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地獄で会おうぜ

作者: 小娘

トンケバブが一人で喋っています。

おっ、あんたが案内人か?俺、トンケバブ。肩書は、夢見る冒険者ってとこだ。またか、って顔だな。俺みたいな奴はその辺にごろごろいるもんな。けど、この洞窟の最深部を攻略しさえすれば、世界の王になれちゃうんだぜ?夢を見ないほうが難しいだろ。


それにしてもあんた、何だってそんな姿になっちまったんだ?最深部を目指してたわけじゃないんだろ?


そうか。確かに、珍しい鉱石が多いとは聞いたことがあるけど。儲かったのか?…おっと、悪かった。こうやって根掘り葉掘り聞かれるのはうんざりだよな。じゃ、無駄話もそこそこにして、早速出発しようぜ!


にしても、大勢の人間が出入りしてる割には、暗すぎやしないか?


へえ。異形って、明るすぎると暴れるんだな。ちょっと待てよ。なら、この辺にもあいつらが出るってことか?ひゃ~、おっそろしいねえ。ま、地獄を攻略するためには、異形との対面も避けられないってか。



もうすぐ上層基地か。早いもんだな。何事もなかったし。聞いた話じゃ、ここから中層基地までが遠いんだってな?


ふーん、そういうものか。俺は慣れるほど往復する予定なんかないけどな。


…っ!?おい、下がれ!


くそ、急に飛び出してきやがって。あんた、怪我はないか?なさそうだな。にしても、何だよこいつ?自分の頭を自分で抱えてやがるぜ。気味悪い。ま、もう死んだから良いか。行こうぜ。


どうした?怖くて足が動かないってか?何なら、負ぶって行ってやっても良いぜ。


冗談、冗談だよ。そんな顔するなよな。ほら、行くぞ。また異形が出たら、俺が守ってやるからさ。



うわ、凄い活気だな!あの悪名高い地獄の中とは思えないぜ。宿まであるのか。せっかくだし、部屋、取りに行くかな。


え?なら、あんたどこで寝るんだよ?


どっかって…ま、あんたが気になるなら仕方ないか。じゃ、一晩休んだら出発な。ここじゃ、いつが朝かもわかんないけどな。


…なあ、やっぱり俺、基地を見て回ろうと思うんだけど。ちょっと付き合ってくれないか?これも案内人の仕事のうちだろ?


そうこなくちゃな!で、ここには何か面白いもんとかないのか?


ないの?そりゃ残念。ま、とりあえずぐるっと一周はするからな。ほら、俺を楽しませなきゃ。仕事の評価、下がるぜ?


……


結構、店とかやってるんだな。こんなところで繁盛するとは思えないけど。美味いもの食ってる時間があったら、俺はとっとと下を目指したいけどな。…ん?あれ、何の店だ?


ほら、あの大量に瓶並べてる店。


え、異形対策?そんな薬があるなんて初耳だぜ。でも、使えそうだし買って行くか。


萎えることを言ってくれるな、あんた。じゃ、あれはお守りみたいなもんってことか?


また曖昧な…さてはあんた、使ったことないから知らないんだろ?やっぱ、買ってみるしかないな。行こうぜ。


何だよ、ちょっと買いに行くくらい面倒くさがらなくても良いのに。それとも、あれか?あんた、あの店に近づいたら祓われちまうとか?


冗談が過ぎたか?悪かったよ。じゃ、すぐ戻るから。


……


おい、さっきの異形の死体、どこにあるか覚えてるか?


いや、あの店のおっさんが、高く買い取ってくれるって言うからさ。


良いだろ、俺が誰と何を取引したって。あの薬、ちょっと高いんだよ。で、俺が買うの躊躇ってたら、異形の死体と交換でも良いって、おっさんが。まあ良いから、案内してくれよ。覚えてるんだろ、それが仕事なんだから。



くそ、あのじじい、せっかく持ってきてやったのに散々疑ってきやがって。俺があんな薬のために普通の人間殺してくるかっての。


薬?ああ、もらえはした。でさ、何で死体が必要なのか聞いたら、この薬って異形の血からできてるんだってさ。何か、使う気失せるよな。


え、知ってたのか?言えよ、そういうことは。そういや、あのおっさん、あんたのこと気に入ったみたいだったぜ。異形じゃないのを残念がってたくらいにはな。


そんな怖い顔しないでも。おっさんなりの冗談だって。にしてもあんた、結構目立つよな。勘違いされて襲われたりしたこととかないのか?


