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67.孤児院の子供たちと遭遇

究極のアルティメットワンドを構えて、アヤコは転移を発動した。

元々危険を感じると家に転移(送還)されることになっていた杖だが、今回錬金で転移魔法を付与した。前回はユーキが転移魔法を持っているから、手を繋いでいればアヤコが望むところへ行けたけれど、ユーキはルーチェとお留守番。魔導バイクで行くことも考えたが、時間短縮ができた方が早い。本当に数時間の買い物だけ出来るというのは、便利がいい。


この世界に住民がこのことを知れば、この杖を巡って争いが起きる程のもの。一番は転移魔法が使えるユーキの存在が表に出れば、討伐されるか、服従の魔道具を使って奴隷化する国もいる。それだけ使い手がいない伝説級のスキルとなっているのだが、アヤコはそれをまだ知らない。


この時ユーキを連れて行かなかったことが、アヤコにとってターニングポイントとなる。


てけてけうさぎに出会った森へアヤコは到着した。

この浮遊感は飛行機の着陸に近い。魔道具とスキルの違いなのか。

アヤコはユーキが転移した時には感じなかった気持ち悪さにその場に暫く座り込んだものの、数分で歩けるようになった。

帰りは覚悟しておけば大丈夫。


何度か深呼吸してアヤコは歩き始めた。

一度来ているからか不安感はないし、森に居て全く敵意を感じなかった。あるのは小動物の息遣いだけ。

どうやらダンジョンからあふれ出た魔物たちの駆除は、終わっているようだ。


暫く歩いていると人の気配を感じるようになった。

薬草取りをしているのか、地面に座り込んでいる気配が3つ。どれも大きくない。

子供?

確かにアヤコが歩いている辺りは森に日が入っているから明るいし、大きな獣もいない。だけど大人がいないというのは、大丈夫なのか。


アヤコは気になって小さな気配がある場所へ向かった。

足元にある薬草を必死に手折っているようで、中々千切れない薬草に奮闘しているようだ。近くにもう一つ気配がある。驚かせないようにと足音を立てて近づき、声を掛けた。


「こんにちは」

気をつけて声を掛けたものの、アヤコの足跡は全く聞こえていなかったようで、男の子は凄く驚き、口から声になってない音を出しながら、尻もちをついた。


男の子の様子がおかしかったことに気づいたのか、近くにいたもう少し大きい男の子がやってきた。


「どうした!」


背はそれなりに高いが、痩せている。少し大きい男の子は7歳ぐらい。尻もちをついた子はルーチェと同じ5歳ぐらいだった。


「大人の女の人?!」

え、驚くのそこ?


「ごめんね。急に声を掛けたから、驚かせちゃったみたいで」

「なんか用っすか」


ちょっと警戒をされているが、話ができない程ではないことにアヤコはホッとした。

「子供たちだけの気配があったから、ちょっと驚いて」


「俺たちは大丈夫なんで」

「そうは言っても気になるし」

「大丈夫だから!!」


その声でもう少し離れていた子も何事かと近づいてきていた。

「どうしたの、にいちゃ」


その子もやはり痩せていて、5歳か6歳ぐらいだった。


小さな弟たちを守ろうと背中に庇う男の子は、イバン8歳 孤児院の子と出た。後ろに庇っている子達も孤児院の子達のようで、6歳だった。


「薬草採取のお仕事?それとも、誰か病気?」

握っている薬草は、熱さましに効くという薬草で、森の浅いところに生えているものの。


「誰か病気で困っているなら、案内して。ポーションあるから治してあげる」


突然の申し出に、子供らしく喜びを表情に乗せたものの、すぐに険しい顔に戻った。

ああ、突然現れてポーションあげるって、怪しさ満点?


「私はアヤコ。旅人よ。ここには色んな薬味を買いに来たの。病気を治したら、店を案内してくれたら嬉しい」

「本当に、それだけでいいのかよ」

「勿論よ!買い物がスムーズにできるなら、私にもメリットがあるでしょ?」


思案顔に入ったイバンは、他の子供たちに急かされた。

「にいちゃ!早く案内しよ」

「せんせ、助けよ」


「わかった。一緒に来てくれ」


そう言って駆け出していった子供たち。

決断してくれたのはいいけれど、意外と足が早い。

気配を追いながら森の中を一緒に走った。


そして向かった場所は門(入口)ではなく、草がぼうぼうに生えた中に子供たちは潜り込んだ。

そこに行くの?!

アヤコは覚悟を決め、草むらに入り込んだ。

草むらをかき分けた場所に、どうやら人一人分の穴が開いている場所があった。子供たちはすんなり通れるぐらいだが、アヤコはサイズ的にかなり苦しい。ウエストポーチやリュックなど全てを外してから出なければ、通れそうになかった。それでもギリギリ。


あっという顔をイバンがするが、今更門に戻って入ると言っても時間がかかる。試してダメなら諦めて門に回るとして、アヤコは身に着けていたもの全てを外して、試してみることにした。


腰のあたりがかなりギリギリで、這いつくばり身体を捻りながら穴を通った。

そのことに打ちひしがれているアヤコをよそに、穴の外側に置いていた杖やウエストポーチ・リュックは、子供たちが持ってきてくれた。


「はぁ…ありがとう」


帰ったら少し運動しようとアヤコは決めた。



読んで頂きありがとうございました。


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