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願望


 居なくなってしまったアイちゃんから

 峰がもう出ていってしまった事を察した私は

 座り込み何もない空間を暫く見つめた


 しかしそこには資材用コンテナと食料生成原資コンテナが4基あるだけであった



 その時

 脳内の『生体端末』に音声が受信される



ーー 『SAS』より全乗組員へ船長よりメッセージがあります ーー


 

 船の統合システム『SAS』は船の運行サポートや乗組員員の管理等を行っているシステムで

 私達乗組員は時折、こうやって情報を受信することがある


 しかしこのシステムはあくまで補助程度のことしかできず

 AIであるアイちゃんに比べたら性能は雲泥の差があるのだ



「艦長のカークです、全乗組員は直ちに格納庫へ集合お願いします……繰り返します……」



 そこで『SAS』からのメッセージを切る



格納庫へ集合?なぜ……


 

 違和感を覚える

 

 峰の逃亡に気付いているのなら

 警報がけたたましく鳴り響いているはずだし

 そもそもカークらしくない口調だ




……なにかあったのかも?




 しかし現状、

 私は格納庫にいて、さらには峰の機体も無く

 新人を縛り上げて喜ぶ痴女扱いをされて追われている


「取り敢えずここから離れないと!」


 そう思った時

 トロから通信が入る


「ルラルちゃ〜ん今の放送聞いた?」


 相変わらずのんびりした口調でトロが話す


「ええ!もしかして峰の機体がなくなっていることと関係あるの!?」


 カークは演説好きで知られており

 格納庫に集めるのは恐らくそのためと考える


「え?ルラルちゃん今格納庫にいるの?」


「そうよ」

 


 トロからの質問に正直に答え

 私がした質問の答えを待つ


 すると


「……それは面白いね」


 トロの雰囲気が変わり、静かに言う


 

 大体こういう時はロクなことにならず

 いつも面倒を被っている

 今回もその危機を感じ

 

 この場から早く立ち去ろうと考えた時



「ルラルちゃんはそこに居たほうが良いかも」


 

 トロの言葉に驚く


 ここに居たら全乗組員が集まってきてしまい

 最悪峰を逃がした罪を被せられてしまう

 そうなればカークの思う壺だ



「今こそ立ち上がる時だよ!ルラルちゃん」



 いつもの感じに戻ったトロが声援を送ってくる

 が未だに何を言っているのか分からない



トロはなにかを知ってる?



 そう考えると

 

幾つかの違和感にも意味があるのではないか

 

ここで何かが起こるのではないか


 と思い始める

 

 

 


 

 一つだけ

 思い当たる事がある



 いやこれは殆どが願望にはなるんだけれども




 峰浩二が何かやらかすのではないかと

 

 




 


 

 




 


 

 

 





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