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【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第2章 深海に潜む宝玉

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02-24 絡繰り人形 VS 利哉

「絶対、何かあると思っていた」

 利哉は絡繰り人形の麺棒の攻撃を剣身(ボディ)で必死に防御(ガード)する。


「こんなことになるんだったら、メイリアさんのとこで修業を積むべきだったな……」

 (ヒルト)を両手で握り、奥拉(オーラ)・火を唱える。

 剣身(ボディ)が赤く光り、技を放つと同時に絡繰り人形が持つ棒を弾き返す。


 絡繰り人形は水中で姿勢を立て直し、カラカラと接続部の摩擦音と共に、再び利哉に襲いかかる。


「こうなったら……」

 利哉は(ヒルト)から左手を離し、向かってくる絡繰り人形に伸ばす。


「陽・火!」


 彼の左手から、等身大の薄橙色の火球が現れる。

 プロミネンスが火球の周りから舞い上がっている。


 食らえ! と利哉は深海の水圧に負けまいと左腕を力一杯前方に動かす。

 陽・火の火球は絡繰り人形の胸部に直撃した。


(やったか……)

 そう思ったのも束の間、火球から絡繰り人形が姿を現した。

 上から着ているローブが黒いせいか、焼け焦げた痕もかすり傷も何一つ無い。


(まさか、全然効いていないのか……?)

 利哉は剣を構え直す。


 剣を振ろうかとした時、絡繰り人形の青い棒が利哉の腰に直撃した。

 ゴキッ! と骨を折ったような鈍い音が部屋中に響く。

 利哉は姿勢を崩し、うつ伏せに倒れた。


「痛た……あの棒、何なんだ? ただの木製バットじゃねぇな……」

 腰の骨を折ったか否かを気にするより、絡繰り人形が握っている棒の材料を気にしている利哉だが、確実に腰へダメージを受けている。


 絡繰り人形は利哉の様態を哀れむことなく、勢いよく青い棒を振り上げ、今度は彼の背中を狙う。


(背中から水の流れを感じる……)

 攻撃を予感した利哉は剣を右手に握ったまま、横に転がって間一髪でかわす。


 四つん這いの姿勢から剣を杖代わりに切先(ポイント)を床に刺し、ゆっくり立ち上がる。

 真っ直ぐ立てることから、腰の骨は折れていない。

 そのことに安堵したいところだが、そんな余裕はない。向かいの絡繰り人形が次の攻撃を繰り出す準備をしていたのだ。


 利哉は腰を低めに落とし、胸の前に構えている(ブレイド)からオレンジ色の炎が燃え盛る。


(スプリット)・火!」


 剣を横方向に薙ぐ。

 水圧の影響なのか、腕力が不足しているのか、素早く振れず、絡繰り人形はひょいと軽やかに剣の上を飛んだ。


 絡繰り人形はリベンジの意を込めたように、青い棒を頭上に振り上げ、利哉の背中へ力一杯振り下ろす。


「がっ――」

 狙い通り、青い棒が利哉の背中に直撃し、気を失ったようにバタリと倒れた。


(オレの攻撃魔術は全然効かないし、麺棒の攻撃はやけに痛いし、どうやったらヤツに勝てるんだ……?)

 利哉は意識が朦朧としながらも、何とか勝利を掴む方法を考え始めた。


(まだ出していない攻撃魔術と言えば……そうだ!)

 尻もちをついたままではあるが、切先(ポイント)を黒い物体に振りかざす。


(スフィア)!」


 切先(ポイント)から絶えず火の玉を連射する。

 絡繰り人形は広範囲に放たれる(スフィア)・火の一部は腰部に直撃しながらも、目に留まらぬ速さで左右にかわす。


 これでもか! と言わんばかりに利哉は目をしかめ、切先(ポイント)に全身から魔力を注ぐ。


(スフィア)でも効かないのなら、変化系だ!」

 利哉は表情を変えずに口を開け、攻撃魔術を放った。


光線(レーザー)・火!」


 切先(ポイント)から橙赤の火の玉が連射されていたのが、光の筋のように密集し、1本の棒から炎が吹き出すように変化した。

 炎の棒は深海の海水に消されることなく、燃え続けている。


「火属性は情熱。オレの情熱があればあるほど、威力が増す!」

 利哉は目の前の勝利を掴むための熱意を切先(ポイント)に込める。


 ギギギギ……と絡繰り人形は光線(レーザー)・火に急所を突かれたのか、鈍い音を立てる。

 黒い秘密兵器の1体は両腕、両足と共に広げた状態で、燃え上がる光線をもろに受ける。


「情熱さえあれば、こいつは疎かフォール=グリフィンも、水属性のマサにだって勝てるはずだ……!」

 負けず嫌いの性格が発動した利哉は『勝利』の漢字2文字を確信していた。


 耳障りな音、心臓にあたる部位に砲弾系の攻撃魔術が命中している絡繰り人形は、そう長く持たないと。

 しかし、ギリギリと違う音が利哉の耳に届いた。


 異変を感じた彼は眉根を寄せる。

 目線を切先(ポイント)から炎の光線(レーザー)を辿って先端へ移すと、絡繰り人形は胸部の前に2本の腕を交差させ、両足は腕に隠れるように折りたたんでいた。


 絡繰り人形はこの時を待っていた! と言っているのかの如く、両腕と両足を大の字に広げ、利哉の技を弾き飛ばす。


「そんなの……信じらんねぇ……」

 利哉は燃え尽きた剣を握っている右手を少し緩め、だらんと右腕を下ろした。

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