02-02 束の間の休息
「いただきまーす!」
昼食を摂り終えた雅稀たちは369号室でかき氷を頬張る。
「やっぱ夏ってなったらかき氷は欠かせんな」
利哉は嬉しそうにブルーハワイのシロップが掛かったかき氷をスプーンですくう。
「天蒼星にも季節ってあるんだな」
雅稀は意外だなという表情を浮かべる。
「地球と似ているのかもね。今度天蒼星やその周りの天体について調べてみよう」
「良いな。一翔がそう言うと俺も興味が湧くな」
雅稀はかき氷を口に運ぶ。懐かしの味が口に広がる。
「でもよ、期末試験が近づいているんだぜ。そっちに集中した方が良いんじゃね?」利哉は不満そうに雅稀に視線を送ると「たまには気分転換も大事だろ」と苦笑いする。
「僕らが現在生活している星だよ。銀河系でいう太陽が、ここの世界では恒陽って言っているのだとか、天蒼星の全体図がどうなっているのかとか、知っておいた方が良いと思うよ」
一翔は視線だけ利哉に向け、スプーンでかき氷とシロップをかき混ぜる。
「そう言われるとそうだな……」
利哉はスプーンから手を離して腕を組む。
「おい、口が止まってるぞ。氷が溶けてまうぞ」
雅稀は利哉の行為を見てにんまりする。
「おっと、そうだった!」
利哉は右手でスプーンの取っ手を持って器の中のかき氷を口の中にかき込んだ。
「……利哉っていつもこんな感じだよな」
雅稀は一翔に体を寄せてささやくと、一翔は微笑み、軽く頷いた。
「お前ら、何の話してんだよ」利哉は2人を指すと「いつもこんな感じだよなって話」と雅稀は平然と事実を語る。
「ま、まあな」
利哉は恥ずかしそうに笑って頭を掻いた。
かき氷の器を洗い終え、3人は再びソファーに座った。
その直後、どこからか聞き覚えのある声が聞こえた。
――今からわたしたちのところに来て――
「この声って確か……」
雅稀は目を細める。
「間違いなくネアさんの声だよ。低くクールな声色をしている。間違いない」
一翔は左耳に手を添えたまま耳を澄ます。
――よくおわかりで。行くよ――
その声が耳に入った瞬間、雅稀たちは突如意識を失ったように目前のテーブルに突っ伏した。
――***――
雅稀は目を開けると、反逆者3人組と会うお約束の場所にいた。
空を見上げれば木漏れ日が揺れ動き、周りは木で生い茂っている。木々から差す光は地面を白く照らしている。
「ネアさんから僕たちを呼ぶって珍しいですね」
ここに来て最初に言葉を発したのは一翔だった。
雅稀の右側には一翔、利哉の順に立っており、視線を正面に向けるとメイリア・ルーツとセルラ・ゼノン、ネア・ファドルフが剣を右手に持った状態で立っていた。
「そうね。わたしたちから君たちを呼んだのは、夜中に君たちをフォール=グリフィンの拠点へ連れて行った日以来かな」
ネアはクールな眼差しを一翔に向ける。
「今回は……何でしょう?」
一翔はネアに目を向けられ、体中に緊張が走る。
「君たちに波動系の戦闘魔術を伝授しようと思ってね」
「えっ、波動系って後期に習う予定ですが……」
ネアの波動系という単語を耳にした利哉は冷や汗をかく。
「君たちが赤階級を獲得したら学外へ出れる。もし外出中にフォール=グリフィンの連中と遭遇して、波動系の技を放たれたらどう対応するつもりだ?」
ネアは眉をひそめて利哉を睨みつける。
「それは……」
利哉は言葉を失う。
「言っとくけど、大学の講義より先回りして技を伝授するからそのつもりで」
メイリアは一歩前へ踏み出し、
「あたしの知る限り、GFP学院生は波動系の戦闘魔術が得意としているみたいだし、大丈夫だよ」
と左手の人差し指をピンと立てた。
「ただ、その前に、物理系と砲弾系の技がどれくらい上達したか、見させてもらう」
セルラは左手を広げて、例の藁人形を3個召喚し、雅稀たちの目の前に立ちはだかる。
雅稀たちは魔術で右手から剣の姿を現し、それを前方へ構えた。




