周囲目線の「これまでのあらすじ」5
─真王陛下リリアンルーン─
王城で娘ミリン襲撃事件の報告を受けた国王陛下真王リリアンルーン。事件詳細の情報統制に配慮しながら、報告にあった『王国勇者』とは何者なのかと困惑する。そこで自室の神壇に、聖霊主チーフゴーストを召喚して、相談を持ちかけた。チーフゴーストは、王国伝説の勇者など作り話に過ぎないと一蹴。しかしミリンもがその正体を秘匿するという、最近オフィサーに着任した御方ではないかと示唆する。本人も『ずっと一緒にいたい』と吐露した事実を暴露した。
それを聞いた真王は、王国勇者を人型の鎧武者と知っていたため、ミリンが将来を誓い合った意中の人と勘ぐる。二人の間に男女の関係も疑うが、チーフゴーストはうろたえて否定した。
真王は御方を、聖霊からの信頼が非常に厚い聖職者か、かなりの高齢者だから、と思い込んだ。だが男女の性愛については種の違う聖霊と議論しても始まらないと、それ以上の追及を放り出す。聖霊は御方が、魂の誓いを捧げる『僕べ』に対しても奢らず、仲間扱いすると絶賛。そればかりか、『僕べ』を案じるあまり、血を流すこともいとわない仁徳厚い人格者で、いずれ臣従するつもりであると表明した。真王はこの話を聞き、娘への憂虞から味方として頼りたいと、御方への面会を申し出る。
同時に聖霊のオフィサーが体内脈を持つ存在と知る真王には、王位継承者か聖職者しか思いつかない。また同じ王位継承者であるミリンが、悲恋の終末を想定しているため、その気持ちを周囲にも隠してきたと想像する。これは真王自身の過去の経験から、発した妄想だ。悲恋からひきずった同じものを、いずれ王位すら継がなければならない運命の娘に、詮方なく背負わせてきたという負い目でもある。
真王の深い慮りに気づいているのか、チーフゴーストは接見希望と協力支援を伝えると言い残して、坑道へ戻った。