6.街でのお買い物 ①
少しずつ登場人物が増えてきます。
「初めまして、異世界の人!私はこの人の部下で、
副団長のフィンレー デラクールと申します。」
「おっ!フィン、ちょうど良かった!この子はサーラ、異世界からの"迷い人"だ。ウチで面倒見る事にしたからそのつもりでいてくれ!
これから街に買い物に行って来るから、あと頼むなっ」
「よっよろしくお願いします…その…知らない事ばかりでご迷惑をおかけするかも知れませんが…早く覚える様頑張りますので、ご指導ご鞭撻の程…よろしくお願い致しますっ!
それとっ私こんな格好してますが…23歳の性別女です」
団長の誤解も解くべく、勢いで挨拶をした幸来は、二人に凝視され俯いてしまった…。
驚きのあまり、二の句が継げない団長と幸来の様子から全てを理解した優秀な副団長は…
「ズボンを履いているからと、誰かデリカシーのない奴に勘違いされたのですか?大丈夫ですよ貴女はどこからどう見ても女性にしか見えない。
まぁ…年齢については些か驚かされましたが…まさか団長が子供扱いしてしまったとか?」
幸来がコクリと頷くと、副団長のフィンレーは大袈裟に大きなため息をついた。
「いやっだって、確かに礼儀正しいとは思ったんだぞ?しかしウチのチビ達と背も変わらんしだな…その…
すまないっ!サーラ、気を悪くしただろうか?あのな…決して悪気は無くてだな…」
「ふはっ!大丈夫ですよ、別に私…怒ってなんかいませんから!むしろ誤解させてしまって申し訳無くて…
なので遠慮なく仕事を申し付けて下さいね!」
前髪と眼鏡でわかりにくいが、笑顔でそう言った幸来の頭を…また無意識に撫でようとするマティアスを"団長!"と声を上げてフィンレーが止める…
二人の性格や関係性が垣間見えて、幸来の構えていた気持ちも軟化した為、先程話していたように街へと買い物に出かけた…
馬車から見える賑わう街並みと、活気のある人々に圧倒されつつも…この国の習慣や常識を習いながら、最初に洋服を揃える事にした。
買い物をするにしても今の格好では目立ってしまうからだ…
馬車を降りて、物価も何もわからない幸来は、キョロキョロと辺りを見回しながら、トテトテと付いて行く。その様子を見ながら"後でゆっくり観てまわろう"と優しく団長が声を掛けた。
急に恥ずかしくなった幸来は、
「いえ、大丈夫です!団長様はお忙しいでしょうから、買い物が終わり次第すぐに戻ります。」
と答え…『『あああ…今の絶対別の言い方があった筈!何でこんな可愛く無い言い方しか出来ないんだろ…』』
と落ち込んでいると、団長は全く気にして無い様子で、
「ウチはフィンが優秀だから、ゆっくりで大丈夫だ!
あぁ、さっきの副団長の事な、あいつは俺みたいにガサツじゃ無いし、信頼出来るぞ!
さぁ、着いた。ここのオーナーは知り合いだから、色々と相談するといい…俺じゃ女物はわからないからな。」
そう言って店の扉を開けてくれた団長にお礼を言って、店の中に入ると…中から野太い?…ハスキーボイスの…体格の良い女性??が出てきた。
「ちょっと〜、マットじゃない!久し振りに見たわ〜!あんたが妹以外の女の子連れてるなんて、何事よ〜!」
「ルイ!この子の一式見繕ってくれ!
サーラ、こいつはルイスと言って俺の悪友なんだ。
根は良い奴だし、男だが…女物の服屋もやってて安心して任せられると思ったんだが…嫌だったか?」
「いえっ、ごめんなさい…ビックリしただけです…。
幸来と言います、よろしくお願いします。」
「もうっ、マットったら!私の事はルイスじゃなくて、ルイーズと呼んでって言ってるのにっ。
サラちゃんって言うのね?アタシの事は…ルイーズお姉さんと呼んで頂戴、フフフ…
ここはね女性専用のブティックだから安心していいわ、元はクチュール専門のお店だったんだけど、ありがたい事に…今ではオートクチュールから既製服まで取り扱ってるのよ!貴女はどちらがいいかしら?」
「あの…こちらの世界のお洋服の事は分からないので…お任せしても良いですか?出来れば動きやすくてお手頃な服を2〜3着と、下着をと思っているのですが…」
「あらっ!謙虚なのね…支払いならマットに払わせるから、遠慮しなくても良いのよ?宝石のついたドレスはどうかしら?」
「すみません…水仕事や汚れ仕事でも大丈夫な様に、普段着で…いいんですが…。こんな素敵な高級店でこんな事言ってすみませんっ!」
「まぁっ!まぁっ!なんっ……っていい子なのかしら!気にしなくていいのよ、お姉さんに全部任せなさいっ」
「おいっ!サーラはこう見えて23歳なんだ、子供扱いするんじゃない。」
マティアスが、自分の事は棚に上げて悪友を注意する…
「何ですって!!!アタシ達と変わん無いじゃないっ!あんたの妹関係だと思ってたのに…一体どこで……ってもしかして、あなた迷い人なのかしら?」
ルイーズが勢いよく幸来に近付き、まじまじと観察している。そこをマティアスが自分の身体を割り込ませ…ルイーズを幸来から離して説明をした。
「ああ、さっき魔法陣に現れたんだ…聖女様の召喚から一日経っていたから、誰も発動はさせてはいなかったんだが…不思議だろう?」
「なるほど…そう言う事ね……。
確かに魔法陣に現れたのは気になるわ…それで?あんたの所で面倒見るの?」
「ああ…それが一番安全だからな!王子の許可も取っている…。下手したら罪人として裁かれる所だったんだ」
「なっ!……たくっ、あの王子は相変わらずみたいね…
サラさん、怖い目に遭ったわね…でも心配しないでいいわよ!これからはアタシに何でも聞いて頂戴っ!」
と…幸来の経緯も伝わり、心強い?味方も増え…取り敢えずの一式を揃えて貰い、今着ているパンツスーツも着替えて街に繰り出した。
ちなみにマティアスが支払う予定だったが、パンツスーツの分でお釣りが出るほどの高値で引き取って貰ったので、寝る時用の服と大きめのバッグを購入してルイーズの店を後にしたのだった…。
クチュールは 仕立て、縫製
オートクチュールは オーダーメイド、高級仕立服
簡単ではありますがそんな意味です。( ˙꒳˙ )ノ