表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第2章 深海に潜む宝玉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/119

02-32 興奮する准教授と期待される魔法戦士たち

 一夜が明け、雅稀らはGFP学院の制服に着替え、ロザン先生の第2の研究室へ足を運んだ。

 深海での出来事を耳にしたロザン先生は終始興奮していた。


「そうか! 海底都市が実在していたこと、深海に眠る宝玉も、シェリル族もいてたのか!」

「先生が興奮する気持ちは察しますが、こっちは大変だったんですからね」

 一翔は高揚するロザン先生を冷ややかな視線で見つめる。


「昨日の朝、ムージェス海底火山で採れたパライバトルマリンをもらえると思った矢先、黒い絡繰り人形と戦いました。簡易ロボットと桁違いの強さでしたよ」

 利哉はやれやれと肩をすくめる。


「しかも、絡繰り人形は腹立つことに、フォール=グリフィンのシンボルをあしらったローブを羽織ってたんですよ!」

 雅稀のひと言で、ロザン先生は突如真面目な面持ちに変わる。


「深海に住む者が、何故フォール=グリフィンの存在を知っているのか?」

 ロザン先生は顎に手を添えて考え込む。


「俺が採掘場で出会ったじいさんに言ったからだと思います。おそらく、彼の魔術だったのではないでしょうか?」

「なるほど……」しばらくロザン先生はしばらく思いに沈むと「深海にはまだまだ謎が隠されていることを示唆しているのかもしれん」と考察する。


「先生、何言ってるんですか?」

 利哉は意味がわからず、顔を歪める。


「深海で生活するシェリル族と我々陸上で生活する人とは、長年接点を持っていない。陸上に住む我々からすれば、深海に住む者の生活様式も知らなければ、どのような魔術を使うのかも知らない。榛名くんたちはそこまで調べ切れたのかね?」

 黒縁眼鏡の奥から光るロザン先生の眼光は利哉を射貫いている。


「そんな、2日でわかる訳ないじゃないですか!」

 利哉の冷や汗は耳の近くを伝う。


「俺たちはパライバトルマリンを手に入れるのに必死だったんです。フォール=グリフィンに襲われてしまえば、俺たちの命がなかったかもしれないので」

 雅稀はペンダントトップに取りつけられた正八面体の蒼い石を強く握る。


「それは……」

 ロザン先生は雅稀の握り拳に焦点を当て、目を見開く。彼の手から神々しい蒼い光が漏れている。


「そうです。これが深海に眠る宝玉です」

 雅稀はそっと手を広げる。強い光を放つ宝石は鮮やかで濃いネオンブルー色をしている。


「見させてもらっても良いかい?」

 はい、と雅稀は首に着けているチェーンを外し、ロザン先生に渡そうとした。

 深海に潜む宝玉がロザン先生の手元に渡ろうとした刹那、准教授が広げた手を拒絶するように雅稀の手の中にとんぼ返りした。


「!?」

 第2の研究室にいる4人は全員驚愕する。


「もしかして、盗まれそうになった時に持ち主のところに戻ってくるってこのことか……」

 一翔は瞠目したまま、強い光を放つ雅稀の右手を凝視する。


「そんな力が備わっていたのか……」

 ロザン先生は息を呑む。持ち主の身を守る以外に、パライバトルマリンが窃盗されても持ち主の元へ帰る力があることを、身をもって初めて知った。


「その宝石の色を見ると、銅が4%は含まれているね。それで、あんなに色濃く鮮やかなネオンブルー色をしている」

 准教授に言われ、雅稀らは改めてパライバトルマリンをじっくり観察する。よく見かけるトルマリンと比べると、確かに濃い蒼色をしている。


「君たち、わざわざ僕のところへ報告しに来てくれてありがとう。興味深い事実を聞けて嬉しかった」

 ロザン先生の表情は緩んでいた。


「深海にまつわる都市伝説について教えてくださったので、報告するのは礼儀です」

 ペンダントを再び装着した雅稀は姿勢を正す。


「先生、深海にはパライバトルマリンだけでなく、年に1回の伝統行事もあるんです」

 一翔は懐から海底都市の地図を取り出し、ロザン先生に手渡しする。


 ロザン先生は地図が描かれた紙を撫でるように触る。


「紙質が地上のものと異なるね」

「えっ!?」

 そこまで気がつかなかった! と一翔は目を白黒させる。


「地図と、その裏面に伝統行事の説明。地上と深海で使われている文字が同じ魔術語であるとは……中々面白いなぁ」

 ロザン先生はじっくりと伝統行事について書かれた方の面を読む。その目つきは研究者そのものだ。


「琉根くん、これをもらっても良いかね?」

「はい、構いません。雅稀と利哉が同じものを持っているので」

「ありがとう。もし、深海に興味を持った魔術研究学科の学生が僕の研究室に現れたら、深海の都市伝説について深く研究してもらうことにするよ」

 ロザン先生は期待と喜びの笑顔を見せる。


「これ以上、都市伝説のことを根堀り葉掘り訊かないでくださいよ。オレらは《《魔法戦士》》なんで」

 利哉は魔法戦士であることを強調するように、右手に剣身(ボディ)が薄紅に染まった真剣を握り、胸元に構える。


「ちょっ、よせって!」

 雅稀は掠れた声で利哉の肩を後方へ叩くと、剣を持った赤髪はバランスを崩して背中から倒れた。


「すみません、無礼を許してください」

 背中を強打して怯む利哉の代わりに、一翔が頭を下げる。


「気にしないで。僕はGFP学院を狙うフォール=グリフィンと戦えないから、君たちのことを頼りにしているよ」

 ロザン先生は目を閉じ、左右に首を振って開眼する。准教授の目は期待を乗せているように光っていた。


「まだ奴らに太刀打ちできるほどの実力は備わっていませんが、俺たちで連携を取りながら頑張ります!」

 雅稀は魔法戦士の学生を示す青い五角形とグリフォンが刺繍されたエンブレムに、右手の握り拳を当てる。


「頼むよ。フォール=グリフィンはこのデュナミス大陸にも身を潜めているかもしれない。今のところ目立った動きは無いが、いつ過激になるかわからない。用心しながら学業と共に励んで欲しい」

 ロザン先生は神妙な眼差しを3人の学生に向ける。


「はい!」

 雅稀らは力強く返事をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