13,決着:シュン
11話の続きです
俺はパティールを抱えてシュンの魔法を躱していた
シュンは圧縮した空気の玉を作り出し、俺たちへ向けて打ってくる
盲目の効果が切れてからは狙いが的確になって厄介極まりない
この玉は一定の距離を進むと破裂して突風を生み出す
直接的なダメージは無いけど吹き飛ばされて体制を崩すのはいただけない
「いやあ油断したよ。まさかここに防御貫通を持ってるやつがいるとは思わなかった」
シュンは独り言ちながらも、さらに新たな魔法を繰り出す
地面から魔力を感じる
俺は魔力が届いていないところまで下がった
すると地面から魔法発動時特有の光が漏れ出てくる
少ししてワサワサと葉擦れの音を奏でながら大量の竹が地面から生えてきた
あたり一面は竹林と化し、一気に視界が悪くなる
かなり広範囲の魔法だ
魔力の心配をしているようにも見えないし、まだ余裕ってことか
「だるいことしやがる」
「…(´・ω・`)…」
ほら、パティールもそう言って…ないか
「さて、どうするのかな?」
「んなもん突っ切るだけだ」
俺は手に魔力変換で変質させた魔力を集中させ、集めた魔力を圧縮する
「魔拳!」
「は?」
「(´・ω・`?)」
俺の体の強度と破壊性を増長させた魔力があれば割となんでも砕ける気がする
試しに近くの竹を殴るとその周りの竹もろとも木っ端微塵に吹き飛んだ
「えぇ、なにそのぶっ壊れ…」
「なんかこれ、飛ばせそうだな」
「え?」
「(´・ω・`)?」
魔力をちょいといじった後、拳を前に振りぬく
「えいっ」
慣性に従った魔力が押し出され、竹を吹き飛ばしながらシュンに向かって飛んでいく
「うそでしょ…?」
「(´・ω・`)?」
シュンは向かってきた魔力を剣で散らす
飛ばした方の強度自体はそこまでではないらしい
牽制とか不意打ち程度には使えるかな
「こんな訳の分からないことをする人は初めてだよ。驚きよりも呆れが来るね」
「ほんとっすよ。戦闘中に遊ばないでほしいっす。魔力のコスパ悪すぎっす」
別に遊んでるつもりはないんだけどなぁ
というかしれっとパティールが復活していた
起きて一言目がそれとはなんて薄情な
「やっと起きたかパティール」
「迷惑かけたっすねエイスケ君」
「やっとまともに戦えるよ。なんか新しい技もできたし」
「あんまりふざけちゃダメっすよ。カズのこともあるんすから」
「わーってるって」
俺はそう答えながら周りの竹を魔拳を飛ばして粉砕していく
視界をクリアにしないと魔法も打ちづらいからな
パティールは魔力弾を竹林の合間を縫って飛ばし、シュンを狙っているが、相変わらず一刀で切り伏せていた
「全く、厄介な相手とあっちゃったな~」
シュンがつぶやきながら空気弾を撃ち込んでくる
それをよけつつ進んでいくとある所を境に竹に違和感を覚えた
竹の内側にシュンの魔力が篭っているのが視える
俺は念のために離れながら魔力を撃ち込む
すると俺の魔力に反応した竹が破裂して破片が飛んでくる
あぶねー、トラップかよ
離れてたおかげで被害は無かった
「やっぱり引っかからないよねー」
「これまた厄介なトラップだな」
「でも君ならこのくらいじゃ平気でしょ?」
「気持ちの問題なんだよ。もの飛んでくると分かって近づくやついないだろ」
「それもそうだねえ」
とはいえ一本一本やってたらきりがないし、俺の耐久力を信じてもいいのか?
ん?
いやそんなことしなくても解決する方法あるじゃん
「眷属創造」
頭のなかでどんな眷属にするかを考える
とりあえず身を守れる感じなら何でもいいかな
と、適当に指定すると俺の体から魔力がどこかに吸われていく
魔拳三発分ほど吸われたころ、突然目の前に眷属が現れた
…これ眷属か?
