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第一章 隔離、3
僕の視界にあるのは鬱蒼とした森だけだ。戦いに備えて身構えた僕は、念のために片手に小さな火玉を作った。
わずかな数秒しか経っていないが、胸の鼓動がやけに大きくなり、まるで何時間もそこに立ち尽くしていた気がした。
気のせいかと思った途端、木々の向こうに黒いモヤがゆっくりと立ちのぼり始めた。それは、まるで柔らかな手で触れるような仕草で、木々の間をすり抜けながら近づいてくる。黒いモヤは、じわりと形を変え、僕を包むように周囲へ広がっていた。僕は焦げた茂みのほうへ身を引いた。
このモヤ……原因は何だ?魔法か?いやーー違う。僕以外の魔法を感じていない。それに、魔法じゃなくて、歪んている何かを感じている。
焦げ跡の茂みに入った瞬間、遠くからかすかな声がした。
「……最低……最悪……死ねばいい……」
その声は次第に大きくなり、強まるほど一つの声ではなくなっていく。複数の声が、濁った水の中で混ざり合うように、重なり、うねり、同時に囁いた。
「……悪魔……奪われた……死刑……」




