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評価ゼロの俺を切った会社を、潰れる前に俺が買うことにした 最下位営業の反撃――粉飾決算と裏切りに支配された会社の終わり  作者: かーすけ


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プロローグ 「暴落の朝」

すべては“取引”だった

 そのニュースは、あまりにも唐突だった。


 『——株式会社アークス、資金繰り悪化により経営破綻の可能性』


 朝の通勤電車。

 誰かのスマートフォンから流れた音声に、車内の空気がざわついた。

「え、マジかよ……」

「昨日まで普通じゃなかった?」

 ざわめきはすぐに広がり、いくつもの画面に同じニュースが映し出される。


 株価は、すでに急落していた。

 画面に表示される赤い数字。

 ——ストップ安。

「終わったな……」

 誰かが呟く。

 その会社の名前を、蓮はただ無言で見つめていた。

 株式会社アークス。

 自分が勤めている会社の名前だった。


 オフィスに着いたとき、すでに空気は異様だった。

 電話が鳴り止まない。

 社員たちは落ち着かない様子で行き交い、誰もがスマートフォンを手にしている。

「どうなってるんだ?」

「知らないのか、資金ショート寸前らしいぞ」

 断片的な言葉が飛び交う。

 だが、そのどれもが確信を持っていない。

 ——いや。

 一部の人間を除いては。


「蓮」

 低い声が、背後からかかった。

 振り返ると、そこにいたのは営業部長の鷲尾大輔だった。

 いつもと同じスーツ。

 だが、その表情にはわずかな焦りが滲んでいる。

「お前、何か知ってるな?」

 その問いに、蓮は一瞬だけ目を細めた。

 そして、ゆっくりと答える。

「……いいえ」

 嘘だった。


 会議室の扉が閉まる。

 中には、限られた人間だけが集められていた。

 役員、部長クラス——そして。

 場違いな一人。

 蓮。


「状況は分かっているな」

 静かに口を開いたのは、役員の御堂和也だった。

 穏やかな声。

 だが、その場の空気を一瞬で支配する。

「資金は、もってあと数日だ」

 誰も言葉を発さない。

 重苦しい沈黙。

 その中で、御堂の視線がゆっくりと動く。

 そして。

 ぴたりと、蓮の上で止まった。


「——すべて、君の仕業だそうだな」

 その一言で、空気が凍りついた。

 数人が一斉に蓮を見る。

 疑い。困惑。恐怖。

 様々な感情が入り混じった視線。

 だが、蓮は動かなかった。


 数秒の沈黙。

 やがて、彼は小さく息を吐いた。

 そして。

 わずかに口元を歪める。

「……違いますよ」

 静かな声。

 だが、その奥にあるものは明らかだった。


「“仕業”じゃない」

 一歩、前に出る。

 その視線は、まっすぐに御堂を捉えていた。

「——これは、取引です」


 誰かが息を呑む。

 その言葉の意味を理解した者はいない。

 ただ一人を除いて。

 御堂和也だけが、わずかに目を細めた。

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