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【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第1章 GFP学院と因縁

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01-39 目先と先行きの目標

「じゃあ、今回はここまで。肉体に戻った後も練習するんだよ」

 ネアは右手を腰に当てる。


 雅稀たちは基本技の習得に熱中していたあまり、肉体を脱いだ状態であったことを忘れていた。


「本当に、さっきのようにできるんでしょうか……?」

 自信のない声で尋ねる雅稀にネアは

「案ずるな。魂が覚えているから」

 と雅稀を見つめる。


 メイリアは頭上の木漏れ日を眺めてから視線を雅稀たちに戻して

「肉体のある場所へ返すわよ。あんたたちが赤階級(ロドゥクラス)になるまでは、今日のように会わせて練習に付き合うから」

 と両手を開いて伸ばす。


「あっ……」

 雅稀は何かを言い出す前に視界が真っ白になった。


  ――***――


 雅稀は布団から勢いよく体を起こした。

 辺りを見渡すと学生寮の寝室にいることがわかる。


(何か、夢でも見ていたような……)

 雅稀は寝ぼけた目で時間を確認すると、18時だった。


 思わず飛び上がって左へ顔を向けると、利哉と一翔が苦しそうな顔をして眠っている。


(半日以上寝ていたのは俺だけじゃないのか……)

 雅稀は不思議な気持ちを隠せないまま、ベッドから降りて背伸びをしながらリビングへ向かった。



 支度が終わった頃、利哉と一翔が寝室から出てきた。


「さっきまで苦しそうな顔をしてたけど、大丈夫か?」

 雅稀は寝ぼけた声で2人を心配する。


「まあ。オレ、変な夢見ちまってよ」

 利哉はソファーに腰を下ろす。


「お前もか。実は俺も妙な夢を見たんだ」

 雅稀は手を組んで視線を落とす。


「僕も夢を見たけど、女の人3人に会ってフォール=グリフィンの拠点へ行き、そして物理系と砲弾系の攻撃と防御魔術の練習をしていた」

 一翔も利哉に続いてソファーに座った。


「あっ! 一緒だ!」

 雅稀と利哉は同時に一翔を指す。


「確かあの時は肉体を脱いで魂だけの状態だったよな。覚えているもんなんだ……」

 雅稀は胸に右手を当てる。

 意識はあるし心臓の鼓動も感じる。


「フォール=グリフィンの拠点に行ったのは良いけど、誰がGFPを組み込んだかまでは聞き出せなかったな」

 利哉は腕を組んで俯く。


「誰がその魔術を掛けているかまで特定できれば標的(ターゲット)が絞れるのにな」

 雅稀はため息をつく。


「うん。でも、誰の仕業か特定できたとしても、今の僕たちの実力では勝てないよ」

 一翔は悔しそうな目つきで白い袖口を見つめる。


「それはオレもわかってるけど、何か悔しいなぁ……」

 利哉がそう言ったあと、少しの間、3人に沈黙の空気が流れた。



 20秒程経って、雅稀は思い出したかのように口を開いた。


「そう言えば、メイリアさんって人が赤階級(ロドゥクラス)になるまでは魂だけの状態で会わせて練習に付き合うって感じのこと、言い残してた記憶が……」

「ああ。オレも聞いた。あの人、オレの負けず嫌いの性格に火を点けに行くから、大変だったんだぜ」

 利哉は後頭部に手を組んで苦笑いする。


「肉体ではなく、魂が大変だったんだ」

 一翔も利哉につられて笑った。


「俺に抜かされるぞって言われたのか?」雅稀は利哉の顔を覗き込むと「フォール=グリフィンどころかマサに勝てないわよ! って」と利哉はメイリアの甲高い声を真似するかの如く、裏声を発する。


「そんなこと言われてたんか」

「おう。何でかは知らんけどな」

 利哉は雅稀の笑う顔を見て引く。


「とにかく、今は期末試験で合格して赤階級(ロドゥクラス)を取るところからだね」

「ああ。一翔の言う通りだ」

 雅稀はやる気のある表情をした。


 利哉はやれやれと言わんばかりに目前に設置されているテーブルに目をやる。


「あれ? こんなメモ用紙あったっけ?」

 利哉は見覚えのないメモ用紙を手に取る。


 一翔は手を差し出して利哉からメモ用紙を受け取り、書かれている内容を読み上げた。


「わたしたちに修業をつけてほしければ、念じた時点で肉体から魂を分離させる。君たちが赤階級(ロドゥクラス)になったら直接会わせてやる。それまでの間は魂に叩き込ませる。――反逆者」


「反逆者って、メイリアさん、セルラさん、ネアさんの3人のことだよな?」雅稀は訊くと「その人たちに違いない」と一翔から答えが返ってきた。


「だよな。全く、フォール=グリフィンを脱退したら反逆者呼ばわりされるって、ひどい奴らだな」

 雅稀は腕を組んで『反逆者』の文字を目に焼きつける。


「一刻も早く、魔法戦士としての技を身につけようぜ! 早速、晩飯を食って訓練棟で練習だーっ!」

 利哉は飛び降りるようにソファーから立ち上がり、出入り口のドアへ小走りする。


「晩飯ってまだ19時来てないぞ」

 雅稀は彼を追いかけるようにドアへ向かった。


 一翔はメモ用紙をテーブルにそっと置き、いつもの歩調でドアへ向かった。




 グリフォンパーツ学院大学へ入学した日に、前世は魔術界(ヴァール)で罪を犯した罪人であることを聞かされた。


 俺たちが前世で何をしたかは知らない。


 本来なら、魔術を使えないまま非魔術界(ル=ヴァール)で一生を送るところを、グリフォンパーツ学院大学を通して魔術を学ばせてもらえることに感謝している。


 しかし、グリフォンパーツ学院大学を滅ぼそうと暗躍している連中がいる。


 何らかの因縁が関係しているのかもしれないが、グリフォンパーツ学院大学やそこに通う学生と教員の命を守るために、俺たちは誰よりも強くならなければならない。


 打倒! フォール=グリフィンに加え、虹彩の色を決める遺伝子の上流にgfp遺伝子を組み込んだ張本人は誰かを特定し、緑に光る目を解決する。


 そして、俺たちの前世は何をした罪人なのか。


 これらの目標を達成するために、俺たちはたとえ困難な壁が待ち受けていたとしても、立ち向かうと決心した。

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