4,脳筋と方向音痴の化学反応
眷属創成から創造に変更しました
俺が魔界を出てからもう1ヶ月だ
未だに蒼埜と賢治の情報は入っていない
そもそもあいつらだって俺のように外見が変わっている可能性があるから探そうと思って探せるものではないのだ
実際に見れば波で判別できるんだが、ばったり会うなんていう偶然はそうそう起きないだろう
アイツらが派手にやってることを前提として世界中を探すことになるんじゃないかと思っている
ま、1人よりかは断然良いから多少時間がかかっても探すつもりだ
だが、魔王はあまり乗り気ではないらしい
「確かに世界が小さいとは言ったけどね、だいぶ無理な話だと思うなぁ。どんな情報も完全に正確ってわけじゃない。時間が経てば情報は古くなるし、尾ひれがついて判別できなくなるからね。それにね、世界には強い奴が沢山いる。今の君じゃ歯が立たない奴もいるし、僕でも倒せない奴もいる。君をサポートすると言ったからには君を危険に晒す訳にはいかない」
との事だ。
まあ、その言い分もわかる
が、俺はもう決めたのだ
俺がこの世界で1人生きるのは無理だと断言する!
「俺の戦闘力をあげるのも、この世界についての知識を俺に教えるのも、俺をサポートするうちのひとつだろ?それに…」
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魔王を言いくるめた俺はコルンの村を拠点に付近で聞き込みをしたり、魔獣を狩ったりして過ごした
その間、魔王とした会話でわかったことがある
ひとつはこの世界にはゲームみたいなステータスなんかの概念がない事だ
だから魔獣を倒したことでレベルが上がったり、レベルが上がると筋力とかが増えるなんてことも無い
日々の鍛錬で筋力はつくし、戦闘の場数をふむことで強くなるとの事
まあ、そりゃ現実的に考えたら変だけどちょっと残念だとも思った
そりゃ異世界だからって何でもありなんてことはないわな
そんなこんなで1ヶ月経った訳だがそろそろ新情報を求めて外に出た方がいいかもしれない
魔獣討伐はだいぶ慣れてきたし、対人戦闘も経験しておきたいところだ
異世界では「力なきものは生きていけない」ってのが定番だからな
とにかく死なない程度には強くなっておきたい
俺はいつもの酒場で魔王に提案してみた
最近の魔王は少し余裕ができたらしく、分身を作って直接俺のそばにいる
正直邪魔だ
だが、ナビの代わりになるので仕方なく行動を共にしている
「なあ魔王、俺そろそろ他の場所行きたいんだけど」
「そうだね、もうここら辺で得られる情報はだいたい制覇したかな。本当ならもっと早く終わるはずなんだけど、やたら迷子になる子がいたからな…。はぁ。それで、この近くでそれなりに栄えているところと言えばやっぱり東にある自治都市「ヴィルトレルム」かな~。あそこは他の都市の中継地点だから各地の情報が集まるし、領主が毎月武闘大会を開いてるから戦闘訓練にもなるでしょ」
「いいじゃん、そこ行こう!」
「あんまり考え無しに突っ込むと痛い目見るよ?まあ、そんなことがないように僕がいるんだけどさ。でも僕がいてもみちを間違えるのはなんでなんだろうね。…それでね、確か魔人の中に1人武闘大会に出てる子がいたよ。向こうに着いたら色々教えてもらうといい」
「それはありがてぇな。一応この体の同郷ってことになるんだろうし、そいつとは仲良くしよう。それで、次の武闘大会はいつなんだ?」
「うーん、多分あと5日かな?準備に1日、移動に1日、向こうで色々やることもあるだろうけど、今度の大会には出られるんじゃないかな」
「よしっ、そうと決まれば早速準備するか~」
そう言って英介はお代をさっさと済ませて商店街の方へ走っていく
しばらくして、英介の「迷ったー!」という声が響いてきたのは言うまでもない
