いっきまぁぁぁす!
「すごく…大きいです」
そう言った俺に、ルラルが無駄口を制止しながら近づく
ルラルは後ろ向きで近づいて来ており、扉の向こうの戦闘用ドロイドに注意を払っている。
俺達二人がこの巨大な白銀色の人工物を前にしたあたりで扉が自動的に閉まっていく。
ここまでにあった扉は全て何処かに消えていたのに対し、この扉はえらく古臭いんだなと違和感を覚える。
なにか特別な部屋なんだろうな
このような好奇心が出てきたのも戦闘用ドロイドと完全に分断され少し余裕が出て来たためであろう。
それはルラルも同じようで
「これは…一体何なの」
ルラルでも判らないことに少し驚きながらも、一応確認のため直接確かめる。
「ルラルでも分からないのか?」
少し待ってと言いながらまた何かを構築していくルラル
ドラえもんなんかな?
その構築したもので隅々まで調べている姿を見て、なにかスキャナーのようなものなのだと察する。
暫く様子を見ていたが、扉の外にはあのおっかないドロイド達がいて、
今だ包囲されているのだと言う状況に少し肝が冷えたので、少し俺も観て回る事にした。
少し叩いたり、誰か居るか呼びかけたりしながら回っていると、
一周してルラルのところに戻った。
結局何もなく、ブツブツ言っているルラルをよそにもう半周した時だった。
「なんじゃこれ」
ルラルから見て反対側に入り口のような物が現れていたのだ
どう考えてもさっきまではなかったものだが突如現れた。
ルラルを呼び、調べてもらうことにしよう
「おーい!こっちきてくれ」
俺の声に呼ばれルラルが回り込んでくる。
この物体の構成素材が謎だなどの独り言を言っていたが意味不明なので俺はシカトをこく
「謎の扉が現れた」
「開けていい?」
続け言った俺にルラルが制止をかけるが、
もぉマヂ無理。。。ゥチ我慢のゲンカイ。。。アケちゃお。。。
「ちょ!待ちなさい!」
ルラルが声を張り言うが、少し触ると扉は開き出す。
開ききった扉の先には操縦席のような物が現れるが、椅子と両サイドに掴みのような物があるだけだった。
これ、乗り物なのか?
覗き込みながらそう思っていると、ルラルも横から覗き込んでくる。
頭頂部が急に目の前に現れたので深呼吸したい欲求に襲われるが目を逸らし必死に耐えていく
「貴方に反応したのかもしれない」
泳いでいた目がルラルの方へ向き直る。
「俺?」
ルラルが俺の方へ向き直り真剣な顔をする。
「私達が貴方を連れ出しにきたのもその仮説からなのよ」
ここに来て初めてルラルが事情を話してくれそうになっているので、俺も強い好奇心から傾聴する。
その時館内に再び先程の中性的な音声が流れ出す。
ー侵入者の方におかれましては、出頭して頂けないようですのでー
ー当コロニー、及び周辺宙域を閉鎖致しますー
ルラルが慌てて
「仲間に教えないと!」
と言いながら少し離れまたしばらく反応が鈍くなる。
恐らく脳内のチップで通信しているのだろう
俺は俺で操縦席のような所に座ってみることにする。
座って見たもののこんな棺みたいなものをどう動かすんだ?
そう思いながら何気に両サイドの掴みを掴む
気分はニュータイプだ
ー生体情報を登録しましたー
アナウンスが流れる。
「お?」
ー照合の結果、最上位権限保持者と特定しましたー
「おおおお!」
ー本機の全権限を峰浩二に譲渡致しますー
「シャベッッタァァァァ!」
俺が叫ぶと、ルラルが大慌てで乗り込んで来る
「ちょっと何したの!」
するとルラルが乗り込んですぐ入口が閉まり操縦席から周囲360°全てが表示される。
ーモジュール稼働ー
ーゼロ・ポイント・エネルギー供給開始ー
俺は、その単語が何を意味しているのか分からなかったが
ルラルは直ぐに理解したようで
「ZPM!嘘でしょ!」
なんなのか聞く前に直ぐルラルが説明を始めてくれる。
俺の扱いがわかってきたようだ
「亜空間から真空エネルギーを取り出して動力源にしているって事よ!」
実在するなんて…とルラルは色々講釈を垂れていたが、
せっかくだしこれで脱出するのが良いんじゃないかと思い端末に対して
「この施設から出たいんだけど」
そう言うと音声が答えてくれる
ー了解しました、施設管制AIの妨害に遭うことが考えられますー
ー戦闘用形態の形成を行いますので想像して下さいー
「嘘でしょ…」
ルラルが言うが、俺は集中し思い浮かべる
宇宙で操縦し敵と戦うには何が最適かを
そうだ!
「やっぱ人型はロマンだよな!」
ースキャン完了ー
ー形成開始ー
端末がそう言うと、先程まで見えていた景色が一瞬歪み、次第に視線が高くなっていく
そして景色に重なるように完成したこの機体の姿が3Dで映し出される。
SFに憧れて冷凍睡眠をした俺には理想の最高にカッコいい姿がそこにはあった。
「峰、いっきまぁぁぁす!」
思わず叫んでいた。