14,出発前準備
気づいたらもう一か月…
「こっちだ」
カズに言われるまま俺とパティールは都市核の間に入る
「これが…神秘的っすね」
「随分とメカチックだな」
パティールは都市核の水晶のような見た目に目が行ったようだ
確かにキラキラと輝くそれは実に幻想的できれいなのだが
俺的にはその都市核の下にある台座のメタル感や空中ディスプレイの方が気になる
え、TOPPA〇の開発部門的なとこの人もこっち来てんの?
「これが都市核。中規模以上の都市に必ずある、都市の心臓みたいなものだ」
「僕たちに見せてよかったんすか?」
「ああ、お前たちのことは信頼してる。他言無用でな」
この短期間で随分と信用されたものだ
まあとっくに船には乗ってしまっているわけだしな
今更か
「それで、あの黒マントは何をしてたんだ?」
「俺もまだよくわかっては無いんだがな、悪意は無いように見えた」
「それに関しては同意する。誰も死んでないしな」
「ああ。それであいつ、クロと名乗ってたな。クロが言ってたのが都市核をばっくあっぷするとかなんとか…」
「バックアップ?急に親近感わいてきたんだが」
「エイスケにわかるってことはやっぱり異世界の言葉か」
「そうだな。俺の知ってるバックアップならばな」
「なら見てほしいものがある」
そう言ってディスプレイを操作し始めるカズ
何度かタップした後、カズは俺の方に画面を飛ばしてくる
そんなこともできるのか
「いま映ってるのはクロが言ってたばっくあっぷの内容だ」
「がっつり文字化けしてんじゃん。読ませる気ないだろ」
「暗号化してあるとか言ってたな。読めるように機能を追加するみたいなことも」
「へえ、じゃあどっかにプログラムがあるかもな……っとこれじゃないか?」
それは文字化け復元ツールだった
いよいよPCにしか見えなくなってきたな
「普通に操作してるけど都市核の操作方法って機密事項…」
「カズさん、エイスケ君に普通をあてはめちゃダメっすよ」
「おい、ぜんぶ聞こえてんだよ。別に訂正もしないけどな」
もっと小声で言うもんだろそういうのは
心の中で愚痴りつつ、ツールを使って文字化けを復元していく
「あ~、やっぱ完全には出来ないか」
「どうしたんだ?」
「文字化けの復元は大体8割が限界なんだ。このハテナの部分は情報が失われてるんだよ」
「「?」」
2人ともが首をかしげる
どう説明したらいいんだ?
「えーっと、詳しくは知らないんだが、一応法則性というかがあって、それに基づいて復元してるんだよ、多分。で、この記号の部分はもう意味を持ってないから復元できないんだよ、多分」
「多分なのか」
「…とにかく復元は出来たぞ。あとは知らんからな」
「ああ、内容はこちらで確認しておく。それじゃあ上に戻るか」
「ようやく終わったかー。武闘大会に出場しに来ただけなんだけどなあ」
とはいえこの渦の中に飛び込んだのは自分の意志だ
なんだかんだ誰かしらを助けることができたし、めでたしめでたしだろなどと思いつつ、地上へと戻るのだった
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地上に戻った後、街で情報を集めていた俺は渡されていた連絡用魔道具でカズに呼ばれて二人で話をしていた
「それじゃあ、クロは迷宮都市に来いって言ったんだな?」
「まあそういうことだろうな」
「そうか…それなら一度戦闘ギルドに行くといい。向こうにある戦闘ギルドへの紹介状を書いてもらえばある程度は融通を聞かせられるだろう」
「いいのか?」
「ああ、このくらいはさせてくれ。それにきっとお前なら迷宮探索でもうまくやるだろう。その足掛かりにしてくれ」
「ありがとな、色々と」
「いいって。それで、ここはいつ出るんだ?」
「そうだなあ、光都行くつもりだったんだが迷宮都市とは向きが違うし…。セトの街の港から王都の方に行く船があるからそれに乗るつもりだ。次の船はたしか四日後だったから余裕持って明日くらいには出ると思う」
迷都の場所を調べてみたら王都を南下したところにあった
王都に向かうにはまずこの大陸からでなければいけないらしい
というかここ割と辺境の地だった
その割に人多いのはなんでだろう…って今はそれはいいか
というわけでここから東に行った場所にある港町へ行ってそこから船でこの世界の中心にある大陸、パルジアへ行くのだ
「そうか、お前が居たら毎日楽しそうなんだがな」
「俺もやることがあるんだよ。あいつらとも合流したいし」
なんだかんだ時間経ってるけどあいつらどうしてるかな
異世界転移に巻き込まれるくらいだし、あちこちでトラブってるんだろうな
人のことは言えないけど
「しょうがないな。最後にだが、クロが言っていたことでな。あいつらはどうやら王家公認で動く組織らしい。世界を救うためと言っていた」