魔王は額を抑えながら酒場を出る
「英介君…たまには僕の助言も聞いてくれよ…」
という呟きは人々の賑わいに溶けていった
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三日後、俺はコルンの村を出て、ヴィルトレルムへ向かっていた
旅立つ準備をしていた時は特に何のイベントも無かった
強いて言うなら謎に酒場の娘さんが俺に懐いていたことだ
随分とお世話になったから別れの挨拶に行ったら、すげぇ悲しまれた
表情は笑っていたが波を見ればすぐわかる
しかし何故だ
特に優しくした覚えもないし、俺にハーレム系主人公のオーラが出てるわけが無い
でもただの友人との別れにしては濃い悲しみが視えたんだよな…
うん、わからん。
まあ、後生の別れでもないだろうからまたいつか会いにこよう
そんなこんなで俺は今、ヴィルトレルムへとつながる街道を進んでいた
ちなみに魔王の分身はいない
「いくら分身とはいえ、自分の意識を乗せたものをあまり遠くへは行かせられない」とのこと
街道は一本道だからさすがに迷わないよねと言われたのが記憶に新しい
さすがに大丈夫だって、子供じゃあるまいし
てことでこれから魔王とはまた頭の中で会話することになる
「魔王~、道中って安全?」
「いや~、残念なことに安全じゃないらしいんだよね~。盗賊も魔物も溢れかえってて、最近は凶暴化した魔獣がいて厄介なんだって~。途中にある森が盗賊に襲われる危険ポイントだって酒場で聞いたよ?」
「つまり武闘大会へ向けて練習ができるって事か。ありがてぇな。先にお礼言っとくか」
どこかに向かってありがとう、とつぶやく英介を魔王は呆れた眼差しで見ていたが英介はすっとぼける
「よぉし、まずは行ける所までランニングだ!止まるんじゃねぇぞ…」
「もう突っ込むの辞めようかな…」
英介は魔王の言葉を聞くことなく走り出した
それこそ走れメロスのようにひたすらに
途中、森の中から街道の様子を見ていた盗賊にも気づかないほどに
それは結局ヴィルトレルムに着くまで続くことになるのだった
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ヴィルトレルム
「お~、ここがヴィルトレルムか~。確かにでかいし、賑わいがコルンの村とは段違いだな」
「そうでしょ~。ここは各地の物流の経由地でね、光都とも繋がってるからかなり栄えてるんだよね」
「いつかは公都にも行ってみてーな。ま、まずは武闘大会だけど」
「そうだね。それじゃリトに会いに行こうか」
「リトって誰だよ」
「ん?ああ、そっか。英介君は名前知らないんだったね。リトは武闘大会に出てる子だよ。種族能力「甲殻」と、「剛腕」のふたつを持ってる珍しい子なんだ~。タンクとアタッカーが両立出来る戦士ってなかなか居ないよ〜?」
「俺は?」
「君は規格外」
「しれっとひでぇ」
「あの子は人当たりもいいし、きっと君を助けてくれるはずだよ。もしかしたら一緒に武闘大会に出てくれるかもね」
「おぉ、いきなり強力な仲間GETか~?そのまま一緒に来てくれねぇかな」
「それは本人に聞かないとだね」
「よし魔王、俺をリトの所まで案内してくれ!」
「OK。今度は寄り道して迷子にならないようにね」
「オウマカセトケ」
「はぁ…まあ、僕がいる限り君が迷子で詰むなんてことはないんだけどさ。さて、とりあえず今来た道を戻ってくれる?」
「あ、はい」
この後、リトの所へ向かうのに2時間かかったことを追記する。
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ヴィルトレルム闘技場付近
「なんで毎度毎度逆の方に行くんだろう。わざと?僕を疲れさせようとしてるのかな?……」
