72.アヤコの身体能力
次の日、朝ごはん後すぐに聖なる湖をめざし、シェーンと共にヴェルデたちも一緒に森の中を歩いた。
ユーキはヴェルデたちと樹々を飛んでいき、ルーチェとアヤコはシェーンと新しく仲間となった蹴りうさぎのウォーリーと森の薬草などを採りながら。
蹴りうさぎの名付けはなんとなく。
覚えやすそうな響きにした。
覚えられない名前にすると、後が大変なのだとひとりごちる。
そう、アヤコは名前を覚えるのが苦手なのだ。
ただ、蹴りうさぎのウォーリーと契約したことで、アヤコは今までよりも脚力が増していた。どれぐらい増したかといえば…実がなっている直径1mほどの幅がある大きな樹を蹴れば、上から3㎝ほどの実がボトボトボトボト雨のように落ちるくらいに。
その様子にユーキとルーチェは楽しそうだけど、アヤコは唖然とした。自分は普通の人間だと自覚していたのに、いつの間にかこの世界の基準の身体になってなっていた。
生存能力が上がることはいいことだが、護るだけならともかく、人に被害を及ぼすことになることは想定していなかった。
今まで人を蹴ったことなどなかったが、間違っても、冗談でも人を蹴るのは止めよう。
アヤコはそう決意した。
元々シェーンと契約した時にも、森の中を歩いても疲れないほどの体力と足の速さを手に入れたけど、メルと契約した後、少し防御力が増して打撲しても痛みを感じなくなったけれど、ネプラと契約したあと夜目と遠視が効くようになったとか、段々人間離れして行ったけれど、生きていくにはいい感じだと思っていた。
………。
まぁ、この世界で丈夫なことはいい事。
それでなくても魔道具たちで強化されているというのに。
アヤコたちを襲わなければいい事。
ユーキとルーチェの足手まといにならない手段が出来たと思おう。
アヤコは開き直り、落ちてきた実をみんなと一緒に拾い始めた。
【チコの実】
栄養価の高い木の実。そのままでも食べられるが、美味しくはない。
煎って食べれば、独特な風味のあるナッツのようになる。保存食。
薬の材料にもなる。
ヴェルデたちもいいものが手に入ったと自分たちのポケット収納している。
あれ?これぐらいだったら、誰でも取れるのでは?
アヤコの疑問を解決したのは、テンションの高いヴェルデ。
『ぴゅぃぴゅぃ(さすがっす)』
「ヴェルデでも取れたでしょ?」
『ぴゅぃぴゅぃ(実をもぐのにかなりの力がいるっすよ)』
ああ、そういうこと。
ユーキなら取れたと思うけど、ユーキには興味がなさそうな実だから取らなかったでしょうね。何が役に立つか分からないから、頑張って拾いましょ。
『キュッキュ―(ぼくもやる!)』
ウォーリーが役に立つのだとさらに蹴ろうとしたので、止めた。
地面のものを拾うのは、疲れるのだよ。
ヴェルデたちカンカンが張り切って拾ったおかげで、意外に早く終わりすぐに湖に向けて歩き始めた。
『キュッキュ―(次こそは!)』
ウォーリーがやたらと張り切っている。なんとなくやらかし要員に感じているので、大人しくしてほしいところだけど、いいところを見せたいと張り切っているのを見ると、止めるに止められない。
このメンバーで窮地に立つようなことはないから、好きにさせた。
あれこれと採取しながら、問題なくお昼すぎには着いた。
100kmの道をショートカットされた道を時々歩いたとはいえ、実質20kmを採取しながら3時間。
かなりのハイペースだ。
『元気そうでなにより』
「こんにちは。水龍さんもお元気そうで」
『最近湧きもあった。森の浄化が進んでいるのであろう。体調も良い』
「それは良かったです。森が元気なら、魔物は減り普通の動物も増える。森が豊かになります」
『まぁ、厄介ごとも増えるがの』
「でも、今はまだ入り口までしか入り込んでませんよね?」
『今は、な』
何か起きれば相談させてもらうことにし、今日は採取が目的だということを伝え、湖の周りを探索させてもらうことにした。
作ってきたお弁当を食べ少し休憩をすれば、アヤコ以外は探索を開始し始めた。
アヤコは採取というよりは、ゆっくりと散策をすることにした。アヤコたちを襲うようなものは、近寄って来ない。
ヴェルデたちはクルクルの実を取り、ユーキは湖に潜って魚を捕り始め、ルーチェは浅瀬にある薬草になる水草を採り始めた。
それぞれに有意義な時間となった。
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