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連行

「相変わらず

 声がでかいな」


 詐欺師は迷惑そうな顔を作り

 軽く将を睨んだ。

 将は豪快に笑う。


「それが私の

 長所ですからな」


 詐欺師は肩をすくめる。

 将は笑いを収め、

 真剣な眼差しを詐欺師に向けた。


「今、ここで隊長殿にお会いできたのは

 まさに天の配剤。

 どうか我らに力をお貸しください」


 将のその言葉に

 詐欺師は顔を曇らせた。


「そんなに、

 悪いのか?」

「悪いですな」


 将は即答する。

 そして小さく頭を振り、

 ため息を吐いた。


「魔物との戦よりも

 人同士のいさかいが

 厄介でして」


 将によれば、

 谷の国の貴族の一部が

 王家に従わず、

 自領に閉じこもっているという。

 あからさまに反抗する者は少数だが、

 態度をあいまいにしたまま

 様子見を決め込む者は多く、

 一歩間違えば

 王家は一気に求心力を失いかねない。

 魔物との戦いに一丸となって立ち向かうべき時に、

 谷の国はおよそ結束とは程遠い状態にあった。


「陛下は風の試練をお受けになるおつもりです」


 風の試練とは

 風竜王の加護を受けるための試練のことで、

 試練を乗り越えた者は『風の賢者』と呼ばれる。

 しかし近年

 風の試練を乗り越えることができた者はおらず、

 『風の賢者』は不在となって久しい。

 女王は『風の賢者』となって

 臣民の信頼を得ようと考えているのだろうが、

 それは失敗すれば体制の崩壊を招きかねない

 危うい賭けであろう。

 そんな賭けにでなければならないほど、

 女王は追い詰められているのだ。


「陛下に必要なのは

 何よりも信頼できる臣下です。

 どうか陛下に、

 我々に力をお貸しください」


 将は詐欺師の手を取り、

 深々と頭を下げる。

 詐欺師は冷淡に言った。


「悪いが

 俺たちは臣下じゃない。

 俺たちは魔物との戦いに

 加わるつもりだが、

 人間同士の争いにも

 『風の賢者』にも興味はない」


 将が頭を下げたまま沈黙する。

 そして数秒後、


「ごもっとも、

 ですがそれでは

 こちらも困りますので」


 将はそう言いながら、

 目にも留まらぬ速さで

 詐欺師に縄をかけた。

 詐欺師の目が大きく見開かれた。


「な、何しやがる!?」

「騎士位を返上せず

 出奔したのです。

 あなたはこの国では

 罪人ですよ。

 未だにね」


 にやりと将が笑い、

 詐欺師がギリリと奥歯を噛んだ。


「是が非でも

 あなたには陛下に会っていただく。

 恥も外聞も構っておれぬのですよ。

 今の我々にはね」


 将の真剣な瞳に

 詐欺師は言葉に詰まる。

 そして詐欺師は肩をすくめ、

 渋々といった風情で

 ため息を吐いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ふむ、将は詐欺師殿の薫陶を篤く受けていた様ですね(笑)
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