表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第1章 GFP学院と因縁
4/95

01-01 入学式

緑に光る目を目の当たりにした雅稀たちの大学生活が、たった今始まる……!

ブックマークやいいねで応援してくださると嬉しいです!

 夜が明け、GFP学院に入学する1年生はキャンパス中央部に位置するドームの中にある式典会場に集まり、用意された木製の長椅子に着席する。

 男子学生はワイシャツに黒地のテーパードパンツ、女子学生は白地のブラウスに黒地のスラックスを履いている。

 それらの上に、左胸に縫われた校章と、折り目に沿って描かれた金色のラインを施したローブを着用して静かに前方を見つめている。


「只今より、フェリウル歴8879年4月1日、入学式を開会します」

 10時。女性のアナウンスで入学式が始まり、学長が登壇する。


「学生の諸君、グリフォンパーツ学院大学魔術学部へのご入学、おめでとうございます。魔術研究学科540名、魔法戦士学科600名、手品学科360名、そして占術学科220名が入学され、心からお祝いを申し上げます。私は本学学長のバルス・ヘリアーヌ・ギーランと申します」


 ちぢれた長い白髪と少しうねりのある白髭を伸ばし、黒の袴をイメージしたローブを着用しているギーラン学長は、最初の挨拶を優しそうな表情で述べ、規則正しく折られた用紙を見ながら続きの言葉を発する。


「グリフォンパーツ学院大学、縮めてGFP学院は魔術を利用する世界――魔術界(ヴァール)の秘境の地に建てられています。この世界で最初に魔術を生み出した人物は、ゼリアザード・フェリウル・ツェルと言われています」


 GFP学院が魔術界(ヴァール)に所在することは、昨晩に一翔から聞いたが、秘境の地に建てられていることや、魔術を生み出した人物がいるところから話が展開するとは、と雅稀の心中は少し驚いている。


 学長は雅稀の心境を探らずに、視線を両手に広げている用紙から着席している新入生に移す。


「ゼリアザードは神なる力を発揮したシャーマンとも言われており、その力により、体に秘められた力を引き出すことに成功しました。その力を魔力と呼び、人々に魔力を引き出し、魔術を使うようになったことが、魔術師が誕生した起源です。以来、魔術を使う人々が住む宇宙空間を魔術界(ヴァール)と名づけたのです」


 学長は再び視線を用紙に戻した。


魔術界(ヴァール)の暦であるフェリウル歴は、ゼリアザードのミドルネームに由来しています。彼が亡くなった年をフェリウル歴1年としています。本学はフェリウル歴8000年に建てられ、来年に創立880年を迎えます」


 その後、ギーラン学長は衝撃の言葉を口にした。


「本学に在籍している学生は、前世で魔術を悪用した罪人の生まれ変わりです。本来なら、魔術の使用は許されず、魔術を使わずに生涯を送るはずだったのです。その人たちが魔術を使わない世界――非魔術界(ル=ヴァール)に存在しています。ところが、この世に生を授かる前に、正しく魔術を扱い、世のため人のために尽くす。すなわち前世の贖罪を果たすべく、特別に魔術の使用を許された者が、今ここにいる訳です」


 新入生は全員愕然とした。まさか、前世は魔術を悪用した罪人であっただなんて……と言わんばかりの表情を露骨に出している人が大半だ。


「諸君が本学への入学に意を決した理由は様々だと思います。しかし、潜在的な理由は前世で魔術を使用していた記憶が呼び覚まされ、共感したためであることは全員に共通しているのです。そこで、諸君それぞれが在籍する学科で魔術を極め、世のため人のために貢献して欲しいと願っています」


 最後に、と学長は鋭い眼差しで正面を向いた。


「本学には学科カラーに意味が込められています。魔術研究学科の赤は『熱意を持って研究に励め』、魔法戦士学科の青は『冷静に状況判断できる魔法戦士であれ』、手品学科の黄は『人々を幸せにさせよ』、そして占術学科の緑は『思いやりを持って占術を行え』を意味しています。常にこれらの原点に立ち帰り、学業に勤しんでください」


 学長からの挨拶はこれで終了した。


 その後、各学科のオリエンテーションが実施されるアナウンスを聞き、学生らは指示された場所に移動し始めた。



「意外に式が短かったよな」

 雅稀は両手を組んで頭の後ろに当て、青空を見上げる。

 雲が何一つ無く、太陽のような恒星、恒陽(ロギシュム)が白い輝きを放っている。


「にしても、前世が罪人だったとは思わなかったなぁ……」

 利哉は腕を組んで地面に目をやる。


「まあ、ここで僕らが会ったのも(えにし)だと思うし、そういう運命を背負って生きていくってことだったってことだよ」

 一翔は雅稀と利哉に親指をグッと突き出す。


「そうだな。俺も頑張ろう」

 雅稀は複雑な気持ちを抑えて力強い眼差しを一翔に向けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