3.旅立ち
「だって…私……人付き合いが苦手と言うか…存在感も皆無だし…目立ちたくないし…そもそも実は自分の事しか考えてないし、開かないだけで口も悪いし、出さないだけで悪態もつくし…
見た目程大人しく優しい人間ではないんです…。
自分の事を見た目で判断するなっ、決めつけるな!なんて怒るくせに…私だって心の中で他人の事を貶して、悪口言って…そのくせ羨んだり妬んだりしょっちゅうで…
とにかくっ煩悩まみれなんです!そんな浅ましい人間が聖女様だなんて…」
〈ん?それの何が悪いの?むしろちゃんと自分を把握して分析してるんだから…逆に?素直なんじゃない?
そもそも人間の考える事なんて欲にまみれてて当然だと思うけど…違う?
まぁ色々考えちゃうのは分かるし、時間も必要なのかな?でもあんまり気負わないでいいよ!君はそのままでいいし、なんか新しい事始めたかったんでしょ?ちょうどいいんじゃない?〉
幸来…心の声
『『そんな………そう…ね…どうせ死んじゃったんなら、ウジウジ考えても仕方ない…か…。
しっかし、私の人生呆気なかったな〜。まさに美人薄命ってやつだな、うん。ならこれも仕方なしだ。
でもこの神様…なんて言うか…命の重みを感じない話し方って言うか…な〜んか全体的に軽いって言うか…もうちょっと荘厳な光の中で、「お主は残念ながらも一度目の生を終えたのじゃ」とか言いそうな感じなのに…』』
〈ブハッ!ごっごめんね、フフ、フ、君のイメージと違って…こんな神様で…ハー、語尾にじゃって…ヒーヤバい!どんなイメージだよ…。しかも、自分の今後の事で悩んでんのかと思ったら…プークスクスクス…美人薄命って…いや、別に君が美人じゃ無いとか、そんなんじゃなくて…楽観的過ぎて…ハハッあーおもしろっ!
いや〜ごめんごめん!ほらっ僕達って娯楽が無くてさ、それに命の価値観も人のそれとは違うから…どうしてもね?決して軽く扱ってる訳じゃないから、安心して。〉
ひとしきり笑って、涙を拭っている神にそう言われた幸来は瞬時に理解した。思考を読まれたのだと…神が相手なのだから、丸裸も同然なのだろう…。だがしかし、己の思考の浅さに赤面してしまう。
〈フフフ、幸来は可愛いね…。君となら楽しくやっていけそうだよ!とても楽しみだ!
さぁ、君の新しい人生の門出だ!とびきりのスキルで応援するからね!まずは君を産む親を決めないとね!〉
「あっ、あの…神様!…私…このまま行けるならこのまま移動したいです…。一緒に亡くなった子もそのままだったみたいだし…知り合いになれるかは別として…慣れ親しんだこの体のままがいいかなって…その…赤ちゃんからは正直面倒くさいって言うか…」
〈オッケオッケー!それでもいいよ!じゃあ向こうで困らない様にいくつかスキルを決めようね!
ん〜何がいいかな…?とりあえず、聖女の基礎知識と最低限の治癒の力はオプションで付いてるから、向こう行ってもすぐに対応出来るはずだよ!言葉も文字も問題ない。それ以外で希望ある?〉
『『言葉や文字が大丈夫なら大抵の事は何とかなるわ…聖女様の事も基礎知識を貰えるなら…おいおい学べばいいとして…となると、向こうで怪しまれないかよね…いきなり曲者だー!って囲まれたら……
そもそもどんな世界に行くのかしら?…聖女様というぐらいだから、ファンタジー?魔法とかも?王子様とか騎士団とか…え、どうしようワクワクしちゃう!
武器は剣かしら日本刀も美しいけど西洋の剣にも興味あったんだよね〜』』
「神様?笑ってるところ申し訳ないんですが、聖女様…私は自分の怪我とか治せますか?向こうに着いてすぐ何かあった時の為に知っておきたくて…」
〈クククッ、うん、いいね!前向きで適応力も抜群だ!真綿に包まれるのを望むのではなく、危険を想定し…ピンチに立ち向かう度胸もあるなんて!ホント男前だね!
聖女はね階級というか…どの職業もそうだけど、ランクがあって、自らレベルを上げるシステムがあるんだけど…本来それを本人に伝える事はないんだ。
新しい世界でも臆せず自分を信じて、自らと向き合うとそのうち気付くんだよ…そして更に向上心があればレベルが上がって、ランクに合わせた力が手に入るって訳。
聖女のオプションも、簡単な傷や病気を治す治癒の力でしかないけど…頑張り次第で色んな力が手に入る様になってるんだ!〉
「神様?本来本人には伝えないんですよね?それなのに私に話していいんですか?」
〈え?だって君オプションとは別に、付与スキルを99個も選べるんだよ?最初から自分の怪我や病気治すのをスキルとして付けれるし、何でも欲しいままだよ?〉
「んーーー、分かりました!最初は自分の怪我とかは治せないって事ですね!何をすればレベルが上がるのかはわからないけど…向こうに行って精進しますね!
スキルは危険を察知出来る能力を下さい。探索やサーチ能力みたいなやつも便利そう!
あとは…神様とはいつでも会話出来ますか?」
〈了解!自分でレベル上げするんだね?フ、君らしい…それも面白そ…ゲフンゲフン…
そうそう、私と君は繋がっているから…君が拒まない限り大丈夫だよ!
スキルを使いたい時は念じるか、発動に応じて使いやすいサインや言葉を決めてもいい。自由な発想で自分のものにするんだ…いいね?〉
「はい、色々とありがとうございました!向こうに行っても慎ましく生きて行きます。
神様達が望む様な働き…聖女様の仕事が出来るかは自信がないけど…もう一人いるから大丈夫ですよね?
…それじゃあ行ってきます!」
〈幸来…君の未来に幸あれ……頼んだよ…〉
神の祝福を受けながら…とても晴れやかな顔で異世界へと旅立った幸来。
そして新しい人生?がいよいよ始まるのであった…。
次回から異世界へと降り立ちます。
神様は幸来をどこへ、どの様な状況で送るのか…