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【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第2章 深海に潜む宝玉

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02-05 波動系の防御魔術――抗(アンチ)陽

「じゃあ、さっきの技の防御魔術、(アンチ)陽・水について教える」

 セルラは雅稀に近寄る。


「攻撃する時と同じで、魔力と念力を集中させてバリアを張る」

 セルラは左手を雅稀の方へ伸ばして手本を見せる。


 彼女の手から薄い青緑色の円形のバリアが現れた。


「今から私は陽・水を出すから、実践してみて」

 セルラの左手からスカイブルーの球体が現れ、円形のバリアを貫通して雅稀のいるところへ向かう。


 雅稀は球体を標的(ターゲット)にして左肘を伸ばした。


(アンチ)陽・水」


 雅稀は手を広げ、真剣な目つきを手の先に向けると、彼の手から濃厚な青色のバリアが現れた。

 セルラの放った球体がバリアに触れた瞬間、バリアに優しく吸い込まれるように姿を消した。


「やるね。もう1回」

 物静かなセルラだが、悔しかったのか、今まで見せたことのない真剣な表情で陽・水を放つ。


 放った球形の大きさはセルラの上半身と同じくらいで、先程とは桁違いだ。


 雅稀は念力を頼りに左手から(アンチ)陽・水を無言で放った。


(あの攻撃魔術が俺のバリアに当たった瞬間、水を回転させたバリアに……)


 セルラの陽・水が雅稀の(アンチ)陽・水とぶつかった。


(今だ!)

 雅稀はしかめっ面をして左手の先に出現しているバリアに念力を込める。


 バリアは雅稀から見て反時計回りに水が回転し始め、セルラの上半身サイズの球形を取り込んで同化させた。

 回転している水の中心領域は外側へ移動し、速度は4倍に上がった。


「はっ!」


 雅稀はしかめていた表情を緩め、高速で回転する水の輪を放った。


 中央がぽっかり空いた状態ではあるが、水の輪はブーメランのような軌道を描きながらセルラを襲う。


 セルラは一瞬背筋が凍ったが、咄嗟に(アンチ)陽・水のバリアを張った。

 水の輪とバリアは水しぶきを周辺に散らしながら激しくぶつかり合う。


 セルラはバリアに魔力を最大限に注ぎ、何とか雅稀の技を食い止めた。


「まさか、ここまでやるとは思わなかったよ」

 セルラは安堵した表情を見せる。


「こんな感じで技を出せたらって考えてたら不思議と出ました」

 雅稀は伸ばしていた左腕をゆっくり下ろす。


銀階級(アルゲンクラス)の私を追い詰めるって相当念力が強いのね」

 セルラの言葉を聞いた雅稀は念力ではセルラに勝っているけど、魔力で負けたんだと思った。


「もう、これで波動系の陽の攻撃魔術、防御魔術共に身についたね」

 セルラは握っていた剣を魔術で姿を消した。


「はい! これから魔力を上げていきます!」

 雅稀は意気込んだ。



 メイリアは左手を利哉に向けて軽く広げ、

「今度はあたしの陽・火を受けてみなさい」

 とチェリーレッドの球形を放った。


 メイリアが放った陽・火は小さくらせん状の軌道を描きながら利哉に迫る。


(大きさはバレーボールくらいか。ちょっとデカいけど、テニスみたいに跳ね返せたら面白いだろうな)

 利哉はニヤリと若干口角を上げる。


(アンチ)陽・火!」


 利哉は真剣な顔つきに戻って、左手から紅色の透き通ったバリアを放った。


 メイリアの陽・火と利哉の(アンチ)陽・火が接触したと同時に、放射熱が空気中に伝わる。


 跳ね返れ! と利哉は念力をバリアに込める。


 メイリアが放った球形が利哉の(アンチ)陽・火に食い込んだ。

 利哉はバリアを凝視し、左手を完全に広げた。


 バリアはゴムが元に戻るかのようにチェリーレッドの陽・火を跳ね返した。

 跳ね返された球形はメイリアが立っている方向へ一直線に飛ぶ。


「そんな、まさか……」

 メイリアは想定外の事態に困惑しながらも(アンチ)陽・火を放つ。


「あたしが出した技をあたしが受けることになるとはね」

 メイリアは落ち着いているが、顔つきは真剣だ。


 利哉に放ったはずの陽・火とメイリアが放った(アンチ)陽・火が火花を散らしながら激しくぶつかり合った。


(ここで食い止められなかったら恥ずかしいわ)

 メイリアは左手に魔力を集中させる。

 

