表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/126

会議

 会議室にて、

 円を作ったルラル、マク、テレサ、フィスト、リグの4人が今後の進路についての話を進める


 俺はというと

 円から外れた後方に待機し

 4人の言い分を聞く


 何故なら

 俺はぶっちゃけ役立たずであるからだ。


 リグも同様に後方で待機する

 どうやら

 警備隊長の付き添いで来たように見える。



「燃料の補充をしない限り超長距離の『ファストトラベル』は難しいぞ」


 

 そう言ったのは、

 赤髪の機関士長テレサであり

 

 どうやら

 俺が眠っていた施設に来る時にかなりの燃料を消費し

 さらにはカークが取引をしようとしていた

 『レプリケーター』の勢力圏に向かっていたところを引き返した為

 

 ほぼ余裕がないようだ


 

「そうなると向かう先は『LANDP315惑星』か『B5S13コロニー』になるわね」



 ルラルが人差し指を口元に当て

 考え込みながら言う



「ああそれがいい」



 取り敢えず相槌を俺は打つ


 すると警備隊長のマクが


「食料の問題もあります、今の食料コンテナの保存率では半月と持ちません」


 マクの補足した内容はこうだ

 カーク達のような

 この船を去る者にも多めに食料を分け与えた為

 今の状態に陥っているのだとか



「ああ君の言う通りだ」



 また俺は適当に同意する

 というのも

 マジでやることが無いからだ


 一応の所

 俺の立場は、

 この船のパイロットという事になっている


 宇宙を進むには危険が多く

 カーク達がいなくなってから防衛を担う役目の者が居なくなっていたのだ

 

 そこでアイちゃんと俺に

 白羽の矢が立ったわけだが



「峰うるさい」



 ルラルに叱られる。


 実際何かあった時位しかすることも無く

 ましてや

 この時代の人類にとっては赤子同然の知識しかない俺の待遇はあまり良くはない。


 というかルラルが冷たい



 

「食料問題の方が重要ね、そうなると『LANDP315』が良いわね」

 

 とルラルが言い


「あそこは農耕惑星だから食料も安価に仕入れられる」


 と補足する。


 

 しかし

 それに対してテレサが


「燃料とは言ったけど一番の問題は『ファストトラベル』の動力だ」


「地球に直接乗り込んでAIに直接文句を言えるのはいい、ただ長期間飛べない今の動力じゃ時間が掛かりすぎる」


 

 テレサは少し乱暴な口調で話している。



 俺としてはAIに今のところ何の文句も無く

 別にカチコミに行くつもりは無いのだが


 恐らくテレサ初めて今船に残っている連中は

 皆そういった認識なのだろう


 気合いの入りようが違う



——触らぬテレサに祟り無しクワバラクワバラ


 

 そう思っていると


 インテリ副船長のフィストが口を挟む



「私の計算では、そもそも動力炉を新調する資金がそもそもありません」



 そこで俺は少し笑う

 なんせ本当に

 『私の計算では』と言う奴を初めてみたからだ

 

「船の性能を上げるには『B5S13コロニー』か……」



 そう言うルラルに少し睨まれた気もしたが



——ここらで俺の考えも言っておくか



と俺は満を持して発言をすることにする。



 俺は手を挙げ

 ルラルからの指名を待つ



 しかしルラルは俺の目を見たものの


「他になにか意見は無い?」


 と他のメンバーに話を振る


 

 俺はめげずに手を挙げ続ける

 ハッキリ言うともう意地でも指名させてやる



 しかし

 他のメンバーはもう言いたいことは言い切ったようで

 お互いに顔を見合った後首を横に振る



 はぁ……


「峰……なんかあるの?」


 ため息の後、

 やっと俺を指名するルラル



 今回ばかりは

 普通に良い提案が俺にはあった


 なので何の面白味も無いが普通に喋る



「俺は『LANDP315』に向かうのが合理的だと思う」


 

 それに対し



「だからそれじゃあ『ファストトラベル』の出力が小さくて長距離が飛べないんだって」



 テレサがキレ気味に言うが

 元々こういう口調なのかどっちかは分からないので気にしないことにする。



「そっちの問題は手持ちで解決策がある」



 そう言うと俺は掌を皆に差し出し

 


「アイちゃん」



 すると

 俺の手に以前と同じ様擬態していた『アイちゃんスライム端末』が形を成し


 ピンポン玉程度の球体が

 掌に乗る形になる


 それを全員が見つめ反応を待つ



——当機を他の機体と同期することは機密防衛法に抵触する恐れがあり許可出来ません——



 全員が揃って俺の顔を見る



「ただ?俺が命令すると?」



 俺にはAIに命令する権限が与えられている

 ……つまり



——マスターの権限者責任により当機の動力炉『ZPM』を当船体に接続、同期することは可能です——


 

 アイちゃんの動力炉『ZPM』は

 ルラルの話では亜空間から無限のエネルギーを抽出出来る代物らしい


 

 この会議が始まって以降

 ずっと接続は可能なんじゃないかと考えていた。


 

 な?珍しくいい提案をしただろ?



 そして

 俺の提案に、全員が驚きを隠せないといった顔で

 アイちゃんを見る



「まじか……『ZPM』って、そんなの本当に作れたんか」


 テレサも驚くが

 それなら良いか……と納得してくれる


 そして

 ルラルはというと

 何とも言えない顔で一人だけ俺を見ている



「わかっているの?」



 何を言いたいかは、すぐに分かった。



「機密保持法をあなたの責任で破るということは、バレた時あなたは指名手配されるということを……」



 そう

 バレてしまうと

 晴れて俺は犯罪者という扱いになってしまうのだろう





 しかし


 


 しかしだ




 未来を見るという俺の目的は

 ほぼ果たしたも同然

 

 そうなると俺にはもう、

 両親の墓参り以外に成すべきことを見いだせず


 俺はこの時代に置いて

 ルラルやトロ、そのほかのメンバーと接していても

 孤独な思いが拭えずにいる。



「バレなきゃ犯罪は違法じゃないんだよ!!」



 声を張り言うが

 茶化して誤魔化す

 

 

 おチャラけてふざけていないと

 心が押しつぶされそうになるからだ

 

 

「農耕惑星ってことはガチモンの肉食えるかな?」



「煙草も久しぶりにすいてぇなぁ……」



 

 弱さは見せない




 常に能天気を演じる

 これは俺の意地だ


 自分が望んで冷凍保存を選んだのに


 後悔している姿を

 この時代の人類に見せるのはあまりに情けがない





「目的地は『LANDP315』ということで!」




 ルラルの役割を奪い

 俺が決定を下す



「わかったわ『LANDP315』に向かい食料の調達をしましょう」



 船長の同意も得て

 進路が確定する。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