なんか魔王がブツブツ言ってるな
悩みがあるなら俺にでも言ってくれればいいのに…
「くっ、怒るな僕。ここで怒っても意味ないよ。だって自覚ないんだもん」
「えーっと、ここら辺にリトがいるんだよな~。どこだろうな~」
魔王の言葉から怒りのオーラが出てておぞましい
俺そんな酷いことしたかな…まあいいや
「そろそろ見つかってもいい頃だよな。魔人ならすぐにわかるだろうし」
「うん、だいぶ近づいてきてるね。そろそろ見えてくると思…ん?」
「どした?」
「いや、多分向こうは気づいたみたい。こっちに近づいてきてる」
「まじか、どこだ~」
周りを見渡してみると、なるほどたしかに魔族特有の角が見える
それはどんどんこっちへ向かってくる
そしてついに、その姿が現れた
それは身長170cmくらいで均整のとれた筋肉、クラスに一人はいるムードメーカーっぽい波を持ったやつだった
「おーおー魔人じゃん!ここに来たってことは武闘大会が目当てか?」
「ああ、そうだ。あんたがリトで間違いないか?」
「その通り俺がリト・クラッシュだ。ここでは剛腕のリトって呼ばれてるぜ。お前は?」
「俺は英介。最近魔界から出てきたばっかだから色々とこっちのことを教えて貰えると助かる」
「おう、任せろ。まずはお互いのことを知るべきだが、こんなところで話すのもなんだ、先に宿取っちまってそこで話そう」
というわけでリトの案内でリトと同じ宿をとって部屋で改めて自己紹介をした
「俺は種族能力をふたつ持ってる。甲殻と剛腕だ。普通ならふたつ能力を持つことは無いんだが、稀にふたつを併せ持った奴が出てくる。俺もそのうちの一人だ。能力の数は神等っていう等級で21神等から1神等までで分けられる。数が小さいほど能力が多くて、能力ってのは神からもらったものだから多ければ多いほど神に近しいってことなんだと。
俺が今まであった中で1番神等が高いのは現魔王様で11神等だ。過去1番だと380年前にこの世界に来た勇者で2神等だったかな。この神等ってのを作ったのもその勇者だな。それでお前はどうなんだ、エイスケ」
「俺か?そういうの使ってこなかったしよくわかんねぇな」
「英介君は13神等だから9個だね。順番にあげてくとね~、超再生、甲殻、剛腕、読心、過熱、思考加速、魔力変換、精神操作、眷属創造だね。僕よりは少ないけど、かなりレアキャラなんだよ英介君は」
「へ~そうなのか。まあ死ににくいのはいいことだな」
「ん?ちょっと待て、お前誰に話しかけてんの?って、なんか懐かしい雰囲気が…もしかして魔王様?てことはお前まさか魔王様の加護を受けてんのか?ということはお前15神等以上なのか?」
「なんだなんだ、どうした。加護ってなんだ?」
「僕と君が交わした契約のことさ。契約ができるのは15神等以上で僕が認めた相手だけがすることが出来るんだ」
「つまりどゆこと」
「はぁ…、僕が君を認めたってこと!」
「へ~、そりゃどうも」
「もう突っ込まないよ僕は…」
「まさかこんなところで加護持ちに会えるなんて…。なあ、俺を仲間にしてくれないか。俺、まだまだ強くなりたいんだ。強い奴の隣で戦っていれば成長出来ると思うんだよ」
「まさかそっちから申し出て来るなんてな。俺も仲間になってくれたら嬉しいと思ってたんだ。よろしく頼むぜリト!」
「ああ、よろしく!」
「まずは明後日の武闘大会で優勝だな~」
「ああ。お前がいればあいつらとも差をつけられる。今まで一人でやってきたが仲間がいればもっと勝ち上がれそうだ」
こうして英介は仲間をゲットした
このままいつもどうりの武闘大会が開かれたならば2人はなんの障害もなく確実に優勝出来ただろう
そう、いつもどうりならば、の話である
英介の悪運の強さは当然ここでも発揮されるのだった