見た目は完全にバックラーだ
確かに身を守るものではあるが
もっと生き物っぽい見た目だと思ってたな
「まあいい、とりあえず突っこむか」
俺は魔力の塊を放ちながら、盾を持って突っこむ
最初の一撃で衝撃を受けた竹が爆発する
今度は石が飛び出してきた
あわてて盾を構えると、盾から黒い靄が噴き出して石を止める
そして受け止めた石を吸収してしまった
驚いて盾の表側を見ると悪魔の顔が動いていて、俺の方を見ている
成程、これはれっきとした生き物なんだな
…俺を守ってくれる眷属か
ヤダ、カワイイ
「眷属創造?そんなの聞いたことないんだけど?そもそも君は一体いくつ能力を持ってるの?」
「え?9個だけど?」
「ええ!?いやいや、トウヤ兄さんと同じ?そんなの勝てるわけが…」
「なんか強い眷属手に入れたし、こっからチートか?」
⁂
後日知ることになることだが、この眷属創造
実はそこまで使い勝手がいいわけではない
眷属を呼ぶ時に行う条件設定によって眷属の強さがだいぶ変わるのだ
あやふやなものならば使う魔力量が少ない代わりに能力の振れ幅が多きい
細かく指定すれば望み通りの眷属が生まれるが、魔力消費が激しい
魔力をケチって生み出してもほとんどがハズレと言わざるを得ない出来である
そんなわけでこの眷属創造、もとい眷属ガチャはよっぽど魔力に自信が無い限りはハズレ能力扱いなのだ
今回の英介はソシャゲでいう神引き状態だったってわけ
⁂
「僕も初耳っす…。エイスケ君、きもいっす」
「あれ、お前は味方だったはず」
「くっ、まさかトウヤ兄さんと同じ13神等だったとはね」
「諦めてくれる?」
「いいや、燃えてくるよ!」
「ああもう!なんでそんな脳筋なんだよどいつもこいつも!」
そう叫ぶ俺の足にいつの間にやら何本もの蔦が絡まっていた
一本一本は取るに足らないほどだけど束になることで異常なまでの強度になる
これが三本の矢の教えってやつ?
いやでもあれって創作なんだっけ
なんて現実逃避を兼ねた思考はシュンがバンバン魔法を打ってきたことで途切れた
だがそれを生み出した眷属が吸収していく
それと同時に俺の魔力が少しづつ回復していっている気がする
なにこれ有能
「先にその盾を破壊した方がよさそうだね!」
「おっと、そうはさせないっすよ?」
魔法を打ちながらも眷属に切りかかろうとしてくるシュン
だがパティールが魔法弾を撃ち込んでいくために攻めることができないでいる
当てに行くのではなくこちらへの進路を塞ぐように飛んでいるからだ
加えてあいつの魔法構築の速さによって切っても切ってもずっと湧いてくるいや~な仕様である
あいつの魔法弾しつこいからなー
「さて、そろそろ面倒くさくなってきたし、終わらせるか」
俺は大量の蔦から足を引っこ抜く
蔦はあっけなくちぎれて俺の足は晴れて自由の身となった
やったね
そして魔拳を振り回しながらシュンに近づいていく
「ちっ、なんだよ本気じゃなかったの?」
「いやいや、俺が本気出したらこの空間が終わる自信あるし」
「くうっ、僕だって君に一太刀入れることくらいできる!」
シュンの体と剣が魔力を帯びる
エンチャントか?
「流石に芸が無…っ!」
次の瞬間その場にシュンの姿は無く、パティールの魔法弾も切られたあとだった
「エイスケ君!」
気づいたときにはシュンは俺の懐に入っていた
剣を振るシュンの姿がゆっくりと見える
…より思考が加速している
視界の端に黒い靄を出す眷属の姿が見えた
そうだ、最悪間に合わなくてもいい
少しの隙間があればいいんだ
俺は地面を蹴って後ろに飛びつつ盾を構える
「そうくると思ってたよ!」
シュンの振る一太刀目が触れた瞬間、バキッという音と共に眷属が真っ二つに割れた
黒い靄が消え、眷属自体も魔力を散らしながら消滅する
「!?」
驚く暇もなく、続けて振られた二太刀目によって右肩から左脇にかけて袈裟斬りを食らってしまった
赤い雫が飛び散る
「どう、だ。これが…本気だ」
「…やるじゃねえか。まさか切られるとは思ってなかったぜ」
シュンがつけた切り傷はすでに治っている
俺はよろよろと立つシュンを見据えて掌に魔力を貯める
「まだ、まだだっ!」
「よくやるぜ。もう寝とけよ」
そう言ってシュンの右肩に手を置く
シュンは一瞬よろけながらもばたりとその場に倒れこむ
それと同時にシュンが魔法で作ったものが崩壊していく
石筍は崩れ、竹林は枯れていき、やがて静寂が訪れた
後には荒れに荒れた石の広間だけが残っている
「どれだけ魔法耐性があっても、あれだけ圧縮した魔力には勝てまい」
何をしたかというと、魔力の逆流だ
体内の魔力は血液同様体の中をめぐっている
そこに外から魔力を流し込む
その時に流れとは逆に流し込んだり、一気に沢山の魔力を入れると魔力酔いを起こすのだ
