敵、来る
ここが何処で、目の前に映る惑星がいったいなんという名前なのかも分からない。
しかし、奇麗だと思うのは間違いがなかった。
「峰!」
ーー マスター ーー
ルラルとアイちゃんが同時に俺に向けて言う
ハッと今置かれていた状況を思い出す。
「このまま宇宙に出て大丈夫なのか!?」
慌ててアイちゃんに語りかける。
宇宙空間は初めてであり、考えるだけで操縦できるとはいえ地球を歩くのとは勝手が違うことが想像できる。
なんせ上下がないからだ
ーー 操縦アシスト機能の強度を上げます ーー
不安を感じて二の足を踏んでいる俺にアイちゃんが後押しをしてくれる。
ーー サポート機能の強化により本機のパフォーマンスが14%低下します ーー
ーー いかがなさいますか? ーー
腹をくくった俺は今まさに、宇宙にとび出す。
最後の言葉が若干不安を煽るが、ここにいても何も始まらない、行動あるのみと持ち前のポジティブさで敢えて思考を弱らせ突っ込むことにする。
「なるようになるさ!」
右腕の兵器で打ち破った壁から満を持して飛び出した俺は、早速上下感覚がわからなくなりくるくる宙を漂った。
しかし、すぐにアイちゃんが推力を展開して姿勢を一定に保つ
「うっひょ~」
テンションブチ上がりの俺が室内で叫んでいると
半分宙に浮いたルラルがシート後ろから前に詰めて来たため、奇麗な顔がすぐ横に現れてドキッとする。
「私の仲間達の船がすでに脱出しているの、その合流地点を教えるから合流しましょう」
ルラルがアイちゃんに提案し座標を転送する旨を伝えると
ーーマスターどういたしますか?ーー
マスター
いい響きだ
そう思いながら自分の夢を一つ、AIとの交流実現出来たことを実感し
またも感動してじーんとする。
これだよこれ!こういうSFがやりたかったんだ俺は!
「どう….するの?」
ルラルが心配そうに俺の方をみて語りかける。
その顔があまりにも可愛かっ….もとい語りかけてきていた。
お願い私を信じて!と
ルラルとの約束を思い出す。
ルラルは先ほどの施設の十字路でルラルははっきり俺の見て、俺を地球に連れていくと誓ってくれた。
今思えば結婚の誓いみたいだなと少し恥ずかしくなったが
それは抜きにしても、今のところ運よく物事が進んでいることに運の良さを再確認する。
「アイちゃん、ルラルの仲間たちの所へ向かってくれ」
ルラルがパァと笑顔になった。
了解しましたと、アイちゃんが言うと共にメインの推進ブースターに火が入ったことを、操縦席からみて右下の宙に浮いているウィンドウで確認できた。
推力は30%程度だが、左下に表示されたウィンドウから先ほどの施設からものすごいスピードで遠ざかっているのを見て驚く。
「こういうときってGを感じるんじゃないのか?」
施設の全容をカメラが収めようとしている時についつい疑問が口からこぼれてしまった。
ーー 反重力制御機構を起動しています ーー
ーー マスターの身体機能ですと機構を切ることはお勧めしませんがどうしますか? ーー
アイちゃんが律儀に俺の零した言葉を拾い上げ処理してくれる。
恐らく、宇宙空間ではすべての規模が大きく映像からでは、今施設から遠ざかっているこの時もとんでもないGがかかっているのだろう
そんなことも知らず、もしアイちゃんが気を効かせて反重力なんちゃらを起動していなかったらと考えるとゾッとする。
そう考えていたのも束の間
「来たわよ!」
ルラルが叫ぶ
ーー イオン推進の波長を検知 ーー
アイちゃんが特定する
「なに?なに?なんだよ!?」
テンパる俺
「施設の防衛兵器よ」
座った俺のすぐ横でルラルが後ろを振り返った状態で告げる。
ーー 防衛兵器を望遠カメラで捉えました、ウィンドウを表示します ーー
そこに移った映像に俺はゾッとした。
ダイヤ状になった施設の下部、一番先の先端部分から大量の兵器がぎっしりつまった線を描きながら飛び出してくる。
アイちゃんが拡大してくれた映像から一機一機の形状が見て取れた。
その姿は先が少し細くなった丸い頭のようなものが付き、その後ろに青く光る尾が一本付いているというものだ
それが大量にこちらに向かってくるという状況である。
これは、なんていうか….その
「うげぇ….なんか精子みてぇ….」




