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6,武闘大会

「ん〜よく寝た〜」


朝の6つの鐘がなった時、俺は目を覚ました

昨日はかなり早く寝たからスッキリだ

結局、昨日の特訓ではリトが模擬戦を見てるだけというのも退屈だろうから街でも見てきたらと言われた

仕方が無いので街を散策し、トラブルに巻き込まれる訳だがそれはまたの機会に話そうと思う

あ、もちろん迷子はその内に入ってないぞ?

俺が迷子になるのは確定事項なんだからな


「ったく、魔王もなんで助けてくれねぇんだ?いつも口うるさく言ってきたくせに最近ちっとも出てこねぇ。魔王の加護は残ってるから死んではないと思うが…」


そうそう、最近魔王が俺に話しかけてこなくなった

とは言っても2日前には話してる訳だが、今まで1日30回以上は話しかけてきてたことを考えるとちょっと気になる


「ま、俺みたいなのがそんな悩んでも仕方ねぇよな〜」


脳筋は脳筋らしく真っ直ぐ突き進みゃあいいんだよ、うん。


「お〜い、英介起きてるか?」

「ああ、起きてるぞ〜」


今日もリトが起こしに来たみたいだ


「お、今日は起きてたか。さすがに大会当日だからな、エイスケも気合入ってるみたいだな」

「もちろんだ。絶対優勝しようぜ」

「おう!お前と組めば絶対勝てるよ!俺も全力で行くぜ」


盛大なフラグが立ったような気もするが、気にしなけりゃ大丈夫だろ


「俺らが出るのはBブロックだ。武闘大会自体は鐘8つからだからそろそろ飯食って準備しよう」

「了解〜」


よぉし、いよいよだ

不思議と緊張することはなく、なんならどんな奴と戦えるのかワクワクしてる

…あれ、俺こんな脳筋キャラだっけ?

…ま、いっか


「飯だ飯だ〜」


-----------------ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なあパティール。お前もこれ使ってみないか?」

「ん?なんすかこれ」

「最近ここに入ってきた薬でな、一時的に身体能力が上がるんだが、副作用がないって評判なんだよ」

「え〜、そんなあからさまに怪しいものいらないっすよ。だいたい、そういう系の薬は使用禁止されてるじゃないっすか。武闘大会で使ったらカズさんブチ切れっすよ」

「あんな脳筋領主、簡単に騙せるね。お前だってさ、あの時の景色、もういっぺん見たいだろ?」

「う〜ん、でもやっぱり不正はダメじゃないっすか〜?」

「いいから、とりあえず持っとけ。使わないなら後で俺に返してくれりゃいいからよ。それじゃな」

「あ、ちょっと待っ…はあ、どうするっすかね、これ」


不正は駄目だとわかってはいても人は目先の宝を見逃したくは無いものだ

怪しげな薬を持つパティールの脳裏には、優勝メダルを掲げて闘技場の中央に立つ自分、"過去の栄光"が浮かんでいた。


-------------------ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ワァァァァァァァァァ


「さあ、続きましてはBブロック!期待の新星が続々と登場します。彼らはどんな戦いを見せるのか!そして!歴戦の戦士たちはその腕を見せつけられるのか!今、戦いの火蓋が切って落とされます!」


もの凄い熱気だ

観客の声が大きすぎて地面が少し揺れてるよ

やっぱりAブロックの戦いが凄かったからだろう

あんな試合を見せられたら誰だって興奮するだろうな

Aブロックは魔法使いがほとんどおらず、力と力のぶつかり合いのような試合だった

そんな中で勝ち抜いたのはゴリマッチョじゃなく、まさかの魔法剣士だった

小柄な体で筋肉ダルマ達をばたばたと倒す姿は圧巻だった

なんであんな簡単に倒せたんだろ

薄ら魔力を剣に纏わせていたのは見えたんだが…

ま、後で戦って見ればわかるか


「それでは参りましょう!武闘大会予選Bブロック!開戦!」

「っしゃあぁぁぁ!やるぞ!」

「うおおぉぉ!」

「やっちまえー!」


なんか不良の抗争に紛れ込んだみてぇだな…


「なんだぁ?ビビって動けねぇのかぁ?ラッキー!1人目いただき〜!」

「おい!エイスケ!ボーッとするな!」


ん?何をそんなに慌ててんだ?

流石にこんな奴にやられねぇよ?


ゴスッ

「ブホァッ…!」

「うわ、めっちゃ飛ぶなぁ。てか防御しろよ、来るの分かってただろって」


そんなに強く殴ってないから防げると思ってたんだけどな

魔物の方がまだ手応えあるぞ

まあ結局ワンパンだけど


「うわぁ…心配した俺が馬鹿だったな。だが、油断はするなよ?」

「当然」


そう言って俺はまた1人殴り飛ばした

そんな強く殴ったら死人が出る?