魔力の扱いに長けている程耐性は高くなるが、あれを耐えることは出来なかったらしい
ちょっと抵抗したのには驚きだが
「はあ、終わったっすか」
「そうだな。最後のはちょっとヒヤッとしたけど」
「エイスケ君なら攻撃受けても大丈夫ではあったと思うっすけど?」
「だからって捨て身で攻撃するのはなんか違う気がするんだよ。なんか人を辞めたみたいじゃん」
「いやとっくに辞めてるっすよ?」
「うっせ」
自分の体が傷つくことに慣れるのは嫌だ
それに一撃で殺されることだってあるかもだしな
防御を捨てるのは愚策だ
「それにしても、最後の一撃はすごかったな」
「多分っすけど、剣にそれぞれ武器破壊と鋭さ上昇のエンチャントがついてたっす。武器破壊は武具にしか効果がないんで、エイスケ君が防御するのを見越しての行動だったんじゃないっすか」
「あーそれでか」
眷属とはいえ、武具として認識することもできるか
結構有能だったんだがな、あの眷属
「そういやお前、さっきのカオスレーザー?を打った後ダウンするのってどうにかならないのか?」
「無理っす。あれはほんとに負担がでかすぎるんで」
「いままでどうやって生き延びてきたのかずっと気になってるんだよ」
「そう言われてもっすね、普段は使わずに勝つか、使ったら確実に勝つんすよ。ここ最近のうちで効かない人が急に出てきて驚いてるっす」
こいつの魔法の腕は確かだからな
ちなみにカズと闘った時は打つ前に負けたらしい
強くね
俺とパティールは体を休めつつ、隣の部屋について考える
「カズが入っていってから物音ひとつしないよな」
「そうっすね。戦闘は起きてないっぽいっす」
「闘うことなく瞬殺された可能性は?」
「怖いこと言うんじゃないっすよ。そんなのが居たら、エイスケ君ならまだしも僕じゃ太刀打ちできないっす」
俺も今はバトルをする気分じゃない
これで向こうからだれか飛び出して来たらさっさと降伏しよう
正直ここまで戦闘描写長くなると思ってn…ん゛ん゛
そう考えた矢先、扉が開いて黒い何かが飛び出してきた…ような気がする
早すぎてほとんど見えなかった
慌てて周りを見渡すとシュンが居なくなっている
「あれ?あの剣士どこ行ったっす?」
パティールには見えていない
まずいな
明らかに俺より強いじゃないか
ここまで早いフラグ回収もなかなか見ないぞ
その時、すぐ後ろに突然気配を感じる
ばっと振り向くとそこには黒マントを纏った人物が立っていた
「なっ!?」
「エイスケさん、迷宮都市”ゼクリア”にてお待ちしています」
それだけ言って男は消えた
え、やだな行きたくないんだけど
困惑していると、扉からカズが出てくる
「カズ!無事だったか!てか今のは一体誰だ?」
「ああ、説明するからこっちの部屋に来てくれ」
こうしてヴィルトレルムの危機は去り、英介は新たな渦に巻き込まれていくのだった
「おい、その嫌なナレーションやめろ!」
「なに言ってんすかエイスケ君」
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黒マントside
一人の男がヴィルトレルムを出て、森の中へ入っていく
「さて、全員回収したことですし、帰るとしましょう」
そう言う黒マントの男、クロの手にはいくつもの人形が入った袋が握られている
その中の一つがもぞもぞと動いている
「ああ、あなたはまだ慣れていませんでしたね」
そう言うとクロは動く人形を取り出すとかけられた魔法を解除する
すると人形が光り、収まるとシュンが立っていた
「ぷはぁ、やっぱこっちの方がいいや」
「人形でいれば楽なんですけどねえ」
「どうも慣れないんだよなあんたの魔法は」
「ふむ、仕事は終えていますしゆっくり帰るとしましょうか」
クロは自分にかけていた補助魔法を解除する
どうやら徒歩で帰ることにしたようだ
「にしても、あんな強いとは聞いてなかったんだが?」
「それは私も同じですよ。話では武術の心得無し、直線的な性格で工夫を凝らした戦闘は出来ないと聞いていましたが…」
「確かに慣れては無い感じだったけど、予想外なことばっかりしてたし」
「魔力の扱いにも長けてましたね。あれは訓練したら化けますよ」
のんびりと話しながら森の中を進んでいく二人
周りの獣や魔物は近づいてこない
圧倒的な力量差を理解しているのだろう
「それで、次の仕事は?」
「一度本部に戻ります。他の兄姉の皆さんも集められているみたいですよ」
「っ!ってことは…」
「ええ、許可が下りたのでしょう。おめでとうございます」
「ああ、これからもよろしく頼むよ、先輩」
「なんとも不思議な気分ですね、そう呼ばれるのは」
2人の男の声は森の静寂の中に消えていく
どうもテンポが悪い。ホントは剣と魔法を合わせて戦わせたかったんですが、なかなか難しいですね。
誤字脱字等あればご報告ください




