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周囲目線の「これまでのあらすじ」3

─タオ視線─

 そのころ、ミリン父娘の話題にも上がった、王国の裏で顔役といわれるタオは、敵対する組織とことをかまえようと(たくら)んでいた。

昨夜自分の命を狙ってきた、組織の名はユニトータ。その凶賊に片腕と言われた部下の一人を殺されたため、自らの郊外拠点高原球技(プラトーシャール)場におびき出し、返り討ちにするつもりである。

 だがくだんのユニトータに追われて、逃げているという兄妹を、腹心の部下カミヤが拾ってきたのは計算外だった。その鹿車で緩衝地帯(ボーダーズ)に移動、二名の貴族も呼び込んで、人目も気にせず高原球技(プラトーシャール)を楽しむ。

 いささか言葉の不自由な兄ラゴンと、王女殿下と同じ年頃の妹ミツ。この兄妹は、王国で見た目評価がどん底の黒目黒髪(プレナニグロ)ながら、その既成概念をぶち壊すほどの美形揃い。しかもプレーのメンバーの一人として加えたラゴンは、扱いの難しい魔法道具『打撃匙(クリューシカ)』を簡単に操る。そればかりか、一見して見込んだとおり、どんどんプレーが板につく運動神経の良さだ。一方妹ミツは、どんな雑木林に潜り込んだ球でも見つけ出す、特異な目の持ち主。長年の人生経験から、単に縁談がこじれて田舎を捨ててきた農奴兄妹とは思えなかった。

 当初、公爵の参加を予定したタオは、その護衛兵士の強者(つわもの)をあてにしていたのだ。しかし男爵家から連れてきた衛士には荷が重すぎると、プレー終了後二人の貴族たちは見送る。そのとたん魔法銃だけでなく、麻薬強化人間(ナルコマンダー)を数体混ぜて総勢四十人近くの、ユニトータのごろつきたちに襲撃された。

 関係のない兄妹には逃げるよう勧めるタオ。だがこちらの無勢を心配したのか、あるいは相手を見くびったのか、約束した身分証をもらえるまではここにいると云う。しかも戦闘が始まるやミツは、目土袋(ソイルバッグ)芝球(シャール)袋を持ったまま駆けだした。その際袋で目前の男を跳ね飛ばしたため、半数に近い悪漢たちがミツを追って行く。

 それでも残った面々には魔法銃もあり、麻薬強化人間(ナルコマンダー)も含めて味方勢十名を凌駕していた。何丁もの銃から、一斉に撃たれたときにはさすがにダメかと思ったものの、プレーのため預けたドワーフの逸品を駆使してラゴンが撃退。なんと魔法銃の弾丸を、打撃匙(クリューシカ)の伸縮でたたき落とし、人間を超える力が揮える麻薬強化人間(ナルコマンダー)も二体倒してしまう。しかもその間に、ミツを追った二十人近くの悪漢は、みごと無力化されていたのだ。

 戦いが終わってすぐ、兄妹には自分がなぜ襲われるのかを説明した。裏社会の顔役などと知られると恐れられるかと思ったが、案外寛容に受け入れてもらえる。その昔、強者(つわもの)だったとする母親の経緯(いきさつ)を含め、自分たちの複雑な身の上も打ち明けてくれた。未だかつて聞いたことのないほど熾烈で、波瀾万丈な生い立ちであったが、それなら直前の戦いぶりも理解できるというものだ。

 そのときラゴンは、急に赤い両脚蛇クリムゾンディポディーズが忌み嫌われないで生きていけるよう、外国、しかも共和国に逃がすため渡航すると言いはじめた。そこでタオは、共和国でマフィアの脅威に晒され、音信不通になった友人を助けて王国まで連れてきてもらえるよう持ちかけると、それを兄妹は快く引き受けてくれる。実のところ自分が狙われると気づくまでは、タオ自身がなんとかしてやりたいと思っていた大仕事だ。そのとき持って行こうと準備してあった路銀と、共和国から飛んできたコウモリを手がかりに預け、仲間だと連呼してラゴンと手を取り合う。

 二人を王都に送ったタオは、身分証の発行後、昨夜ユニトータの毒牙に掛かった片腕、ハヤジの葬儀の準備にかかっていくのだった。

 ちなみに王都に入場してすぐ、ラゴンは知り合いを見つけたとかで行方不明になる。結局見つからず戻ってきたラゴンだが、気をもんだカミヤも文句も言わず温かく迎えた。どうやら、出発前にオキニイが目撃したらしい、兄妹の痴態をカミヤも耳にしていたようだ。だがそのあたりも含めてすべてを飲み込んだ様子。ただタオは林の中で激しいキスに及んだという行為にも裏があると睨んでいる。それは精神の安定を、殺人の狂乱から取り戻すため、その道のプロであった母親の、指導によるものだと想像するのだった。



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