へえ、意外と?まあ、あんたは良い奴だしな。


じゃ、軽く休んだら出発な。すぐわかるところにいてくれよ。



軽く休んだら、とは言ったが、思いっきり寝ちまった気がするぜ。日の目を見れないんじゃ、時間感覚も狂うってな。あんたはそうでもなさそうだけどよ。


え?はは、踏んだくったりなんかしないって。あんたが案内を終えたら、相当の金を払う。そういう約束だもんな。心配なら、先に半分くらい払っても良いぜ。あんまり懐はあったまってないんだが。


いらないのかよ。最初から言うなっての。ま、良いんだ。行こうぜ。



よう。よく休めたか?


ああ、俺はぐっすりだったぜ。基地の外でも案外安全なんだな。最初、あんたがここで休むと言い出したときは、気が狂ったのかと思ったけどさ。


おっ…見ろよ、あれ、異形だぜ。ちょっくら一狩りしてくる。


何でって、もうすぐ中層基地だろ?前の店みたいにさ、異形を引き取ってくれるとこがあるかもしれないぜ?そしたら、今度は商品じゃなくて金を貰うんだ。そうすりゃ、あんたに払う報酬も弾めるようになるだろうし。


大丈夫だって!どうせ異形なんざいたら困るんだ。さくっと殺るさ。さくっとな。


………


いやあ、やっぱり高く売れたな!ちょっと邪魔なくらいだぜ!


どうした?そんな搔きむしって…あーあー、血が出てるじゃねえか。くっついてるとこ、そんなに痒いのかよ?


そうか?そうは見えねえけど。まあ、あんまり掻きすぎるなよ。


…なあ、そいつって知り合いだったのか?


良いだろ?他に話すこともないしよ。普通、気になるぜ。道連れの野郎が、背中に一人くたばった人間を背負ってたらさ。


へえ、炭鉱夫をしていた頃の仲間?それが何で、あんたの背中にくっついてるんだよ?つか、どういう仕組みだ?


そりゃ、わからないよな。ま、地獄の空気を吸い続けた代償だろ。おっかない場所だよなあ。


……


異形、増えてきたな。しかも、上のほうにいた奴らと比べて、随分殺気立ってる感じがするぜ。


へえ。じゃ、今まで案内してきた奴らは、この深さまで到達できなかったのか?


死ぬか、異形か、ってか。俺は偉業を成し遂げてやるさ。あんたも、その瞬間を目の当たりにできるんだぜ!案内人、冥利に尽きるってわけだ。違うか?


何だよ、怒ったのか?返事くらいしてくれりゃ良いのによ。


…………


さて、下層基地ともおさらばか。ここを出りゃ、もう安全な場所はない…怖いねえ、まったく。調子はどうだ?俺の雄姿を見届ける準備はできてるか?


あーあ、まーた掻きむしって。んなことしても剝がれてくれないんだろ?…おいおい、よせって!


ったく。気持ちはわかるけどよ。この深さじゃ、汚染された空気の濃度も濃いからな。俺も落ち着かねえんだ。ま、現実味を帯びてきた冠に興奮してるだけかもな。ああ、いよいよなんだな。無事に最深部まで辿り着けると良いな。


………


ゲホッゲホッ…酷いな。いるだけで胃がむかむかしてくるぜ。だが、あそこをさらに進んだところが最深部…そうだろ?ああ、くそ…眩暈がする。ふざけた場所だぜ。


駄目だ、ちょっと吐いてくる。


悪い、待たせたな。…なあ、あんた…何でもない。行こう。



いや、やめだ。




悪いな、あんた。ここまで案内してもらっておいて何だが…あんたは、もう…


じゃあな。…また別の地獄で会おうぜ。





ここが、最深部…あれ、何だ?


王冠…ははは、文字通り、冠を戴けるってわけか。これを被れば、俺はこの世界の王に…っ!?


…あんた、死んだはずじゃ…違う、あんたは…ぐっ!


エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。エイッ。

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