それが死なないんだよな〜

この闘技場には特殊な魔法が常にかけられているらしく絶対に死ぬことは無い

死ぬほどのダメージを受けると気絶して治療室に強制転移させられる

気絶してから飛ばされるまでのダメージは無効になるらしい

だから、もし俺が本気で殴っても問題ないという事だ


「いや〜、楽しいね〜なんの気兼ねもなく体を動かせるってのは」

「おい、なんかあいつ強くねぇか?」

「ああ、あんまり近づくと巻き添えくらいそうだ。離れとこ」

「逃がさねぇよ〜?」

「うわあ!」

「いつの間に…がはっ」

「さあ、どんどんいこ〜!」


ワァァァァァァァァァ

「さあさあさあ、予選Bブロック!早くも半数が脱落!魔人の青年が次々と相手を倒していきます!恐ろしい速さだぁ!おおっと、そこに近づくのは兎人の剣士、"俊足のフラット"〜!」


「ねぇ君、僕と手合わせして貰えないかい?」

「ああ、いいぜ!俺は英介。見ての通り魔人さ」

「僕はフラット。俊足のフラットさ」

「いいねぇ。スピード型の翻弄は強ぇからなぁ。ちょっとは楽しめそうだ」

「僕も君のパワーが気になってね。それじゃ、先手はいただくよ」


そう言うとフラットは俺の前から姿を消した。いや本当に消えたのではなく、俺の目がフラットの動きを追えなかったのだ


「まじで速いな。俺の目で追えないのなんて初めてだ」

「それは光栄だね。でもまだまだ上げるよ?」


まるで風のように、フラットは俺の周りを高速で移動し、斬る

たった数秒のうちにガードしていた俺の手足は切り傷だらけだ


「なんで切り傷ついてんだ?そこらの剣じゃ傷一つ着かなかったのに」

「ふふっ、僕の剣の切れ味はそこらの鈍らとは違うよ?」


速さで翻弄するだけじゃなく、しっかり攻撃力もあるのか、厄介だな

だが、それも瞬く間に治っていく

俺の能力のひとつ、"超再生"だ


「君、回復系の能力持ちなのか。僕とは相性が悪いなぁ。でも、攻撃が効かない訳じゃない。僕のスピードで、君の回復速度を上回ってみせよう」


フラットの声があちこちから聞こえてくる

さっきよりもさらに速く、俺の上を、横を、すぐ側を通り抜けていく

そして斬る

単調なその動きも、速さを加えることで逃れることのできない斬撃の雨と化す

全方位からの斬撃は圧倒的だ

傷の数は増え、心無しか傷が深くなっている気もする

じわじわと痛みが大きくなる


「こいつはすげぇ。速すぎて何されてんのかわかんねぇぜ。どう動いても抜け出せるビジョンが浮かばねぇよ」


読心は使えない

大会の規定に反するからだ

精神操作も然り

眷属を出してもすぐ切り刻まれて終わり

超再生と甲殻のおかげで耐えているが、なかったらとっくに血だらけだろう

なるほどな、今実感したよ

こいつは強者だ


「どうだい?少しは、あせってきたかな?はあ、はあ、まだまだ、いくよ」

「やめとけ、フラット」

「え?」

「お前の強さはよく分かったよ。確かに素の俺じゃお前を捉えられない」

「何を……!?」


俺は魔力変換と思考加速を使う

よし、フラットが視える

だが、今下手に動けば最悪手足を切り落とされる可能性がある

今までのフラットの動きには癖がある

一定の周期でほんの一瞬斬撃が止む瞬間があるのだ

おそらく連続で高速移動する時間には限界がある

種族能力なのか何なのかは分からないがクールダウンが必要なのだ

フラットの動きを見ろ…

あいつがの斬撃が止まった瞬間に動く!


斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬…

今だ!


