5,トンデモ魔法
ヴィルトレルムにきて1日、今日は明日に向けてリトと連携の練習をする
昨日、「なるべく多く時間を取りたいから早起きしてくれ」と言われたのは事実だ
なのに寝坊してしまったのは本当に申し訳ない
だが、来ないからって部屋に入ってきて叩き起すのはどうかと思う
まだ痛むぞ、主に心が。
今俺とリトは戦闘ギルドの訓練場に居る
リトの話によるとこの世界には戦闘ギルドと商業ギルドがあり、戦闘ギルドは魔物や素材集めなどを行う定番のやつだ
商業ギルドはその名の通り、商業に関する仕事をしていて、都市間の物流を調整したりしているらしい
俺はあまり関わりが無さそうだ
もう一人来るらしく、準備運動をしながら待っているとリトが話しかけてきた
「そうだ、昨日聞きそびれたんだがもしかしてエイスケって転生者か?」
「ああ、そうだ。なんでそう思ったんだ?」
「名前がな。明らかにこの世界では使われてないやつだし、魔王様の名前と似てるって思ったんだ」
「なるほどな。たしかに俺は転生者だ。てか、転生者ってわかってもあんまり驚かないんだな」
「結構居るんだよ、転生者。前話した勇者様とかな。それに転生者が作った都市があるくらいだしな。確か名前は…光都だったか」
「えっ?公都って転生者が作ったのか?」
「ん?そうだが…って、いやそうか。そういや発音が一緒で紛らわしいって魔王様が言ってたな…。多分お前の想像してるのは違うぞ。こうとはこうとでも光に都で光都の方だ。光都の建物は夜でも明るかったり、光を反射したりしてキラキラしてるからそんな名前になったんだ」
それはおそらく電気によるものだろう
どうやら光都はこの世界水準でみるとだいぶ発展しているっぽい
今のところこの世界で化学とか工学による産物を見ていないからな
大きい都市に行けば違うかもしれんがおそらく大差はないだろう
前世の記憶か、能力で造ったのか
「ほぇ~、そうなのか~。まじでなんも知らんな」
「そうっぽいな。まあ分からないことがあったら俺に聞いてくれ。俺はお前から強さを学ぶからよ。お前と肩を並べられるよう俺も頑張るぜ」
「特別なことは教えられないけど…一緒に頑張ろう!」
「ああ!それじゃ、訓練の前に確認だ。俺もお前も近接型だし、守りもそんなに気にしなくても良さそうだ。なんならお前だけならヒーラーも要らねぇ。まさに万能型だな。だがな、1つ気をつけないといけねぇことがある。それが間接魔法だ」
「普通の魔法とは違うのか?」
「お前の言う普通の魔法ってのが直接魔法ならそうだな。直接魔法はその名の通り相手に直接ダメージを与える魔法だ。火炎魔法とか土魔法、氷冷魔法がそうだな。間接魔法は相手を動けなくしたり精神攻撃をする魔法だ。状態異常系統が当てはまる。闇魔法とか影魔法、空間魔法はどっちにも当てはまるな」
「時間魔法は無いのか?」
「ああ、時間魔法はないな。一応出来ないことはないんだが、神々がやめろって啓示で言ってたんだと。わざわざ神の怒りを買いたい奴なんか居ないから誰も作らないんだよ」
なるほど、禁忌っぽいのもあるのか
事前に向こうが教えてくれるんならいいけど、偶然の産物とかは許して欲しいな
まあ、作る気ないけど
「話が逸れたな。なんで気を付けないといけないかはわかるよな?」
「俺らの動きを縛って気絶でもさせりゃ勝てるもんな」
「そう、俺らは物理耐性は強いが間接的な攻撃を防ぐ術がない。魔人が元々耐性高いとはいえ、近接型にとっては1発喰らえばそれが致命傷に繋がるぞ」
「1発か~。舐めプして瞬殺されてるかもな~」
「そこでだ。今日は状態異常系統の魔法を得意とする魔法使いを呼んである。連携を取りつつ、回避行動を素早くできるよう訓練だ」
「オーケー。今日しか出来ないから集中しないとな」
「ああ、その意気だ。そろそろあいつも来るだろうしな」
「どんな人なんだ?」
「まあ、見ればわかるさ」
ふむ、こういう時に来る奴ってだいたい外見と中身が全く違うやつなんだよな
筋骨隆々なのにめっちゃ気が弱いとか、声がめちゃくちゃ高いとか…
どんな人かね~
1人わくわくしていると、入口から完全武装した青年がやってきた
「こんちわっす。よろしくっす。」
っす口調か…なるほど
まあ物腰が柔らかそうだし、良かった良かった
しかし、なんとも魔法つかいらしからぬ装備だな
戦士の俺より装備固めてんじゃん
まあ俺の場合皮膚そのものが重戦士のフル装備より硬いから着る必要ないんだけど…
「あなたがエイスケさんっすね。僕はパティールっす。今日はよろしく頼むっすよ」
そう言って手を差し出してきたので俺も挨拶を返す
「ああ、俺はエイスケだ。よろしく…?」
なんだ?一瞬掌に違和感が…
ん?これもしかして魔法か?
