部長さんの日常
部長が私より乙女な件についてのプロトタイプです。
部長が乙女じゃなかったり、「私」のネジがぶっ飛んでたりと大分違いますが…。
ええ、設定大分違うので別物として読んでください
俺はどこにでも居るような会社員である。
好き勝手生きてきて、俺はもうすぐ43になる。
髪がハゲなくて良かったと思う。
これからハゲる様子も無い。
フサフサだ。
口元には無精髭が生えていて、見た目も普通にオヤジである。
「あ~…、ったりぃなオイ」
仕事を処理しながら呟く。
周りにはせっせと仕事をこなす部下達。
若いって羨ましい。
一人の部下が俺のデスクの上に書類を追加する。
なんだ、まだ増えるのか。
最早デスクワークではない。
DEATHワークだ。
死神さんが嗤いながら花畑で追いかけてくる。
色々と嫌になって頭を抱えた。
帰りたい…。
「大丈夫ッスか、部長?」
新人社員の青年が俺に話し掛ける。
俺は苦く笑って首を縦に振った。
新人に心配されてどうする。
「無理しないでくださいよ?」
「んっ…心配かけて悪かったな高梨くん」
「″高橋″です。ちゃんと覚えてくださいよ~…」
あぁ、しまった。
また間違えた。
仕方ねーじゃねぇか、部下が多いんだからよ。
「あっ、部長!!」
高橋君が俺を元気よく呼ぶ。
笑顔が眩しいな。
高橋君は俺に何かを渡した。
「んだ、こりゃあ?」
「ゲームのソフトです!!」
そういえば高橋君はゲーマーだったか。
俺は受け取ったゲームを眺める。
結構面白そうだ。
「なんだ?貸してくれるのか?」
「はい!!」
高橋君が強く頷く。
元気が良くて宜しい。
「何やってるの部長ちゃん?」
天敵である奴の声が聞こえて固まる。
来やがったかちくしょーめ。
「望月…ちゃんと敬語を使えと何度言ったら分かるんだ!!」
俺は望月の頭を軽く叩いた。
軽くでも十分痛い筈だ。
望月は小さな呻き声をあげた。
「部長ちゃん酷いわ!!あの日の事は嘘だったのね!!」
「部長…貴方まさかっ!?」
「何もしてねぇよ馬鹿共。誰が望月なんかに手ぇ出すか」
俺はそんなに女に飢えてねぇよ。
いや、たとえ飢えてたとしても望月だけは抱きたくない。
「ところで、なんのゲーム?」
望月が俺の持っているゲームを指差す。
俺は自分で持ったまま望月にパッケージを見せた。
「あ、バイ●じゃん。」
「知ってんのか?」
「有名だよ?」
望月は機嫌良さそうに笑った。
あっ…くるな。
「怖がりながらバイ●やる部長ちゃんとかマジ萌!!目尻に涙とか溜めて高橋君に操作方法ならうとか…キャーッ!!高橋君×部長ちゃん!?いいっ!!」
「黙れ変態」
「最高の誉め言葉だわ!!」
望月のスイッチが完全に入っちまったようだ。
高橋君は目を点にしている。
「部長…望月先輩が何を言ってるのか全く分かりません」
「安心しろ高橋君、俺もだ」
既にお分かりの方もいらっしゃると思うが望月は腐女子である。
スイッチが入ると手がつけられない。
「部長ちゃん×高橋君も美味しいけど下剋上ってのもいいね。おっさん受けとか…なにそれ素敵すぐる。部長ちゃんは受けでも攻めでもいけそうだよね」
「何を言っているのかさっぱり分からんが、よからぬ事を考えているのは確かだな」
俺は深く溜め息を吐き、ゲームを鞄の中にしまい込み椅子に掛けていたコートを肩に掛けた。
煙草をポケットから取り出し、口に銜え火を点ける。
「先に帰るぞ。しっかり仕事しろよおめぇ等」
ひらひらと手を振り社員達に背を向けた。
扉に手をかけてドアノブをひねった。
「お疲れ様です部長」
「お疲れ部長ちゃん」
「おー…」
怠そうに返事をして扉を押した。
日はもう落ちていた。
これが俺の日常である。