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24. よくわからない動物園のふれあい広場?

この世界の仕組みというか生態系って、強い者に組するというのは分かりやすい形。だけど全部がそうなるわけじゃないのは、先ほどの狼で分かる。

不思議。

蹴りうさぎは何故かアヤコの舎弟になったとばかりに大きな耳を揺らし、当然のように付いてくる突進牛の子牛の面倒を見ている。

「ねえシェーン。これっていつもの光景?」

『いいえ、もしそうならもっと庭には沢山のモノで溢れてるわよ』

「そうよね。じゃあ何故突進牛は付いてくるの?そして蹴りうさぎも」

『それは…アヤコだからとしか…ほら、森の管理人だから』

「なんか全部それでいいかなって感じだよね。この世界の仕組みが良く分からない」


ぼやくアヤコにシェーンは何とも言えない視線を向けるが、シェーンも戸惑っていることから、当たり前の現象ではないのはアヤコにも分かった。

子分が増えたみたいで嬉しいのか、ユーキはいつも以上に尻尾が高速に揺れている。

名前を付けているわけじゃないから意思疎通が出来ているわけないけれど、何となく姉御って呼ばれている感じがしている。

iPadで見ても突撃牛と蹴りうさぎは緑で印され、敵意がないのは分かるのだけど、セーフティーゾーンに入れるのだろうか。


子牛がいるにもかかわらず、行きと同じ時間ぐらいで家に到着した。

セーフティーゾーンの柵を開ければ、ユーキを先頭に突撃牛たち5頭(雌3匹に子牛2匹)が難なくくぐる。そのまま蹴りうさぎもはしゃいだように駆け足で、セーフティーゾーンに入って行った。


「シェーン。多種多様な種族たちだけど、問題ないの?」

『敵意はないし、子供たちに手を出さなければ、問題ないかと』


狩る対象でしかなかった者たちが仲間になったということに、戸惑うのはよくわかる。

仲間と言っていいのかもよく分からないけれど、仲良くしてね、としか言えない。特に蹴りうさぎはなんであの場に出てきたんだろう。


後で分かったことだが蹴りうさぎは成人すると雄は戦いを挑み、勝利して凱旋するという習わしがる。そこで勝利の証を持って求婚し、番になるらしかった。証を持って帰れなかった雄は……群れに戻ることが出来ず、一人で旅をするのだそうだ。

この時の蹴りうさぎはアヤコに負けたことで、群れを出ることが決定。そのまま食われてこの世の終わりかと思いきや、放置されたことでこの群れについていこうと決心した。


疲れた。

アヤコは家の中のソファで今すぐにでもゆっくりしたい気持ちに駆られるが、まずはセーフティーゾーンでの住み分けをしなければと、突進牛たちが寝る場所小屋を西側にクリエイトで作った。作ったといっても雨風が凌げる程度でしかない。大工仕事をアヤコに求められても、難しい。

そして庭に入ろうとしてユーキに吠えられ、噛みつかれた蹴りうさぎの小屋は庭に一番近い南側に。

セーフティーゾーンに来たばかりのスィートバチ達やカンカンは東の果樹ゾーン。見張り役兼ねて門の睨みを利かせるシェーンと子供たちは北側にあるから、一応の住み分けにはなっている。


よくわからない動物園のふれあい広場のようになった。

「ごめんね、シェーン。ちょっと疲れたからお昼寝するね。突進牛の残り、置いておく?」

『大丈夫。入用ならば狩ってくるから』

「そう…何かあったら、庭に入って来て呼んでね」


興奮冷めやらぬユーキも一度落ち着かせようと、庭に無理やり入れた。

「セーフティーゾーンに行ってもいいけど、シェーンに迷惑をかけないようにね」

『わかった!』

本当にわかったかどうだかすら怪しい元気のいいユーキの返事に、仕方ないなぁと思いながらアヤコは行儀良くね!と念押しをしておいた。

それよりもアヤコの方が今は問題だった。蹴りうさぎに転がされてはいないものの、蹴られて服は汚れているし、体も汗でドロドロだ。お風呂に入りたいけれど、体力にそんな余裕がない。

玄関で生活魔法クリーンをかけ、リビングに入った。べとついた汗が無くなり、スッキリするとあっという間にアヤコは睡魔に襲われた。

お腹も空いたけど…今は睡眠……。

ソファに倒れ込むように眠った。



スッキリした状態で目が覚めたアヤコは、お腹空いたと冷蔵庫を開けた。

食欲はあるのに、ガッツリ食べる感じにならない。こういう時にはさっぱりとうどんかな。ぶっかけうどんにしようとアヤコが庭に雑草の如く生えている大葉を取りに外に出れば、セーフティーゾーンでは賑やかな声が聞こえる。耳を澄ませてみれば、どうやら蹴りうさぎとシェーンの子供が戦っているようだ。


『ぴゅぃぴゅぃ』の大合唱と、羽の音が耳に着くほど聞こえることから、どうやら野次馬が多数で応援なのかヤジなのか分からないモノを飛ばしているようだ。たまに『いったれー』なんて、ヴェルデらしき口の悪い声も聞こえる。喧嘩ではないようで一安心だけど、正直セーフティーゾーンは何処に向かっているのか。怪我しないようにだけはして欲しい。


そう思いながら大葉の柔らかい葉だけを千切り、いつの間にか生えていたネギも5本ほど千切って部屋に入った。

軽く洗って包丁で切る。

冷凍のうどんをレンジで温め少し水で締めたら、どんぶりに移してめんつゆを入れる。そこに薬味だとネギと大葉、水で戻したわかめをいれて、すりごまをかけたら出来上がり。

ここにじゃこ天があれば最高なんだけど。

残念ながら冷蔵庫にも冷凍庫にもなく、食べることが叶わない。


あっさりとした味わいのうどんを、サラッと胃の中に収めるとちょっと落ち着いた。

大葉を天ぷらにしても良かったと食べて終わった後に思ったけれど、夕方に体力残ってたらと思い直した。

一人分作るのは面倒だから、明日食べてもいいように揚げておけばいい。


うどんを食べている間にも、何試合が行われたらしく、悔しそうな蹴りうさぎの『キュッキュ―――ッ』という甲高い声が聞こえた。

うん。鍛えられて町に行くときの、ボディガードになってくれたらいいよ。

『ばあばにちかづくなぁ!』

婆ちゃん子になってくれて、嬉しいよユーキ。

やっぱり大人しく出来ていないユーキの勇姿をみようと、アヤコはセーフティーゾーンに足を運んだ。



読んで頂きありがとうございました。

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