表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第2章 深海に潜む宝玉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/119

02-16 ブルーホールから海底へ

「すんなりグリア=リーツが手に入るとはなぁ」

 利哉は買ったばかりのグリア=リーツを見入るように眺める。


「あの時、訊きたいことがあったんだよな」

 雅稀は足元に視線を落とす。


「さっきの兄さんは卒業したって言ってたけど、卒業してからも暗いところで目は緑に光るんかな?」

 雅稀は顔を上げて首を横に倒す。


魔術界(ヴァール)にいる限りはそうだと思う。僕の両親も目は光ってなかったし……」

 一翔は非魔術界(ル=ヴァール)に住んでいた頃を思い出す。


「カラーコンタクトしてなかったか?」

 雅稀は一翔へ顔を向ける。虹彩の色を決める遺伝子の近所にGFPをコードする遺伝子を組み込まれたのであれば、魔術界(ヴァール)にいようといなかろうと関係なく目は光ると考えていた。


「してたかも……」

「それだったら、どこにいても光を浴びてしまえば、目は緑に光り続けるってことか」

 雅稀は肩を落とし、ため息をつく。


「GFP学院に来るまで気にしてなかったけど、親がカラコンをしてたのは、それが理由だったのか……」

 一翔は地面に目をやる。陽が届きにくいところにいるのか、地面が湿っているように暗い色をしている。


「まま、せっかくの外出だから、前向きに考えようぜ。早い話、フォール=グリフィンって奴らを倒せば良いんだろ」

 利哉は弾んだ声で腕を前後に振りながら2人の前を歩く。


「そうだな。そのために深海へ行くからな」

 雅稀は気持ちを新たにして利哉の横を歩く。


「何かあるかな」

 一翔は視線を戻し、雅稀と利哉の間へ入った。


  ――***――


 10分程歩くと、陽が届かず視界が悪かった森から外へ出た。

 急に陽が差し込み、あまりの眩しさに彼らは目を細め、手をかざす。


 明るさに目が少しずつ慣れ、かざしていた手を下ろすと、直径300メートルの瑠璃色の湖があり、その周りは草原が黄緑色に彩る。草原の周囲は深緑の森の壁がある。


「ここだけ森林がくり抜けられたようだな……」

 雅稀は神秘的な景色に魅惑される。

 湖から吹く清らかな風は潮気がなく、雅稀たちの髪を揺らしながら通過する。


「風に当たると心が洗われるな」

 利哉は目を閉じて、風を全身で受けるように軽く手足を広げる。


 一翔はグリア=リーツの画面から目を逸らすと

「これがブルーホールだ!」

 と声を上げる。

 一翔の声は静寂なブルーホールの領域でこだまする。


「湖にしては、すごく色が濃いな」

 雅稀はブルーホールに右手をつける。秋の海のようにひんやりして清々しく感じる。


「おそらく、それでブルーホールって名づけられたんだろうな」

 利哉は湖の前でしゃがむ。


「早速入ってみよう。潜水(マリブ)

