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【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第2章 深海に潜む宝玉

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02-10 基礎攻撃魔術Aの実技試験

 翌日の11時。基礎攻撃魔術Aの期末試験が始まろうとしている。

 去年まで普通の高校生だった雅稀は、期末試験と言えば筆記試験をイメージしていたが、魔法戦士学科の期末試験はほとんどが実技試験だ。


 基礎攻撃魔術Aの講義は属性で分かれて行われていたため、利哉と一翔は別の教室にいる。

 大学生になって初めての期末試験で、しかも初日からルームメイトが近くにいないため若干心細く感じるが、成績や外出のことを考えれば、情けない感情に浸っている場合ではない。


 雅稀がいる教室では、入口に近い方の壁に沿って100人の受講生が横1列に並んで正座をしている。

 向かいには見慣れた100個の藁人形がズラリと並んで対面している。


「それでは、今から基礎攻撃魔術Aの試験を始める。起立」

 その講義の水属性の担当教員であるオーマラ・ユン・エリスが声を上げると、雅稀を含む受講生は素早く立ち上がり、利き手に剣が姿を見せる。


「まずは最も基本的な攻撃魔術、奥拉(オーラ)・水から。始め!」

 基本中の基本で、物理系の技から見られるのは当然のことか、と雅稀は剣身(ボディ)に魔力を集中させる。

 剣身(ボディ)は図書館棟の本に載っていたパライバトルマリンの色と同じ、誰もが魅了されそうな澄んだ青色に光っている。


 雅稀は一瞬他の受講生の剣身(ボディ)の色を見ると、青系統であることは共通しているが、水色から紺色まで色の濃淡は幅広く、明るさも異なる。技を出す時の心持ちが関係しているように感じた。


 視線を目前の藁人形に戻し、右耳の近くまで剣を振り上げ、左斜めに切り裂く。

 麩菓子を切ったような、今まで感じたことのない軽さだった。


 初めは力いっぱい入れて振り下ろすと、頑丈な棒を切った感覚だったのが、今はそこまで力を入れなくとも簡単に切れるようになった。

 藁人形の質が落ちたのではなく、雅稀の魔力や腕力がついた証である。


 切られた上半分の藁人形は鈍い音を立てて床に落下した。

 他の人が切った藁人形もほぼ同じタイミングで床に転がった。


「次、(スプリット)・水!」

 エリス先生のかけ声に合わせて切り落とされた藁人形は消滅し、同時に眼前に立ちはだかる藁人形は元の状態に戻った。


 雅稀は剣身(ボディ)に魔力を注ぐと共に、『変化に富む水属性』を脳裏に浮かばせながら(ヒルト)を握りしめた。

 (ブレイド) から剣身(ボディ)に向かって津波の如く水が吹き出た。


 剣を握っている右手を左腰へゆっくり動かし、即座に真横に剣を振った。

 ミシッと濡れた音と共に、藁人形の上半分は再び床へ落下した。


 雅稀は今の姿勢を崩さずに周りを見渡すと、全員切り落としていた。

 今のところ、落第者はいないことを確認した。



「はい、砲弾系の(スフィア)・火!」

 壮年の黒い薄縁眼鏡を掛けた銀髪の男性教員、イリヤ・ツヴェン・リマスは気合いを入れて火属性の受講生を指示する。


 利哉は左足を一歩後ろに下げ、切先(ポイント)を5メートル先の藁人形に向ける。

 切先(ポイント)に魔力を集中させると、そこからマグマの集合体が膨らみ始めた。


 普段ならここで技名あるいはかけ声を上げるが、試験中を理由に唇を噛みしめて無言で(スフィア)を放った。


 利哉のマグマに覆われた火球は直線状に進み、藁人形の頭部を丸焦げにした。

 彼の周りの学生も(スフィア)・火を出すことに成功していた。


 しかし、利哉の意識は完全に試験モードになっているため、周りの様子を窺わずに剣と藁人形、時々指示するリマス先生の声だけに集中していた。



光線(レーザー)・闇」

 闇属性の担当教員であるシアル・サッカ・ローフは落ち着いた声で命令した。


 一翔は目を閉じ、無数の(スフィア)が集まるイメージを脳裏に描く。

 彼が手にしている剣の先端から青紫色の光線(レーザー)が伸び、目先の藁人形の中心にヒットした。


 ローフ先生は歩き回りながら学生たちが放つ技を見ては手元に用意されたノートに何かを記録していった。


 ローフ先生は教壇へ戻り、黒板を背にすると

「これで基礎攻撃魔術Aの試験を終わります」

 と教室を去った。


(結果は気になるけど、次の試験もあるし、一旦忘れよう)

 一翔は深く息を吐き、3限目に控えている基礎防御魔術Aの試験に切り替えた。

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