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48.変化してく日常

シェーンの子供たちが旅立ち、ルーチェもアヤコたちとの生活に慣れてきた頃、森は秋っぽくなってきてきた。青々と茂っていた葉が紅みを帯び、はらはらと風が吹くたびに葉が落ちてくる。元々鬱陶しいほど降り積もった葉っぱの上に、更に積み重なっていく。普通に歩けば足元が滑り、体力が奪われそうだとアヤコは思うが、アヤコ以外は気にならないようで、落ちてくる葉っぱを追いかけて走り回るユーキとルーチェを見ているとほっこりする。

足をとられて転げるのも楽しいのか、着ていた服は泥だらけで洗濯が大変だなぁと思うけれど、生活魔法があれば、すぐにでも綺麗になる。大きな怪我さえしなければ、遊びの範疇だ。


世の中のお母様方からすれば、羨ましいと思う環境だろうなと思うほどに、魔法は便利だった。

ただ心配なのは、着る服がすり減ることだけだ。

錬金もあるし、アヤコの着ていない服をリメイクするのは簡単だが、肝心の布が足りなくなる。ルーチェは女の子だから何とかなっても、獣人化したユーキに着せてあげられる服が難しい。男の子ぽい色がね。

いよいよこの世界の町に行く日が来たか、と思い始めていた。


PCを立ち上げ、森の状況を見る。ユーキとルーチェという勇者2名に、森の女王シェーンがいて、聖なる湖に水龍がいるからか、最近はとても平穏に感じる。というのも、赤いマークが全くつかなくなった。

少し前は魔物というより人間らしき者が森の中を団体で徘徊し、森を燃やそうとしていたこともあったが、水龍が何度かその場だけ大雨を降らしたりしたことで、それもなくなった。

きっと深淵の森の祟りだと言われているに違いない。

その現場をちょっと見てみたかったなぁと、水龍に後で聞いて思ってしまった。森を焼くとか、どういうことだと思ったし、やらかした者たちが反省しているのか、管理者として知っておきたかったからだ。決して、他人の魔法を見てみたいと思ったからではない。見てみたいのは事実だけど…。


話は逸れた。

今森はいい感じで平和だし、町へ行ってみるのはいい時期かもしれない。

水龍に相談してみようと、お弁当をもって聖なる湖へ魔導車で行くことにした。

初めてのお出かけということで、ルーチェはとてもはしゃいでいる。


「危ないから窓から顔を出さないでね」

「「はーい」」

ルーチェが来てからユーキは人型をとることが多くなった。シェーンの子供たちが居なくなった寂しさからか、ルーチェといることが通常になりつつあるからか。

一度ユーキに聞いてみれば、「こうすべきかなって」

わかったような分からない答えが返ってきた。

しゃべる言葉は流暢になってきたのだけど、会話は微妙に噛み合ってない。


でも、今はこれでいいのだと思っている。

この世界は不思議に満ちているし、当たり前がない。

人に迷惑だけかけなければ、いい。

場所が変わって常識が違うなら、その時はその場所のルールに則ればいい。


景色を堪能する間もなく、風を感じながら考え事をしていたら、あっと言う間に聖なる湖に到着した。

危ないって?

道が決まっているし、その道を遮るものはなにもない。自動運転に近いから、速度だけ気を付ければ大丈夫!


『久しぶりだな』

元気そうな声の水龍の声が上から下りてくる。ちょっとはしゃいでいるようにも聞こえるその声の響きに、アヤコは首を傾げた。

「なんだか楽しそうね」

『…そうか?』

「ええ、何かいいことでもあったの?」

『そんなこと、ないぞ』


アヤコは訝しんだが、水龍の感覚を人間のアヤコが分かるわけがなく、まあいいかと気にしないことにした。

水龍とアヤコが話している間にも、ユーキとルーチェが水精霊と一緒に、湖の周りを走っている。湖の波の端を踏んで、水しぶきがキラキラと太陽に輝くのを見ていると、それだけで今を生きている気がする。やっぱり孫っていい。


『町へ行くのか?』

「ええ、少しずつ人間に慣らすことも大事だと思うし、色々と不足があるから」

『そうか。ドゥーコメルスへ行くのか?』

「色んな布を買いに行きたいし、魚食べたいし、貿易が盛んなら多種多様な人も多いし、物資も豊富でしょ?ドゥーコメルスで大丈夫か、一応確認したいと思って、今日来たのよ」

『いいのではないか。ルーチェがいたリベルテ王国は避けた方がいいし、森を焼いて道を開こうとしたファブリケも辞めた方が良い』

「やっぱりそうだよね。ありがとう。確信が持てて良かった」

『道の作り方はわかったか?』

「一応理解はしたけれど、何があるか分からないからどうしようかと思って」

『何かあればアラームが鳴るように設定をして、すぐに消せばよかろう。行ったことがある場所は、ユーキが簡単に転移が出来るのだ』

「あっ!そうだったわね。魔導車で行くってしか頭になかったから、その他の手段は考え付かなかった」


やっぱり今日来て良かったとアヤコは微笑んだ。

龍一が残してくれてリュックにはお金も入っているし、それなりに売れそうな物もある。モノの値段で騙されないようにだけ気を付ければ、大丈夫…でしょう。それこそ何かあれば、ユーキと転移しして帰ればいいのだし。

「色々と相談に乗ってもらって、ありがとう」

『我らの湖を浄化してもらったのだ。森も動物も…澱みがかなり減った』

なるほど。魔物が暴れていないのは、そういう理由もあるのか。森が安全になれば、違う危険も増えてくると思うが、共存できればいい。

変化していく日々を楽しんでいこう。

これからに期待を膨らませながら、まずは腹こしらえからだとアヤコはユーキとルーチェを呼んだ。

「お弁当食べましょう」


ご無沙汰しております。

読んで頂きありがとうございました。


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