「おいそれ言っちゃダメな奴だろ。というか聞かせるな!フラグが立つだろ!絶対俺の方にトラブルが来る予感しかない!」
俺の制止を聞かず、カズはニヤニヤしながら次の言葉を吐く
「それで本来一般市民には伝えないんだが、お前には話していいってよ。良かったじゃないか、お気に入りみたいだぜ?」
「いやだああああ!もう逃げられないじゃないかぁぁぁ!」
「ま、頑張れよ」
「軽いなぁ!?これで世界を救ってくださいとか言われたらお前のせいだからな?」
「そん時は酒でも奢ってやるよ」
こ、こいつ楽しんでやがる
「くそ、わかったわかった。そん時はとびきり高い酒飲んでやらあ」
「ははは、楽しみにしておくよ。話は以上だ」
「ああ、それじゃあな!」
俺はいくらかなげやりな気分になりながら執務室を出る
なんで俺にくるんだ
もっと勇者っぽい奴いるだろ
俺が心のうちで愚痴りながら歩いていると、廊下の向こう側から歩いてくる一人の青年
立ち姿が洗練されてるなあ
と思っていたらその人が立ち止まってこちらを見る
「貴方がエイスケさんですか?」
「ああ、そうだけど。そういう貴方は?」
「私、ここで領主の補佐をしております、リアムと申します。この度はうちの領主が大変お世話になりました」
そう言ってきれいなお辞儀をする
この人がリアムか
確かに話に聞いていた通りだな
なんとなく敬語を使ってしまう
「いえいえ、俺は好きにやってただけなんで。逆に迷惑をかけてしまっているかもしれません」
「ご心配なく、慣れてますので。主に領主のおかげで」
うわあ、すげえ棘のある言い方
一瞬ものすごい感情が出ていたが、すぐに引っ込めていた辺り、感情のコントロールが上手い
流石貴族と言ったところか
「彼も仕事はできる男なのですが、生来体を動かす方が性に合うようで…住民の皆さんに好かれるのは好ましいことなんですがね」
「あなたも苦労してるんすね…」
「ああ、すみません。言いたかったのは愚痴ではなく感謝なのですが」
「お気になさらず、もうカズからもらってるんで」
「いや、どうせ彼のことですから戦闘ギルドへの紹介状でしょう。カズが関わるのは大体名のある冒険者や探索者ですから、彼はあれを渡しておけばいいと思っているんですよ」
リアムさんは呆れた顔で溜息を吐く
俺は苦笑するしかない
「でも迷宮都市は戦闘ギルドの影響力が強いって聞きましたし、割と有用なんじゃないかなあって」
「なるほど迷宮都市に行かれるのですか。それならばと言いたいところですが、褒賞としては弱いですね。貴方はここを救ってくれた方だと言うのに」
やんわりとフォローをしてみたのだが普通に切られてしまった
俺はそこらへんよくわかってないからなあ
カズも良かれと思ってやってると思うと言いづらいし
「そうですね…、それでは私からも二つほど褒賞をお贈りします。出立はいつですか?」
「一応明日のつもりですね」
「では明日、この街を出る前にここに寄っていただいてもよろしいですか?」
「分かりました。わざわざありがとうございます」
「いえ、働きに見合った報酬を用意するのも我々の務めですので。それでは、失礼します」
そう言ってリアムさんは俺に向かって礼をすると来た時と同じように凛とした佇まいで去っていった
滅茶苦茶いい人だな
少し堅苦しい雰囲気だけど、誠意をもって対応しているのが分かる
カズとリアムさんで、いい具合にバランスが取れてるんだな
でも、2人共仕事ができて民に慕われて、人を平等に見る目を持ってる所とか、案外似た者同士なのかもしれん
領主館の外に出ると日は傾いて夕焼けが街をオレンジ色に染めていた
道の先では人々の賑わいが聞こえてきている
「さてと、明日に向けて準備しないとな」
宿引き払わないとだし、物資も多少買う必要があるな
小さめのリュックでも買えば多少は持ち運びできるだろ
買うものリストを頭の中で作りながら街に出る
この時間なら店もギリ閉まってないはずだ
最初に買ったのは小さめのリュック
容量は少ないけど、しっかり体に固定できるから戦闘中も邪魔になりずらいと思ったからだ
その後は日数の持ちそうな保存食や寝袋なんかの冒険で使いそうな物や、マジックランタンという魔力を込めると明かりがつく魔道具を買った
魔道具って値段張るのな
魔王からもらった金貨をちまちまと使っていたがそろそろ底をつきそうだ
俺はすっかり軽くなった硬貨入れを手に溜息を吐きながら歩く
すっかり日も落ちて、周りの酒場が賑わってきた
と、ここで出会った友人たちが酒場からぞろぞろと出てきた
「あれ、エイスケ君じゃないっすか。カズさんとの話は終わったんすか?」
「おうエイスケ、バトルしようぜ」
「エイスケじゃないか!次はいつ模擬戦ができるかな?」
「エイスケの兄貴!お疲れ様でっす!」
「一斉に喋るなや」
俺は聖徳太子じゃねえぞ
それにツッコミどころがありすぎて困るんだが?
