第14話 「残された駒」
薄暗い部屋。
どこか分からない。
目を開ける。
佐伯は、ゆっくりと体を起こした。
「……ここ」
記憶が、曖昧だ。
連れていかれて——
その後。
「起きたか」
声。
顔を上げる。
そこにいたのは——
見知らぬ男。
スーツ。
無表情。
「……誰だよ」
警戒する。
だが、男は気にしない。
「お前、選ばれた」
唐突に言う。
「は?」
意味が分からない。
男は、タブレットを見せる。
そこには——
選別リスト。
見覚えのある画面。
「A」
自分の名前。
確保対象。
「……なんで」
思わず出る。
男は、淡々と言う。
「使えるからだ」
それだけ。
「裏切ったやつを?」
笑う。
乾いた笑い。
だが——
男は否定しない。
「だから使える」
同じ理屈。
冷たい。
だが、合理的。
沈黙。
佐伯は、視線を落とす。
そして。
小さく、呟く。
「……あいつか」
神谷。
最後の瞬間。
自分を切らなかった男。
その意味。
ようやく理解する。
「条件は一つ」
男が言う。
顔を上げる。
「従え」
短い言葉。
だが、重い。
「拒否したら?」
聞く。
男は、少しだけ考え。
「価値がなくなる」
それだけ。
つまり——
終わり。
佐伯は、数秒黙る。
そして。
小さく、笑った。
「……上等だ」
覚悟は、もうできている。
「やってやるよ」
顔を上げる。
その目は——
もう、迷っていない。




