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【第3章完結】蒼の守護と碧の命運  作者: 河松星香
第1章 GFP学院と因縁

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01-13 創設者――ディールス・ルチア

 昼休憩を終えた3限目、グリフォンパーツ学院史の講義だ。


 学生寮の中にある食堂で、玄米ご飯とベイクドビーンズとマッシュルーム、ベーコンを炒めたランチプレートが昼食として出た。

 午前中の講義は3人の中で一翔が1番目が冴えていたが、昼食を摂った直後だからなのか、雅稀と利哉と揃って眠たそうにしている。


 3限目開始のベルの合図と共に、教室の扉が開き、担当教員が入室した。


 髪の長さはミディアムでウルフレイドの髪型、黒縁の丸眼鏡を掛けた男性……どこかで見た記憶が……と雅稀ら3人はお互い顔を見合わせる。


 教壇に立つ男性教員が学生へ体を向けると、昨晩に出会ったロザン准教授だった。


 先生! と思わず叫びそうになったが、600人もいる教室では流石に声が出なかった。


 そんな彼らへ視線を送ることなく、ロザン先生は口を開いた。


「今日からこの講義を担当する、マーシャル・ディールス・ロザンです」


 雅稀らが昨日会った時に聞いた声と同じ、冷静で真面目な声色をしている。


「グリフォンパーツ学院大学、略してGFP学院大学は前世に魔術界(ヴァール)で魔術を悪用した罪人の生まれ変わりで、かつ世のため人のために尽くすという天命を持った人が、この大学に在籍しています」


 それは一昨日の入学式に、ギーラン学長から同じ話を聞いた。


「GFP学院大学はどのようにして誕生したのか。創設後に幾度の災禍に見舞われながらも、879年が経過した今でも存続しているのは、当時の学生や職員がどのような思いで行動したのか。この大学の歴史について学ぶのが、グリフォンパーツ学院史です」


 ロザン先生はパチンと指を鳴らすと、教卓の上に黒板と同じ大きさのスクリーンが現れた。


「今日はGFP学院大学の創設者、ディールス・ルチアについて講義をします。最近まで、ルチアは大シャーマンと言われ続けていたが、予言者であったことが後の研究で判明した」


(そんな話、図書館で読んだ論文にも書かれていたし、先生からもちょっと聞いたな)

 利哉は昨晩の出来事を思い出しながら、日本から持ってきたノートを広げ、シャープペンシルを右手に持つ。


「ディールス・ルチアはGFP学院大学に在籍する者や卒業生、そこに勤める我々職員にも語り継がれてきたが、未だ不明な点もある。現時点で明らかになっていることを、魔術で再現した映像を使って講義する」


 ロザン先生の『魔術で再現した』と話を聞いた学生は少し騒ぎ始めた。魔術で当時の再現映像を作ることができるのか! とお互い驚き合っている。


 教卓の上に浮かぶスクリーンの映像が動き始めると、若干騒がしかった空気が一気に静まり返った。


  ――***――


 時はフェリウル歴7995年。後のGFP学院大学の創設者となる、若かりし頃のディールス・ルチアが映像に映っていた。


 2限目の講義で見たゼリアザード・フェリウル・ツェルと顔の輪郭と眉毛の形は似ているが、唇が彼より少し厚い。目を閉じているため、開けた時の大きさは不明だが、その横幅はゼリアザードより小さい。


『ルチアはフェリウル歴7965年、天蒼星(アマネル・ネオ)の北西に位置するセラフィム大陸に生まれ、大シャーマンだったと長年良い伝えられていました』

 スクリーンから音声が発せられた。


 この時のルチアは30歳。白い布が敷かれた木製のベッドに横たわり、熟睡している様子が映っている。


 スクリーンの画面一面が白くなり、奥から白い羽を広げた天使が小さく映る。天使は眩い光に包まれており、はっきりとした姿は見えない。

 その天使がルチアに何かを見せているのか、ルチアの脳裏は雅稀らの故郷である地球が描かれていた。


 地球で生きている人々の中には、肉体の内にある魂が白金色に輝いている様子がルチアの目には見えていた。


『白金色の魂はすなわち――』


 ルチアの声だろうか、奥ゆかしさを感じる声色だ。


『魔力を持つ人が天蒼星(アマネル・ネオ)以外に生きる人にも持っているのか!?』

 ルチアは空から点在する白金色の魂を持つ人々に目を張る。


『汝に見せている世界は非魔術界(ル=ヴァール)にある地球という惑星なり』


 天使の声がルチアの耳に入る。雄々しい声だ。おそらく男性の天使なのだろう。


 何だってぇ!? と言わんばかりにルチアはのけ反る。


非魔術界(ル=ヴァール)は魔術を使わない人が住む世界だったのでは――』

『そうじゃ。魔術界(ヴァール)で魔術を悪用した者は、その報いとして非魔術界(ル=ヴァール)に生まれ変わり、魔術を使うことなく生涯を送ることが、天界の掟じゃ』


 ルチアは呆然と非魔術界(ル=ヴァール)に生きる人々を見つめる。自身も魔術を悪用すれば、来世は魔術が使えなくなることに驚きを隠せなかった。


『しかし、そういった彼らの中には、生まれ変わる直前に世のため人のために尽くすと約束した者が紛れておるのじゃ。ディールスよ、人々や世界に貢献する使命を担った者のために、天蒼星(アマネル・ネオ)に教育機関を建てよ』


 その言葉を最後に、ベッドで横になっていたルチアは勢いよく起き上がる。


 辺りを見渡せば、見慣れた木造の個室が視界に入る。さっきまで見た別世界の星や人々の姿は欠片も無い。


『あの雄々しい声は天使様の声、白金色の魂を持つ人々が非魔術界(ル=ヴァール)にいることを見せてくださったのか』


 眠っていた時に見た光景は“神のお告げ”と判断し、ルチアはワイシャツと白いパンツスーツの上に、白いローブを羽織った。

 ローブの襟元と袖口は白を背景に、黄色に光る斑点があしらわれていた。一色で表される魔術研究者や魔法戦士ではないことがわかる。


 ルチアは小屋の外へ出ると、魔術研究者と魔法戦士が計12名並んでいた。


『ルチアさん、本日のお告げを……』

 1人の魔術研究者は両手を合わせ、前後に摩る。


魔術界(ヴァール)で魔術を悪用した罪人の生まれ変わりが、非魔術界(ル=ヴァール)で生活している。彼らの中には世のため人のために貢献する使命を持つ者がいる。そんな彼らのために大学を建てよ、と』

 ルチアは手を後ろへ組み、天使が見せてくれた出来事を淡々と話す。


『魔術を使わない者をこの世界へ呼び出すと仰るのですか!?』

『まあでも、ルチアさんのお告げは外れたことがないからなぁ……』

 ルチアの目前に集う魔術師は驚愕したり、渋い顔をしたりと反応は様々だった。


『皆の者、私の話を聞き給え』

 ルチアの真っ直ぐな表情に、彼らは口をつぐむ。


 ルチアは天使と話した内容を伝えると、彼らは大学を建てることに賛同した。


 大シャーマンだと思われていたディールス・ルチアという人物は、一部の人からは“神のお告げ”を伝える者として尊敬されていた。

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