 一翔はダイビングする時の魔術を唱えて湖へ潜った。


 本来なら、ダイビングスーツとゴーグル、空気を圧縮したタンクなどが必要だが、その魔術を唱えれば、普段の格好のままで水圧も気にすることなくダイビングが楽しめる。


「俺らも」

 雅稀は利哉と視線を合わせ、「潜水(マリブ)」と静かな声でブルーホールの世界へ入った。



 湖の中は濃厚の青色が視界全体を占める。魚や水生植物も存在せず、瑠璃色の水と周りを囲う岩肌しか目につかない。


「本当に何も無いんだ……」

 雅稀は呆然と水面に目をやる。水面が陽の光を反射してキラキラ光っている。


「湖の底へ行けば、海に繋がる洞窟があったんだっけ?」

 利哉は湖底へ手を掻きながらロザン先生との会話を思い出す。


「先生の話が合っていれば」

 一翔は足を上下に動かし、少しずつコバルトブルー色の底へ向かう。


 そうだな、と利哉と雅稀は湖底へさらに深く泳ぎ進んで行った。



「ブルーホールの底に着いたか」

 雅稀は進行方向にごつごつした地面が見えた瞬間、足を底に向ける。上を見上げれば、陽の光は瑠璃色の水で完全に遮られていた。


 視線を体の向きに合わせると、向かいから差す微かな光が続く通り道を照らす。


「これが海へ繋がる洞窟……」

 一翔は通路のある方向へ足を進める。


 彼らは洞窟の入り口へ立つ。高さは5メートル、幅は2.5メートル程度とあまり大きくないが、海まではかなりの道のりがある。


「オレらの居場所から海までどのくらいあるんだ?」

 利哉は左腕を胸の高さまで動かし、グリア=リーツのスリープモードを解除する。画面左下のスケールを参考にすると、大体10キロメートルだ。


「10キロもあんのか!」

 雅稀は驚愕する。


「裏を返せば、ここから海まで僅か10キロしかないと言えるね」

 一翔の目線は海の方向へ向いていた。冷静沈着な顔をしている。


「精神を心に集中させ、一気に海へ出よう」

 一翔は全身に藤色のオーラをまとい、カジキのように高速で突き進む。


「待て、置いて行かないでくれーっ!」

 雅稀も心に精神を集中させ、地面を蹴って猛スピードで一翔の後を追う。


 利哉も遅れて赤色のオーラを放ち、2人を追行した。



 高速で泳ぎ始めてから8分が経過すると、3人は岩肌で囲まれた洞窟から抜け出した。

 ブルーホールに潜ってから1度も見なかった、魚と水生植物が海面から差す光に当たりながら優雅に泳いだり揺らいだりしている。

 ブルーホールの湖底と同じ水深とは思えないくらい明るく照らされ、海の様子がよく見える。


「海に出た途端、急に暖かくなった」

 利哉は海水の温もりを肌で感じながら、洞窟から少し離れたところに泳ぐ魚を見つめる。


「ここら辺に珊瑚礁が広がっているのも頷けるな」

 雅稀は顔を右へ向ける。数百匹の小魚が赤や紫、黄緑など個々の色を主張する珊瑚の迷路を楽しんでいる。


「沖縄の海もこんな感じの風景だろうね」

 一翔は嘘のように変化した光景に見入る。


「ブルーホールの湖底から海へ繋がる洞窟があったのは本当だったのはわかった」

 雅稀は後ろを振り返り、出てきた岩穴をちらりと眺め、

「でも、ここからが本題だな、海底にパライバトルマリンが眠っているのか……」

 と足元に続く珊瑚礁とタンポポのような水生植物に視線を変える。


「ここの深海に宝石もシェリル族っていう民族もいるとはとても思えんぜ」

 利哉は真下に目をやり、底へ向かう珊瑚を目に焼きつける。


「水深何メートルかは知らないけど、早くしないと日が暮れてしまう。急ごう」

 一翔は真っ先に海底へ向かって、魔術の力を借りて高速で泳ぎ始めた。


「来たからには、ちょっとくらい景色を堪能しても良いと思うのに」利哉は腕を組むと「俺もそう思う」と雅稀も彼に賛同した。


「ただ、地球とは違って、海底まで何千メートルあるか読めないから、一翔が急いでいる気持ちもわかる」

 雅稀は海底のある方向へ目をやる。地面とほぼ垂直関係にある大陸棚から、無数の珊瑚と水生植物が縦横にびっしり棲み着いている。



 深くなるにつれ、光が届かなくなり、視界は暗闇に変化した。

 雅稀は無心に海底へ向かって高速で泳ぐ一方で、利哉と一翔の虹彩は緑に光っていることに気づいた。


(夜でなかろうと、暗かったら目が光るのか……)

 俺の目も緑に光っているだろうな、と雅稀は少し複雑な気持ちになった。


 魚は彼らを襲う気配は無い。おそらく3人の目が緑に発光しているお陰かもしれない。

 今の場所で水深4000メートルに達していたが、まだ底は見えない。

 周りを泳ぐ魚の数は表層にいた時より格段と減ったが、ハダカイワシをはじめ発光する深海魚を見かけるようになった。


 時刻を確認すると11時40分。まだ正午ではないのに、暗すぎる故に時間感覚が狂いそうだ。

 先が見えない目的地に気が遠くなりそうな気持ちを抑えながら、真っ暗で氷水のように冷たい深海をひたすら海底へ向かって泳ぎ進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