なんで?
初対面でいきなり魔法かけてくるか普通
えーっと、一応リアクションしとくか
ドサ…
「あちゃ~、やっぱ引っかかっちゃったっすね~。ダメっすよ初対面で油断しちゃ」
「あ~体が痺れる~」
「ん?僕がかけたの拘束魔法なんで痺れるはずないんすけど?」
「そりゃ~お前、なんの魔法かけられたか分かんねぇんだからしょうがないだろ~?」
そう言って軽く小突いてやろうとパティールに拳を向ける
ガシャーン
ありゃ?
「あれ…あはは、どうやら油断してたのは僕の方だったみたいっすね。防御魔法もあっけなく散っちゃったっす」
「障壁まで張ってんのかよ」
「僕防御力皆無なんですよ。不意打ちが失敗した時のカウンターでやられるんで対策はするでしょう?」
「それもそうか」
「まあ、力試しはこのくらいにして、改めまして僕の名前はパティールっす。よろしくっすよ」
「俺は英介。最近魔界から出てきた新参者だ」
「それにしては動きが戦い慣れてる感じだったっすけど?」
「ああ、こいつは13神等で魔王の加護を持ってる期待の新人だ」
「ああ、そうなんすか。なら納得っすね……さて、ずっと話しててもキリがないからそろそろ始めるっすか?」
「そうだな。それじゃエイスケ、やるぞ」
「おう」
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「エイスケ、言いずらいんだが…」
「ああ、分かってる。俺はお前らの戦いを見てることにするよ」
「そうしてくれると助かる…」
訓練を初めて20分ほど
なぜ早々に訓練を外されたのか
それはパティールを見てもらうとわかる
「……(´・ω・`) ……」
地面に寝転がって顔文字のような顔をしているのがパティールである
どうしてこうなったのか、事の発端は訓練を初めてすぐの事だ
「パティール、とりあえず2発くらい打ち込んでくれ」
「了解っす~」
パティールの周りに魔力が集まり、サッカーボールより少し大きいくらいのサイズになったところで打ち出された
その間1秒未満
打ち出された魔法は一直線に俺へと向かってくる
速さはそこそこだがまっすぐ飛んでくるから簡単に避けられ…
「うおっ!自動追尾すんのかこれ?!どういう仕組み?!」
「自分の能力と魔法を合わせた攻撃の訓練過程で相手を追尾できるようになったんすよ」
「ただでさえ厄介な精神魔法が追尾してくるとか、いやらしいな」
「こいつは魔法構築のスピードと相手への追尾が強みでな、単身武闘大会に乗り込んでそのまま優勝しちまったんだ」
「最初の3、4回だけっすけどね。流石に今は優勝はできないっすよ」
「いやいや、魔法使い一人で優勝はかなりすごいと思うぞ」
「それじゃあそれを避け続けてるエイスケはもっと凄いっすね」
「いやまあ、俺も能力使って避けてるからな。素だったらちょっと危ないかもしれん」
初めは"読心"を使ってみたが関係無さそうだったので"思考加速"と"魔力変換"で避けている
"思考加速"はその名の通り思考を加速させる
感覚が引き伸ばされて周りが遅く見えたり、普通時間がかかる事象を数秒、もしくはコンマ数秒で処理する
"魔力変換"は魔力を別のエネルギーなんかに変える
今回の場合、脳の処理能力強化と身体の強化に魔力を使っている
一応頭を使ってはいるが結局のところゴリ押しで何とかするのが1番良い
脳筋サイコー
「よし、まだ余裕そうだな。パティール、もうちょっと数増やして複雑にしてくれ」
「りょーかいっす」
おっ、今度はさっきの3倍か…
「まだこの数なら精度も落ちないっすよ。さあ、避けてみて下さいっす」
成程、確かにこりゃキツい。時折デコイも混ぜてくるからウザったいな
確証が無ければ下手に触るのは悪手だし…
「あはは、やっぱこのくらいじゃ避けられちゃうっすね。エイスケさん、ちょっと別の魔法打つっすよ!」
「よし、来い!」
魔法の玉が消えて、パティールが別の魔法を構築し始めた
お、なんか大量の魔法陣が出てきた
どんな魔法だ?