 チェリーレッドの球形は火花とともに空中へ散りながら消滅した。


 メイリアは左腕を下ろして

「トシくん、あたしをこんな目に遭わせるなんて、なかなかやるね」

 と無表情で利哉を見つめる。


 メイリアが褒めているのか怒っているのかがわからず、利哉は黙ったまま左手を軽く握り、自身が張った(アンチ)陽・火を消滅させた。


「さあ、わたしの陽・闇を止めてみな」

 ネアは左手から繰り出したダークネイビー色の球形を一翔に放つ。


 一翔は黙って左手に魔力と念力を込め、(アンチ)陽・闇を放つ。

 ネアの陽・闇はスーパーボール並に小さいが、魔力が凝縮されているのを感じさせるくらいの猛スピードで突き進む。


 ダークネイビー色の陽・闇と青紫色の(アンチ)陽・闇が激しくぶつかったのと同時に、その周辺の風が吹き荒れ始めた。


「ふふっ」

 ネアは少し意地悪そうに笑ったが、防御することに専念している一翔の耳には入っていない。


「君の頭脳なら絶対に止められる!」

 さっきまで笑っていたネアだが、嘘のように真面目な顔をしている。


(そう言えば、ネアさんの潜在属性は僕と同じ闇属性で、顕在属性は風属性だ。正義を貫く闇属性と大気を操る風属性……そうか!)

 一翔は目を閉じ、正義を貫く気持ちに加えて、大気を操るイメージを脳裏に浮かべる。


(アンチ)陽・闇に風の要素も取り入れれば良いのか!」

 一翔が張っている青紫色のバリアは風を伴う陽・闇の動きを止め、バリアを境に風が跳ね返る。


 風の威力で周りの木々の枝葉が音を立てながら、ざわざわ揺れている。

 次第に、ネアが放った陽・闇は小さくなり、跡形もなく消え去った。


 それを確認した一翔は魔力と念力を出すのを止め、(アンチ)陽・闇は景色と同化するように消滅した。


「やっぱり、わたしの思った通りだ」

 ネアは腕を組んでにっと歯を見せる。


「えっ……?」

 一翔は訳がわからず困った顔をする。


「わたしが出した技は陽・闇だけでなく、風属性の波動系の攻撃魔術も若干含んでいた。よく見抜けたな」

「攻撃を受けた瞬間、風を感じたので」

「君の頭の良さなら止められると思っていた。持ち前の頭脳を利用した魔法戦士として活躍できると思うぜ」

 ネアは男らしい口調で一翔の目を見る。


「そうなれるように頑張ります」

「ああ、良い意気込みだ。今のところ君たち3人の中でカズくんが1番優秀だと思う」

「そう……ですか……?」

 一翔は自信なさそうに首をかしげる。


「闇と風属性が合わさった技を止めたんだよ。そもそも、2種類の属性を組み合わせた戦闘魔術を使いこなせるようになれるのは大学院生以上だ」

 ネアは軽く目を閉じて力強く言った。


 一翔は驚いて言葉が出なかったが、ネアの話を聞いて嬉しく感じた。



「おーい、一翔、一瞬風が強い時あったけど何事?」

 一翔ははっとして声が聞こえた方向に顔を向けると、雅稀が手を大きく振りながら駆け足で向かっていた。


「ネアさんの攻撃魔術を受けた時に突風が吹いたんだよ」

「何だって!?」

 平然と話した一翔に雅稀は目を丸くした。


「カズくんは闇属性と風属性が合体した波動系の技を止めた。君たちにはできるかい?」

 ネアは雅稀と突如この場に現れた利哉に目をやる。


「いや、それは……」雅稀は俯き、利哉は「お前、もうそんなことできんのか!?」と驚愕する。


「まあ……偶然だけど……」

 一翔は恥ずかしそうに頭を掻く。


「これは俺も負けてられんな」

 雅稀は顔を上げて苦笑いする。


「それはこっちのセリフだ!」

 利哉はじろりと雅稀の顔を覗き込む。


 雅稀は目を細めて「まさか、まだ俺をライバル視してんのか?」と訊くと「いや、別に」と利哉は雅稀から目を逸らして鼻歌を歌う。


「嘘ばっかり。そうじゃなかったら俺の顔を覗き込まないだろ」

 雅稀は右手を腰に当てて薄笑いした。


「ばれたか」

 利哉は視線を雅稀に戻した。


「まあまあ。僕は雅稀にしかない才能はあると思うし、利哉にしかない才能もあると思っているよ」

 一翔は謎に張り合う2人をなだめる。


「だと良いけどよ」

 利哉は悔しそうに頬を膨らませた。


「俺にしかない才能って何だろうな?」

 雅稀は左手で顎を支えるように少し考える姿勢をとった。


「そういうのは、これから模索すれば良いのよ。対戦や戦闘を経験していくうちに自ずとわかる時が来るわよ」

 メイリアは右手の人差し指を立てる。


「模索か、面白そう!」

 雅稀は胸の前で軽く握り拳を構えた。


 利哉は本当か? と訝しげな面をしている一方で、一翔は納得したように深く頷いた。

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