背中に一筋の汗が伝うも、やはりキャインさんはどこ吹く風で手綱を揺らしている。

 いや危機管理能力低すぎだろこの人。



 俺は話題を変えるべく、この街の事について話を振ってみた。


「話は変わりますけど、ウェンポートに住んでる人ってみんな優しいですよね」

「そうかい?」

「目が合うと必ず手を振ってくれるんです。いつもこんな感じなんですか?」


 実際先ほどから老若男女関係なく笑顔で手を振ってくれている。

 多少物珍しそうな目ではあるものの、やはりその奥には温かい感情が滲み出ていた。


「うーん、そうだな。僕は昔からここで働いてるからあんまり意識したことが無いんだけど、言われてみれば皆気さくな性格ではあるね。でもどこも同じようなもんだと思うよ」


 そうキャインさんは答えた。


 この街が最初に感じた通りの雰囲気なら、”始まりの地”にしてはかなり良い場所である。

 ゾルフの提案に乗っててよかった。



 街の人達と挨拶を交わしながら、ゆったりと車は走っていく。

 キャインさんが前方を指さしながら、「あそこまで行こう」と力強く鞭を振るった。


「結構早かったね」

「さっきまで居たのはウェンポートのほんの入り口です。実際はもっと広いんですよ」

「そうなんだ。宿までは歩いてどのくらいかかりそう?」

「かなり近くまで運んでくれましたからね・・・普通に歩いたら十分ぐらいでしょうか」

「おお。じゃあ色々見て回れそうだね」

「ええ」


 宿までの経路を目算していると、予定していた場所に到着した。

 ガラガラガラ・・・と静かに停止する。


「つきましたよー」


 能天気なキャインさんの声が聞こえてきた。


 車は道の端に寄せられるように止められており、周りにはたくさんの店が密集している事がわかる。

 露店や歩き販売なども出回っていて、チラ見しただけでも結構な数の品物が取引されていた。

 実用的な物も増え、用途が分かりやすい道具もちらほら見受けられる。


 キャインさんに二、三件おすすめの店を教えてもらい、俺達三人は車の横からポンポン飛び降りる。

 その後ちゃんと礼を言ってから彼と別れた。

 挨拶代わりに鞭を鳴らして帰って行くキャインさんを見送り、早速近くの面白そうな店を探して回る。


「さて、ではどこから見て行きましょうか」


 エラメリアが問うてくる。

 特に思いつかないなら、端っこの店から見て回ろうかという話だろう。

 どこぞかへとゆっくり歩き始めているところだった。

 だが生憎、俺はとっくに決めているんだな。


「へへ、実はずっと前から行ってみたい場所があったんだ」

「ほほう、どこなんです?」


 足を止めたエラメリアが興味津々と言った顔で詰め寄ってくる。

 ゾルフがその肩を抑えていた。


 なんかエラメリアが近いけどまあいい。

 待ってましたとばかりに俺は鼻を擦って答える。


「そりゃやっぱり男と言ったら武器でしょ!」

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