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男の子だもん

 再び深い眠りについた俺は,宇宙の崩壊まで眠り

 回帰の末、もとの時代に戻ったのであった。


 とはならないのが現実であり

 

 天使の様に容姿の美しい金髪美女が

「峰さん峰さん」と呼ぶ声が反響し、ヒラヒと舞うことで

 この晴天の浜辺がそう大きくはない、ザックリ俺の住んでいた部屋8畳くらいではないかと予想出来た。


 「——もうっ、この“リアルヴェール”邪魔ねっ!」


 先ほどまで俺を呼んでいる時より、なんというか…作っていない声で彼女が話す。


 すると、周囲の波の音は消え

 浜辺の景色も、白い無地の壁に姿を変える。

 

 まだはっきりと開かない視界のため、片目だけ開けた状態でそれを確認した俺は

 「——やっぱり偽物じゃねぇか」と不貞腐れて、再び目を閉じる。


「ちょっ—―起きてください、急いでいるんです」

 

 そう言う天使様に、少し申し訳無さを覚えたが

 背を向けふて寝する俺は、ハッと名前を失礼ながらまだお聞きしていない事に気がついた。


 この時代に目覚め、唯一知り合ったこの人との関係がこじれるのは、良い判断とは思えない。

 迅速かつ速やかに彼女の名前を聞き

 

 —— なんならそこからお互いの趣味なんかを語り合い、仲良なるべきだ


 などと考え、俺は彼女に質問をする。


「……名前、教えて下さい」


 照れ隠しの意味からも背中を向けたままで女性に尋ね

 俺は息を呑んで、返答を待つ


 —— 美人と話すの緊張するぅぅぅぅ!!


 頭の中はもうパニックだ

 俺は、トラブルそっちのけで彼女の事ばかり考えてしまっていた。

 

「先人の方に失礼しました」と、彼女は礼儀正しく胸に開いた右の手のひらを当て

 優しく微笑み、自らの名前を名乗り始める。


 —― 聞ける、聞けるぞ!——可愛い名前だと良いな


 などと期待に胸を膨らませながらも、もう既にその時には、今が1万年後の事や地球の事など頭にはなかった。

 そこにいたのは、鼻の下を伸ばし金髪美女をガン見する一人の雄である。


「——私は、ルルラルルラララルフナノブフジコと申します。」

「あんだってぇぇ?」


 余りにも難解な名前に、俺は伝説のコメディアンの言葉で返すしか出来なかった。

 俺は、頭の中で何度も反復し、理解しようと務めてみる。


 —― ルルララルッ――フジコ、……ルルルラルっ—―、あれ?……もう1個ルが入るんだっけ?……つか、フジコってなんや?


 などと、どうも自分には呼びなれない発音に、脳内問答をやっていると

 彼女は、気を使い一言添えてくれた。


「1万年前とは言語形態が違うので、呼びづらければルラルで構いませんよ。」


 「それも、まあまあ言いづらい」などとは、初対面の女性に……“美人”の女性に言う勇気もなく

 俺は、少し考える素振りだけ見せて

 

「それじゃあ、ルラルさん……一つだけ質問です――」

 

 俺は恥じらいながらも彼女の方を見つめ、表情を鼻の下が伸びたものから、真剣なものに整え

 先ほど彼女が話していた内容についての質問を、一つだけ投げかけてみることにしてみた。


「——地球は、今人が入れない状態ってどういう事なんですか?」


 例えばそう、気候変動で極寒、もしくは灼熱の星になっている。

 などが考えられる訳であるが

 

 考えられる最悪は、もう粉々になって宇宙を彷徨っているだとか、ブラックホールに飲み込まれただとかだろうか

 しかし、母なる地球の頑丈さは折り紙付きであろう、

 「せめて、残っていてさえくれれば……」と祈るような視線を彼女に向ける。


 だが当の彼女は、やけに神妙な面持ちをしている。

 そして想像通りのトーンで想像通り最悪の……そのちょっと手前位の答えを俺に突き付けてくる。


「地球は今——」


 彼女は視線を外し、少し間を置く


「——地球は今、“最上位AI”と呼ばれる存在によって完全に封鎖されています。」


 —— “最上位AI”?AIって、あのチャットGTPとかそういうやつか?

 

 彼女の答えに考えを巡らせ、出たばかりの“最上位AI”という単語について考えてはみる。

 しかし途中チラリと見た、そう語る彼女の表情からは、少し良くない雰囲気を感じとり

 “最上位AI”にはひとまず触れない事にした。


「……なにはともあれ、人の侵入が禁止されてる事は、間違いないと?」


 一旦俺は、当たり障りのない返答を返しておく

 

 正直なところ、地球があるというだけで欲しかった答えは、得ていたので少し気分は楽になった。


「……まぁ!試しに行ってみるかっ!!」

 その掛け声と共に

 俺は起き上がり、ベットの縁に腰掛ける。


 そして、大きく両手を上に上げ、背伸びをする。


「え……行ってみるって、あの“最上位AI”に封鎖されているんだよっ!?」


 —— “あの”と言われても、この時代に疎い俺にはよく分かんないだけどな


 頭の中で上げ足をとりつつも

 彼女の驚きの余りに現れた、親しみのある崩れた口調が印象に残り

 「これが素なんだな」と少し距離が縮まった嬉しさを着火剤に、勢いよく立ち上がり彼女に向かい合う。


「大丈夫ですよっ!ルラルさん、こう見えて俺は“運”がすごく良いんです」


 俺は両腰に手を置き、胸を張って少し笑ってみせる。

 しかしルラルは、何かに気付き目を背けた。


「……」

 

 —— ん?なんだ、この間は……


 その顔を良くみると、ルラルは少し赤面しており

 顔を背け、自らの視線を掌で隠しながらも、チラチラとこちらを見ている。


 —— ふっ……男らしいとこ、見せすぎたかな


 そう思い始めた俺のドヤ顔は止まらない、デ〇ズニー映画の男キャラ張りに方眉を上げ、エエ顔をしてみる。

 すると、その後のルラルの一言が、

 「あぁ……そういえばそうだった」ということに気付かせてくれた。


「あの……その、前が丸見えです」


「……ハハッ!!」

 

 一旦、笑ってごまかしたが

 「ああそういえば裸で睡眠に入ったな」と自分の下半身に視線を移した俺は、ギョッっとした。 


「う~ん……この」


 そう我が聖剣は、1万年の眠りから覚め

 それはもう高らかに、さらにはギンギンに、


 朝勃ちをしていたのだった。


 そして気づいたら俺は、高校生ばりの朝勃ちに思わずガッツポーズをしていた。


 








 






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