プロローグ
病院のベッドの上で、一人の老人が静かに人生の幕を閉じようとしていた。
彼の名は進之助。長い人生を生き抜き、今まさに天寿を全うしようとしている。
彼は最後にもう一度、孫の顔を見ようとした。しかし、瞼は重く、もはや開くことができない。
次第に意識が薄れ、深い眠りへと落ちていく。そして、静かに息を引き取った。
しかし——。
ふと瞼を開けると、そこには泣き崩れる孫の姿があった。
進之助は戸惑いながら孫に声をかけようとした。しかし、どれだけ叫んでも、孫には届かない。
やがて、進之助の体は意思とは関係なく、ゆっくりと宙へと昇っていった。
「お迎えが来たのか……?」
そう呟いた瞬間、眩い光が視界を包んだ。気づけば、進之助は見知らぬ場所に立っていた。
「どこじゃここは……?」
周囲を見回していると、天から美しい光が降り注ぎ、その中から女神が舞い降りてきた。
「あなたが進之助さんですね?」
女神は微笑みながら、そう問いかけた。
進之助は、驚きながらも「そうじゃが……」と答えた。
「あなたの魂は、私のもとに選ばれました」
女神の言葉に、進之助は再び驚く。そして、疑問が浮かぶ。
「選ばれた……? じゃが、魂はまず天国や地獄に行くものではないのか?」
すると、女神は微笑みながら答えた。
「地獄については分かりませんが、天国……といえば、そうとも言えますね」
進之助はますます困惑する。
「それで、わしは何に選ばれたんじゃ?」
すると、女神は優雅に微笑みながら告げた。
「犬に好かれる才能です」
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