ついにバレる
庫内全体に
峰浩二、
もといリグの顔をした男が叫んだ声が響き渡る。
一時、周囲の人間が沈黙する。
そしてポツリポツリとそれぞれが呟き出す
「女装?」
「ん?今女装って言ったよね」
「てかリグいたんだ」
その違和感に壇上に居た
ルラルとカークも気付いたようで
「え?リグ……なんでこのおぞましい画像のことを知っているの」
とルラルが
「リグ貴様、今まで何処にいたんだ」
とカークが言う
どうやら壇上のカークには、
峰の言葉は聞こえておらず
リグの方を見る船員達の異変に気付いただけのようであった。
しかしルラルは気付く
リグはそもそも誰に拘束を解除してもらったの?
そもそも
この画像のことを知っているということは、
リグがこの件に噛んでいる?
違う……
貴方なのね峰
その事に気が付いたルラルは
先程トロから送られて来たデータの健全な方
カークの本部命令無視及び裏取引について
言及する事にする。
「カーク、貴方は本部に『最上位権限保持者』を使ってのAI所有施設の制圧を提案したわね」
「しかし、その後本部には却下され峰を連れ帰るよう指令を受けたはず!」
「だけど船の航路が変更されていないのは何故!?」
畳み掛けるようルラルが攻め立てる
しかし、カークの強硬姿勢は依然変わらず
「それが一体何だというんだ」
「私は常に組織のことを考え、行動しているのだ!命令違反など前列のないことではあるまい!」
カークの堂々とした態度には説得力があり
幾人かの船員は少しカークの言葉に流され
カークは本気で組織の為に尽くしているのではないか
そう口に出す者も現れる。
「いいえそれは矛盾しているわ!」
その流れに歯止めをかけたのは、
ルラルであった。
「私の調べによると、貴方はその後取引を行っていたわね……」
カークが凍りつく
そして船員達もが、
固唾を飲んでルラルの言葉の続きを待つ
「あなた、『レプリケーター』達に峰を売り渡す取引を持ちかけていたわね」
庫内はざわつく
おい『レプリ』って言ったか?
まさか反AIどころか反人類だぞ!
『レプリケーター』とは、この銀河における
AI率いる地球星団連邦の唯一の敵対知的生命体であり、
宇宙開発の際に遭遇し、
人類は長きに渡り対立を続けてきていた機械生命体である。
つまりカークの行いは、
反AIを飛び越えて人類の敵対する行為に相当する。
しかし、そんな混乱に包まれる庫内に於いて
一人安堵しているものが居た
よかったぁ〜女装の方じゃなかった〜
そう思っていたのは
峰であり
彼にとって『レプリケーター』は初めて耳にする言葉でありなにがどうか等の判断は出来ない
ただ思っていたのは、
同じ男として大衆の面前で性癖を晒される事への同情である。
そんな中カークの声が響き渡る
「デタラメだ!一体何処からそんな情報を持ってきたと言うんだ!」
流石のこの事実には
カークの忠実な部下である、武装した戦闘員達も動揺し
形勢が傾いたことで発言からも焦りが見え始める
「そんな出どころもわからない情報を信じるな!」
カークは船員達の方を向き
大きく手を広げ訴えかける
しかし、大げさな身振りに似合わず
効果は見込めない
「出どころはある人物から説明してもらうわ……」
ルラルが
ピッ!と指を指す
「貴方なら答えられるわよねぇ……」
さされたのは当然
「みぃぃぃねぇぇぇ!」
ルラルはここまで場をかき乱した峰への怒りと
カークの反逆行為の証拠を見つけてくれた事への感謝を天秤にかけたが
普通に怒りが勝ったようだ
ルラルで名指しで指名され
変装まで見破られた峰は言う
「ん?俺?」