「これ結構疲れるんすよね〜。避けられはしないと思うっすけど、どれくらい効果があるかお試しっす」
当たるのは確定なのか…
「よしっ!行くっすよ」
「!?」
パティールの言葉と共に全ての魔法陣から魔力が溢れ、半透明な光が一気に向かってきた
とりあえず後ろに横にと避けてみるが、やはり追尾機能はついてるっぽい…
ってか数多すぎだろ!
追ってくるスピードはマシだけどこれだけ数あったら確かに避けられんわ
「おいパティール、これどーゆー魔法?」
「1本1本に1種類ずつ状態異常を付与させた光線っすね。ほんの少しだけ防御を貫通できるっす」
…とんでも魔法じゃねぇか
流石に食らいたくないぞ
「もう一押しっす!」
「ちょ、待てっ!」
くそっ、さっきの魔法玉まで出しやがった
もう避けられる場所がねぇ!
光線がここぞとばかりに一気に俺に向かってくる
ゾワッ
光を浴びた瞬間、悪寒が走り、俺の体は石のように固まって動かなくなった
動きが止まった俺に残りの光線が一気に直撃していく
視界に靄がかかり、思考が鈍る
あれ、俺何してたんだっけ……
まぁいっか…なんか眠いし…この…まま…寝…
「……起キロ」
ザシュッ
「痛っってぇぇ!?!」
なんだ!?
急に痛みが走ったと思ったら顔が血だらけなんだが?
てか俺の右手どうした
めっちゃ爪鋭いし、なんか獣みたいな…
いや、今はそんなことより…
「魔力操作!」
俺は俺の体にまとわりつく魔力を一気に拡散させる
視界がクリアになった時、すでに俺の腕はいつも通りに戻っていた
気のせい…なんてことはないよな
何だったんだろうか
ま、考えても分かんないことは考えないようにしよう
よしっ、なんかわからんけどとりあえず助かった!
「嘘…こんな早さで復活出来るなんて…」
パティールが力なく地面に座り込む
パティールの疲弊した様子を見るにやっぱりかなり強力な魔法だったんだな
…ん?なんかパティールの顔が…
「……(´・ω・`)……」
ん?
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とまあこんな感じでパティールは顔文字化した訳だ
しばらくして起き上がってきたリト曰く、パティールは疲労が溜まって来るとだんだん顔が顔文字のようになるのだとか
…いやどんな設定だよ!
どうやら俺たちの前にもパティールと訓練をしてたやつがいたらしく、既に疲れ気味だったらしい
…明日大丈夫なのか?
と思っていたらパティールが起きた
「いや〜、まさかあれをいとも簡単に突破するなんて驚きっすよ〜」
「もう大丈夫なのか?」
「はい、回復にそんな時間はかけてられないないっすから」
良かった良かった
しかしパティールが今までどうやって戦ってきたのかちょっと気になるな
長期戦には向いていないのかもしれない
…まあいいか
意外と状態異常もなんとかなるっぽいし、いつもみたいにゴリ押しでどうにかなるだろ
こういう時に限ってめちゃくちゃ強い奴が居るとか現実で起こるわけないもんな!
特大のフラグをたてたことに英介はまだ気づいていない…




