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評価ゼロの俺を切った会社を、潰れる前に俺が買うことにした 最下位営業の反撃――粉飾決算と裏切りに支配された会社の終わり  作者: かーすけ


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第23話 「静かな崩壊」

 朝。

 空は晴れていた。

 昨日の雨が嘘のように、澄んでいる。

 だが——空気は、重かった。


 オフィス。

 普段と変わらない朝の風景。

 だが、違う。

 誰もが、何かを知っている。

 そして——誰も口にしない。


「……例の件、どうなった?」

 小さな声。

「まだだ。でも……」

 言葉を濁す。

 視線が、周囲を気にする。

 異様な静けさ。

 その中心にあるのは——

 佐伯の案件。


 会議室。

 扉が閉まる。

 中にいるのは、数名の管理職。

 その中央に——佐伯。

 そして、上司。

「状況は」

 短い問い。

 無駄がない。

 佐伯は、資料を開く。

「進行中です」

 淡々と。

「先方は、乗ってきています」

 事実。

 だが——それだけでは足りない。

「確定は?」

 問われる。

 核心。

 佐伯は、ほんの一瞬だけ間を置く。

 そして。

「あと二日」

 期限を切る。

 空気が、わずかに揺れる。

 ギリギリ。

 だが——まだ、間に合うライン。


「リスクは」

 別の声。

 佐伯は、視線を上げる。

「あります」

 隠さない。

「ただ」

 一拍。

「取れます」

 断言。

 その一言に、すべてを乗せる。

 沈黙。

 長い。

 やがて。

 上司が、静かに言う。

「分かった」

 一拍。

「続けろ」

 許可。

 だが、それは——

 同時に、最後の猶予。

「失敗したら」

 言葉は続かない。

 だが——意味は明確。


 佐伯は、頷く。

「問題ありません」

 その言葉に、迷いはない。

 だが。

 その裏で——確実に、何かが削れていく。


 同時刻。

 別のフロア。

 蓮は、デスクに座っている。

 目の前には、佐伯の案件に関する資料。

 そして——もう一つ。

 別の資料。

 自分の組織の、内部リスト。

 並べる。

 比較する。

 静かに。

 (似てる)

 いや。

 同じだ。

 構造が。

 動きが。

 意図が。

 違うのは——やり方の表面だけ。

 片方は、ルールを守る。

 もう片方は、破る。

 だが。

 やっていることは——変わらない。


「……綺麗なだけか」

 小さく呟く。

 自分たちのやり方。

 正しいと思っていたもの。

 だが。

 それは——

 ただ整理されているだけ。

 切ることも。

 奪うことも。

 変わらない。

 そのとき。

「考え込んでるね」

 声。

 振り向く。

 麻衣。

 いつもの調子。

 だが——見ている。

 全部。

「ええ」

 蓮は、短く答える。

 隠さない。

 隠しても、意味がない。

 麻衣は、デスクに軽く寄りかかる。

「で?」

 一拍。

「何に気づいた?」

 試す。

 蓮は、資料に視線を落としたまま言う。

「違いがないですね」

 率直に。

「やり方が違うだけで」

 一拍。

「やってることは同じです」

 麻衣は、少しだけ笑う。

 満足そうに。

「やっと来たね」

 その言葉。

 軽い。

 だが——重い。


「じゃあ」

 一歩、近づく。

「どうする?」

 同じ問い。

 だが——

 意味が変わっている。

 蓮は、少しだけ考える。

 そして。

 答える。

「続けます」

 前と同じ言葉。

 だが——意味は違う。

 理解した上での選択。

 麻衣は、頷く。

「いいよ」

 そして。

 小さく言う。

「その方が、壊れない」

 その一言。

 引っかかる。

「壊れる?」

 蓮が聞く。

 麻衣は、少しだけ視線を逸らす。

 そして。

「そのうち分かる」

 答えない。

 だが——

 確実に、何かを知っている。


 夜。

 街の灯り。

 その中で——一つのビル。

 その一室。

 佐伯は、一人で座っていた。

 机の上には、書類とスマートフォン。

 そして——空になったコーヒーカップ。

 何時間、ここにいるか分からない。

 だが。

 動かない。

 ただ、待っている。

 画面。

 メール。

 更新。

 何度も。

 何度も。

 (来い)

 心の中で、繰り返す。

 焦りはない。

 だが——

 時間は、確実に削られていく。

 残り、二日。

 そのとき。

 スマートフォンが、震える。

 画面を見る。

 ——着信。

 相手は、あの顧客。

 佐伯は、ゆっくりと息を吐く。

 そして。

 通話に出る。


「……はい」

 静かに。

 数秒の沈黙。

 そして——

「条件、飲む」

 その一言。

 来た。

 だが——

 まだ終わりではない。

「ただし」

 続く。

 佐伯の目が、細くなる。

「追加がある」

 予想通り。

 ここが、本当の勝負。

「何ですか」

 短く聞く。

 返ってきた言葉は——

 想定の外だった。

「責任者、変えろ」

 一瞬。

 時間が止まる。

「……どういう意味ですか」

 低く聞く。

 だが——

 もう分かっている。

「お前じゃないやつにしろ」

 はっきりと。

 拒絶。

 条件付き承認。

 契約はする。

 だが——お前は外せ。

 空気が、凍る。

 佐伯は、何も言わない。

 数秒。

 長い。

 その中で——すべてが、回る。

 ここまで来て。

 取れる。

 だが。

 自分は——消される。

 (ふざけるな)

 感情が、わずかに揺れる。

 だが——表には出さない。


「理由は」

 聞く。

 相手は、あっさり言う。

「信用できない」

 短く。

 そして。

「やり方が、危ない」

 当然の評価。

 正しい。

 だが——

 受け入れられるかは、別。


 沈黙。

 長い。

 そして。

 相手が言う。

「決めろ」

 一拍。

「飲むか、切るか」

 二択。

 残酷なほどにシンプル。

 佐伯は、目を閉じる。

 数秒。

 そして——

 ゆっくりと、開ける。

 その目には。

 もう、迷いはない。


 同時刻。

 蓮のデスク。

 スマートフォンが震える。

 画面を見る。

 見慣れない番号。

 だが——直感が告げる。

 (来たな)

 通話に出る。

「神谷です」

 名乗る。

 そして。

 聞こえてきた声。

 低く。

 静かで。

 だが——確実に、揺れている。

「……選ばせろ」

 佐伯。

 その一言。

 意味は、明確。

 ゲームは——最終局面に入った。

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