12.実験と強行突破
一週間もすればユーキがいる生活も、灰色豹がセーフティーゾーンにいるのも慣れた。
セーフティーゾーンの前の柵には、時折何かがぶつかる音が夜更けに聞こえるが、壊れた様子も削られた様子もない。凄い防御力。どんな仕組みになっているのかわからないけれど、灰色豹も穏やかに過ごしているようだし問題ない。
しっかりとセーフティーゾーンは安全だと立証されたので、檻は出入り自由にしてみた。母親が運動不足になっていては、いざという時どうにもならない。
ただ、ユーキも灰色豹も…よく食べる。
肉だけでなく果物も野菜も食べてくれるから助かっているけど、肉だけだと言われたら早々にお手上げ宣言をしていた。
冷蔵庫に入っているお肉は多くはない。81歳の老婆が食べる量なんてたかが知れているし、固いものなど食べられない。牛肉小1パックと鶏肉小1パック。冷凍で豚の細切れ1パック。冷凍で合いびきひき肉1パック。鮭の切り身などの魚の冷凍が幾つか。
これらが毎回補充されると言っても、2匹には確実に足りていない。
やっぱり街に行く必要がありわね、とアヤコは一人ごちるが、問題は場所が分からない。
探索を再開していくしかないかな。
PCに座り、家の周りの地図を見ながら考える。せめてどっちの方向に行けば町があるのか分かればいいのに、どこをみても樹、樹、樹。森しかない。しかも動物、魔物の巣窟。人の気配は全くない。
こういう時、航空写真みたいに上から景色が見えるといいのに。
航空写真。
あのドローンを作ったら?
動くかどうかわからないけれど、風属性の魔石はもっている。
ただドローンという物があるのは知っているし、形状は…雰囲気は覚えているけれど、正確には思い出せない。しっかりイメージできるのはラジコンのヘリコプター。
飛ばせればいいわよね?
ドローンみたいに、方向が色々行けないだけで…。
それならUFOの方がいい?あれなら縦横斜め、進む気がする。
実験はいくらやってもいいでしょ。
一応二つクリエイトで作成。
完全にプラモデルぽいフォームで玩具感満載だけど、飛べばいいのよ、飛べば。
灰色豹から取れた風属性の魔石を埋め込み、上空へ飛ぶイメージを沸かせば、UFOは飛んだ。
いい感じじゃない?
まずはこの庭で試してみないと。
思う方向にイメージを伝えてみれば、しっかりとその方向へ動いた。
成功じゃない?!
初めて玩具を貰った子供のようにはしゃいでいたら、ユーキがUFOを追いかけ始めた。
それを見てスィートバチ達も興味津々で近くに寄って来て、一緒に飛んでみようとし始める。
楽しそうで何より。
じゃあ、本格的に真上に飛ばしてみようとUFOを高く飛ばしたところで、映像が映らないことに気が付いた。
あ…。
そうだよね。普通にPCに映すことが出来たなら、玄関にカメラつけるし!!
半分成功、半分失敗のような形で今回のクリエイトは終わった。
ただ、この風属性の魔石でどれぐらいの時間動かせることが出来るのか、ということがわかったのは一歩前進ということにしておきたい。
やっぱり映すに関しては、光の魔石がいるよね。もしかしたら空間の魔石も。
気長に行くしかない。
アヤコは残念に思いながらも、久々に今までしたことがないことが出来て楽しかった。魔石が埋まっているという洞窟を見つけるのが先か、町に行きつくのが先か。それはわからないけれど、ちょっとずつチャレンジしていくのも、悪くない。
ただ肉事情はどうにもならないけれど。
そして肉事情がどうにもならなくなる時が来た。
灰色豹の赤ん坊たちが、卒乳を始めたのだ。
その頃には灰色豹の信頼関係がそれなりに出来ていたから、子供たちも撫でさせてもらったり、抱っこさせてもらえるようにもなった。だから預かる形で見守り、母親が狩りに行けるようにもした。
ユーキは時々『ギャン(僕のばあば!)』と癇癪を起していたけど、夜は一緒に寝ることで落ち着いていた。
それでも動物の成長は早い。
あっと言う間に食べて、足りないとすぐに催促を始める。果物や野菜もあげてみたものの、はやり元々肉食獣。肉が不可欠なために、母親は出ずっぱりになって行く。
だけど甘えたい子豹たちが母親から離れなくて、狩りに行くのが大変になることも増えた。
集団で生活することの意味が知識としてではなく、実体験すると本当に理解できた。だからこそ、集団から追い出されたら、すぐに死が訪れることも。
ここはやっぱり森を強行突破か?出来る要素があるならしたいところだけど、迷ったら死しかない。
「ねえ、灰色豹さん。町に行く道分かる?」
わかるなら道案内頼むのにね。
アヤコのぼやきにピクッと耳を動かした灰色豹は、アヤコをジッと見た。
アヤコはそれに気づくことなく、灰色豹の3匹の子豹とユーキがじゃれ合うのを見ていた。
読んで頂きありがとうございました。
次回 13.契約