俺はフラットが少し下がった一瞬の間に剛腕を使って地面を殴る

もの凄い衝撃とともに地面が抉れ、砂が舞う


「なっ!?」


すぐさま砂埃の外へ出て、体制を整える


「僕の一瞬の隙を狙っての目くらまし、か。パワーだけじゃなくて機転も利くなんてすごいね」

「お前の方こそ、あの攻撃は強すぎるぜ。だいぶヒヤヒヤしたよ」

「あれを初見で切り抜けられるとはね。でも一度抜けられたとしても次は無いよ。もっと速くなるまでさ」


こいつ、いつの間にか回復してるな

ああ、さっき地面抉った時か

上手く使われたな


「さっきみたいにはならんから問題ないぞ?それにお前、結構キツイんじゃないか、ずっと動いててよ」

「へぇ?でも君だって消耗しているだろ?君もずっと能力を維持してるんだから」


そう言ってフラットは再度俺を剣閃の嵐に巻き込もうと動き出す

しかし、その目が俺を捉えることはもう無い


「悪ぃがな、俺は規格外なんだとよ。お前もさ、常識なんて捨てちまおうぜ」


なぜなら過熱を使った俺のスピードは既にフラットを凌駕し、なお上がり続けている

フラットが俺をとらえることは不可能なのだ

俺はそのままフラットを気絶させようと拳を振り抜く


ガギャギャギャ

「まじかっ!?」


嫌な音とともに慣性でフラットが壁まで吹き飛ぶ

土煙が辺りを埋め尽くす

土煙の中で必死に目を開けると、フラットを飛ばした方向に爛々と輝く何かがあった

それはフラットの持つ剣

刀身に埋め込まれていた宝石だ

ただの飾りかと思っていたがそうじゃ無さそうだ


「おいおい、嘘だろっ!どうして止められるんだよこれを!」

「勘、かな。まさか、はぁ、本当に止められるとは、はぁ、思わなかったけどね」

「だいたい、俺が押し切れてねぇこともおかしいだろ」

「それは多分この剣のおかげかな。こいつは逆境でこそ真価を出す、魔剣って奴さ。さあエイスケ、僕はもっと強くなるぞ!ついてこられるかい?」

「マジかよ!ほんとスピード型とは思えねえしぶとさだな。精神系が使えりゃあもっと楽なんだがなぁ…」


そう、この大会では精神操作系統の能力、魔法は禁じられているため、読心と、精神操作は使えないのだ

理由を聞いたら「領主がな『面白くないじゃん』って言ったんだと」との事

まあ、そうなんだけども!

今この時ばかりは領主を恨んじまいそうだ

ちなみに使ってしまうと医務室ではなく、牢獄に飛ばされる


「ほらほら、押されてるよエイスケ!」


ぐっ、キツい

甲殻を持ってしても防ぎきれねぇ

流石にこれだけの時間複数の能力を維持したことは無い

能力の効果が弱まってるんだ

過熱は長時間使うと体がダメになるからそろそろ時間切れだ

対してフラットの剣は切れ味が格段と上がってる

速さもだ

まだ俺の方が速いが、そのうち越されてしまうだろう

魔力はまだあるが悠長なことは言ってられない

あれ、これ結構まじのピンチ?


「くそっ、まだ予選だってのにこんなところで…!」

「このまま押し切って僕が勝つ!」


フラットが猛攻を始め、俺は消耗していく

俺はフラットを正面で受け止めたが、そのまま押されていく

ここまでかと思ったその時、フラットの腹から刃が突き出した


「っ!」


俺たちは完全にフリーズした

そしてそれは2本、3本と増えていく

フラットと俺はそれをただ見つめていたが、先に動いたのは俺だった

すぐさまフラットを刺したやつをぶん殴る

その時俺の手が獣のようになったのには気づかない


「人の戦い邪魔するたぁいい度胸してんじゃん」


俺の怒りの一撃を受けたそいつは勢いよく吹き飛び、そのまま動かなくなった

周りを見るとさっきの奴みたいなのががどんどん湧いてきている


「なんなんだこいつらは…」


なにか普通じゃない何かを纏っている…


「ぐっ、こんな終わり方になるとはね…」

「フラット!」


俺は思考を止めてフラットに駆け寄る


「とても残念だけど、気づかなかった僕もまだまだ未熟だったってことかな…」

「いや、そんなことは無いさ。お前は俺を十分追い詰めた。今度また戦おうぜ」

「ありがとね、エイスケ…」


その言葉を最後にフラットは転送された


「ったく、せっかくの楽しい気分が台無しだな。あいつらぜってぇ許さん」


ついさっき、リトもあいつらにやられた

なんかやけにタフなんだよな

てか誰なんだこいつら


「おーい、エイスケさーん」


ん?

…おお!パティールが空飛んでる


「パティール!」

「大変なことになったっすね。大丈夫っすか?」

「ああ、そんなことよりこいつらはなんなんだ?」


パティールのおかげで少し落ち着いた

この状態が何なのか冷静に判断しないと

この時俺の腕が元に戻ったがそれにも気づかなかった


「Cブロックの連中っすね。身体強化薬とか言って薬配ってたんすよ。こいつらはそれを使った奴らっす。使ってない人達はこいつらにやられちゃって。で、こっちに溢れてきちゃったと」

「ほう、要するに敵ってことでいいんだよな」

「まあ、平気で不正してる奴らっすからね〜。いいんじゃないっすか」

「OK、とりあえず倒してくか」

「うっす」


俺はなんとか怒りを抑えながら無粋な真似をしたバカ達に突っ込んで行った

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