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【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第2章 深海に潜む宝玉

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02-30 手に入れた深海の宝石

 雅稀は目を開けた。霞んでよく見えないが、赤髪と黒髪で先端が紫に染まっている2人の姿があった。

 もう一度瞬きすると、利哉と一翔が雅稀の顔を覗き込んでいた。


 雅稀は無言で寝台から起き上がると、黒い漆を塗ったトレイの上に湯呑みを3つ載せて運んでいたガルティが寝台の部屋に現れた。


「おお、お主。やっと起きたか」

「やっと、って……」

 雅稀は若干霞む目で辺りを軽く見渡す。どうやら相当眠っていたらしい。


「もう昼飯の時間過ぎてるぜ」

 顔の痣は完全に治っていない利哉だが、笑顔からするとあからさまに元気になっている。


「湯呑みを持ってきたからの、飲むと良い」

 ガルティは3人に湯呑みを手渡した。


「ありがとうございます」

 彼らは湯呑みを受け取ると、昆布色のお茶を一口飲んだ。ゼラチンにコーティングされたお茶は口の中でオブラートのように溶け、昆布やわかめなど、海藻類の濃厚な味が染みる。


「お主たち、元気になったかね?」

 はい! と雅稀たちは元気に返事をする。


「あの時、お主たちの戦い方を見ると、初心者っぽかったんじゃ。じゃが、わしの秘密兵器によく勝てたの」

 ガルティは一翔に目を向け、

「そこのお主、わしの試練の手掛かりを掴んだから勝てたんじゃぞ」

 と彼の顔を目に焼きつける。


「雅稀がパライバトルマリンがヒントだと言ってくれてなかったら、未だに答えに辿り着いてなかったと思います」

 一翔は恥ずかしそうに頭を掻く。


「でも、そっから先は何もわからなかった」

 雅稀は軽く首を振る。一翔の頭脳があったからこそ絡繰り人形に勝てたのだ。


「そうかそうか。ずっと昔、お主たちのように地上からパラマリン採掘場へ来た者がいた。戦い方は派手で、わしに当たったら命が無いと思ったくらいじゃった。じゃが、カラクリ共に勝てず、地上へ帰った行ったんじゃ」

「そんなことが過去に……」

 一翔は湯呑みを両手で持ちながら俯く。


「派手な戦い方ってことは、オレたちより階級が上の人だったんだな」

 利哉は顎に手を当て、天井に目をやる。


「つまり、いくら経験を積んでも、パライバトルマリンの石言葉に合った戦い方でないと、勝てないってことか」

 一翔は視線をガルティに戻すと、老人は深く頷いていた。


「パライバトルマリンの石言葉――友愛、真実、勝利――これら3つが、あやつらには備わってなかったんじゃ」

 意味深長そうに雅稀らはガルティの話を聴く。


「お主たちは友愛が欠けていたから苦戦したんじゃ。それが補われて勝ったんじゃ。フォール=グリフィンとやらと戦う時も、どんな時もお主たちの絆があってこそ乗り越えられる。忘れるんでないぞ」

「はい」

 雅稀らは言葉を重く受け止めるように返事した。


「約束通り、パライバトルマリンをお主たちにくれてやろう。上の階へ着いてこい」

 ガルティはさっさと上の階へらせん状のスロープを上っていった。


 雅稀たちは濃厚な海藻の味がするお茶を飲み干し、上の階へ足早に移動した。



 寝台の部屋の上の階は見覚えのある狭い部屋だった。

 中央に手のひらサイズ5個のパライバトルマリンが、天井から差す微かな光を浴び、神々しいネオンブルー色に輝いている。


 そのうちの1つ、特に煌めいている物をガルティはそっと手に取った。

 深海に眠る宝玉は宙に浮き、サファイアブルーの光を放ちながら3つのペンダントに姿を変えた。


 ペンダントは1つずつ雅稀たちの手元へゆっくり移動し、彼らの両手に載る。


 光が収まると、水色に反射する銀のチェーンに、正八面体のパライバトルマリンの石が繋がっていた。


「銀のチェーンにパライバトルマリンの成分が含まれているんじゃ」

 それで銀が反射すると薄青に光るのか、と彼らは老人の話を聞いて納得する。


「それと、特殊なレーザーでお主たちのフルネームを刻印しておる。持ち主の証じゃ」

 雅稀たちはパライバトルマリンを天井から漏れる光にかざす。


「すげぇ、『Masaki Shinjo』ってローマ字の筆記体で書かれてる!」

 雅稀は白色に浮かび上がる字に心を揺さぶる。


「本当だ!」

 近くにいる利哉も一翔も自身の氏名を見て大興奮する。


「ローマ字ってわしには読めんけどの。万が一の時、誰かの手によって盗まれそうになった時、必ずお主たちの元で守ってくれる」

 ガルティはそう言い放った直後、神妙な顔つきに変わり、

「じゃが、こやつは持ち主の真実を見ておる。守ってくれるから大丈夫だろうと安直なことを考えていると、いざという時に守ってくれないかもしれん。お主たちの友愛、真実、そして勝利の気持ちが本物であれば、お主たちを守り導いてくださる。大事にするんじゃぞ」

 と述べた。


「無論、大事にします!!」

 一翔は名入りのペンダントを握りしめる。パライバトルマリンは丁度彼の手に収まる程の大きさで、指の隙間からネオンブルーの微かな光が漏れる。


「必ず、俺たちの使命を果たします!」

 雅稀は早速首につけたペンダントに手を当てる。不思議と心が清められると共に、守護してくれるという安心感をもたらしてくれる。


「友達を、仲間を、そして絆を大切にします!」

 人情味のある利哉らしく、両隣に立つ雅稀と一翔の肩を組む。ペンダントトップの宝石は優しい光で彼の胸元を照らす。


「お主たちの健勝と活躍を深海から祈っておる。達者での」

 力強い眼差しを向けたガルティの言葉を最後に、雅稀らはパラマリン採掘場を後にした。

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