こいつらが酔ってることも、半分が脳筋馬鹿野郎なのはもういいとして
「まずお前は誰だよ、そしてその呼び方はなんだ」
「はい!俺はモブエーと言います!Aブロックで兄貴に殴り飛ばされた一人です!」
「いやごめん、わかんない」
手当たり次第にぶっ飛ばしてたし、いちいち覚えてるわけがない
困る俺を見かねてかリトが助け舟を出してくれる
「ほら、最初にお前に向かってきた奴だよ」
「ああ!あれお前だったの!」
「そうです!兄貴の強さに感動して舎弟になりました!」
「あれ?なんでもうなってるんだろう」
「俺が許可したからな」
「おいこら」
リトよ
お前にその権利は無いぞ
「はぁ、まあ別にいいけど。ついて来るなら早く準備しろよ。明日にはここを出るんだから」
「あ、それは無理です」
「は?なんで?」
「僕たちパーティを作ったんだ。もう戦闘ギルドに登録したから」
いやあのなフラット
ほんとに訳が分からないんだけど
俺の顔にそんな感情が出ていたのかこんどはパティールが説明を始める
「カズとエイスケ君と別れた後、闘技場に行ってみたんすよ。そしたらみんなが居て、近くの酒場に行くことになって酒を飲んでたらそういう話になったんすよ」
分かったが分からん
説明下手かよ
てか戦闘ギルドいってまた酒場入ったのか
道理でみんな顔が赤い
「要するに、エイスケ君がすごいから僕たちも頑張ってみようぜって感じっす」
「「「「そういうこと(だ)(です)」」」」
「リトも俺について来るとか言ってたが…」
「ああ、このパーティで頑張ることにしたよ」
「そ、そうか」
いや別にいいんだけどね
別に一人旅になって悲しいとかじゃないけどね?
「ま、まあ頑張れよ」
「エイスケもな」
何だろう、釈然としない
なんかこう、旅立ちの前ってこんな感じじゃなくない?
もう今日寝よっかな
俺はどこかぼーっとしながら宿に帰り、微妙な顔をしながら味もよくわからない食事をし、部屋のベッドでそのまま眠りについた
もうわけわからん
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魔王城執務室
「おかしい、なんでこうなってるの?」
僕は今の状況を整理しようと頭を働かせる
えーっと、リトに宿主を移して
僕の魔法が定着したのを確認してごはんを食べに行って
帰ってきたらリトが英介君と別行動するとか言ってるんだけど
なんでや
「どうしてなんだリト…」
あれだけエイスケと一緒にいるぜって言ってたのに
向こう(人間界)まで魔法を届かせるの割と大変なんだけど
結構魔力食うんですけど
「はぁ、また計画の練り直しか…」
今魔力を使いすぎるのは得策じゃない
魔界核の改造もまだ途中だしなぁ
まだ奴らは来ないとはいえ、いざ来た時に魔力が足りないなんてことになったらほんとに詰む
万全の状態じゃないと対抗は難しいだろう
「どうしたものかな」
すると机の上にある水晶が光り、声が聞こえてくる
この水晶は向こうの世界と繋がっていて通話ができる優れものだ
この反応は…
「魔王さん、いますか?」
「うん、いるよ」
「少々お伝えしておきたいことがありまして」
「何かな」
「魔王さんがこっちに飛ばした転移者…英介でしたっけ?、に僕の部下を会わせまして。一旦迷都に向かってもらうことにしました」
「そう、それなら良かったよ。やっぱりここからの干渉は難しくてね。魔法耐性もあるみたいだし」
「そうなんですか。部下にそこまで強くないって伝えちゃいましたけど大丈夫ですかね」
「根は優しい子だし、大丈夫じゃない?少なくとも間違った能力の使い方はしないと思うよ」
「よかったです。じゃあ能力の剝奪もしなくていいですね」
「うん、大丈夫。彼は問題ないよ」
「それじゃあ迷都の支部には僕から伝えておきますね」
「よろしくね。それじゃ」
会話が終わると水晶は元の状態に戻った
僕は椅子の背もたれに体を預けてまた考える
本当は僕が直接見ていられたらよかったんだけど仕方がない
向こうの若い子たちに任せよう
「ほんと、この魔王の体は不便だよね」
向こうに行けたらどれだけ物事がスムーズに進むことか
でも机上の空論を言ってもしょうがない
もう何千年も、それこそ魔界ができた時から、この"呪い"は歴代魔王を縛っているのだから
とにかく僕は僕が今やるべきことをやるしかない
「絶対に…あの人の意志を絶やしちゃいけないんだ…」
次回「英介、死す」 デュエルスタンバイ☆
※原作全く知りません
誤字脱字等あればご報告ください




