70.遊び方
門から出て森の中に入ってすぐに転移して家に戻った。
家に戻るとユーキとルーチェが駆け込むようにやって来た。
「「ばあば!」」
可愛い塊がふたつ。
ああ、もふもふで色艶もよく手触りが最高…なのはいいけど。
透かさずシェーンがやって来て、アヤコの背に回った。
シェーン、あなたは本当にできた子。
そのお陰でアヤコは庭で転げぶつかることなく、九の字になりながらも耐えることができた。
沢山の付与魔法でできた道具たちを見につけているから痛みはないが、悪意がないから物理的なものは受けることになる。
今ならレスリングでタックルを受けても、生きていける気がする。
そんな的外れなことが浮かぶぐらい、アヤコの体は衝撃を受けていた。
流石、私の孫!!
その後はシェーンに自分たちのスペックを考えなさいとお説教を受けていた。
確かに、大事。
この後で話す孤児院の子達の事もある。
流石に、一般人に対しての力加減を学んでもらわないと。
アヤコは食事をしながら、孤児院の子達のことを話した。
次に行くときに、会いに行こうと。
二人は喜んだ。
「おともだちができるの?」
「なかまができるの?」
ルーチェは村での生活を体験しているから、友達の概念があるが、ユーキは違う。今はずっと人化しているから忘れがちだが、元は魔物と呼ばれていた黒豹。仲間という認識はあっても、友はいない。それはアヤコと一緒に暮らし始めても同じで、契約獣がいるから仲間は増えたが、友はいなかった。ルーチェは始めから家族枠だから、友という認識はもてないでいた。
「ユーキ、仲間…とは違って、友達はね。一緒に遊んだりしゃべったりする親しい人ってことよ」
「あそぶ?」
「そうね。みんなで一緒に遊べるものを作りましょう」
ユーキに言われて改めて気づかされた。
ルーチェも首を傾げていたし、遊ぶという感覚が分からないのかもしれない。シェーンとの追いかけっこは、完全に狩りに行く時の訓練みたいなものだし、魔力の使い方も…遊んでいるように楽しくしているけれど、訓練だ。
アヤコは顔面蒼白だ。
毒祖母?
ずっと子供なんて家にいなかったから、子供が遊ぶような玩具みたいなものは、何もない。
生存競争に勝つ。
それがアヤコにとって一番だったけれど、子供たちは違う。
アヤコは深く反省をし、これを機にいろんな経験をしてもらおうと決めた。
さて、子供の時にしていた遊び…
アヤコは色々自分が子供だった時のことを思い出すが、彼方昔過ぎて記憶は朧気だった。外での遊びは、鬼ごっこや、缶蹴り、かくれんぼ…、ドッチボールとか?
家出は本を読んだり、アニメ見たり、トランプだった気がする。
―――となると、すぐに作って遊べそうで、力加減が要らないものといえば、トランプと絵本かな?
この世界のお話はどんなのがあるのか分からないから、桃から生まれた話を勇者に置き換えて話すのがいいかな。鬼をダンジョンのラスボスにするとか。
トランプは従来のようなモノではなく、数字と分かりやすく果物にした。1の数字にはメロ(りんご)が1個、2には2個で足し算と引き算ができるように。
後は単語帳のような物で名前とそれに対するイラストが合わせ、みたいなものも作ってみたかったが、アヤコ自身がこの世界の者をよくわかっていない為、作れなかった。
一番早いのは、あの森で生きている動物や魔物、薬草などを写真に撮って貼り付ければいい?
アヤコはそこまで考えて、まずは二人がどんなことに興味を示すのかを試しながら作ることにした。
「ユーキ、ルーチェ。まずはこの森で薬草と言われるものを探しに行きましょう」
「おにく、とりにいかないの?」
「やく草!」
ルーチェは以前も薬草取りをしていたからか、意外に楽しみにしているのが表情を見ればわかる。ここに来てからは庭に効果があるものがあるし、ケガや病気をすることがないから、採りに行ったことは一度もないので、丁度いいのかも。
そしてユーキ…。
お肉は正直もう要らないというほど、あるでしょ?
狩りが好きなだけかもしれないけど。
ここを出て生活するとなった時に、困った事になりそう。
「ユーキ、お肉は沢山あるからね。まずはこの森を探検しましょう」
「「たんけん!」」
鼻息が荒くなった二人を見て、アヤコはホッとした。
出来れば必要に駆られてイヤイヤ覚えるよりも、楽しく覚えて欲しい。
「まずは水龍さんがいる場所に向かって、歩きながら探しましょう」
「「うん!!」」
読んで頂きありがとうございました。




